2024年08月22日

【51歳の展望】リタイアする日の自分が褒め、創業した日の自分が憧れる。そういう仕事を。

2024年8月22日、奈良県の山奥、天川村(てんかわむら)にて、51歳の誕生日を迎えました。


源流に近い清流、みたらい渓谷には「みたらい休憩所」という有名な駐車場があります。その下に「ほどよく深さがあり、流れが緩く、下流へ流されない天然の止め石のあるエリア」があります。奈良県をよく知る友人に教えてもらい数年前に初めて行き、なんて気持ちのいい場所だろう、と。今回は一泊の旅程で来ました。ここからの一年間、51歳の展望を考えるために、夜になると何にもない山奥のこの村でゆっくり考え事をしよう、と。

みたらい渓谷。清流。真夏でも冷たい。半そでウエットがおすすめ。

ここへ行く道中の空路や、清流に潜ったり、川辺で青い空と森を見上げて考えていました。

いずれ来るリタイアする日。その時の自分に褒められる仕事をしたいな、と思いました。そして、創業した日に立っている自分が憧れるような仕事をしたいな、と思いました。

かつての私

どこまで行けるのかもわからない中で、がむしゃらに前だけを見て、走ってきました。
商社をやめ、大学院博士課程に進み、NEDOフェローとして大学ベンチャーに駐在し、アイデアプラントを創業した2009年4月1日、その日から、いったいいつまで、そして、どこまで進めるのかも分からず走り出したわけですが、当時は当時で40歳になる日までの自分の人生の地図を作っていました。今思い返すとそのころの描いたものが随分控えめであり、そこよりもだいぶ水準の高い仕事を、そしてすごい人たちと一緒にする仕事をしていくようになりました。

行く道の先

このままいくと、父がピンピンコロリとなくなった77歳ぐらいまでは現役で仕事をしていそうです。あと四半世紀。もしかしたらもっと良い医療とか思考力を補佐するバディーロボットが登場することで、もっと長い期間働けるのかもしれません。そこは分かりませんが、短い場合は四半世紀後、リタイアする日の自分がたっている場所から見て、51歳のころにした仕事を自分でほめてあげたいーーといわれるような仕事をしたいな、と思ったのです。

多分、志しの仕事、社会的価値を増やせるような仕事をする、そういうことができたときに石井翁は褒めてくれるんでしょう。

道を振り返る

そして、過去。30歳の創業した日。あの頃の自分がどんな仕事に憧れていたかを思い出してみようとするとちょっと記憶が遠くなっていました。青雲の志。それを忘れずにいようとしていたのですが、日々来る情報量の中で21年前のことはだいぶ遠くなっていました。大きな案件、知名度、高い報酬、なども憧れがあったのかもしれません。今となってはそこを切望することが希薄になっていて、ちょっとよくわかりません。しかし、わかることもあります。次々新しいものを生み出し、人々に創造支援を提供し続ける。そういう仕事ができる未来の姿に憧れがあったと思います。(訂正:創業は、35歳、2009年4月、16年前でした。)

アイデアプラントの製品をもっと作りたい。製品以外の「創造支援のもの」ももっと生み出していきたい。創業した日の自分はそういう力に憧れている気がします。

ということで、展望の文としてまとめますと:

リタイアする日の自分が褒める仕事、
創業した日の自分が憧れる仕事。
そういう仕事をしたい。


毎年、自分なりに微妙に(あるいは実に)達成の難しいことを言っています。今年も、達成するつもりで立てていますが、難しいことを含んでいます。

年齢的に、短期的なものの見方、動き方は、合わなくなってきました。

長い時間の流れを見据えて、「好きで得意で志しに叶うこと」を、この一年もしていこうと思います。


皆様どうぞこの一年もよろしくお願いします。


(なお、ブログには書きませんが、合計で10の指針も作りました。一年後の自分はこのブログ文章を読むでしょう。その時には、非公開の小さい展望のほうも、振り返ってみてください。)
posted by 石井力重 at 23:45 | 8月22日

2024年07月09日

【ブレストの進行役のノウハウ】

【ブレストの進行役のノウハウ】を、講義の中にちりばめてよ、というリクエストをもらいまして、今まで、即興でホワイトボードに書いてきたようなことを「1ノウハウ=1スライド」形式で作ってみました。

スライド2.PNG

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スライド4.PNG

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いわば、

  • 無考慮にこじ開けない。

  • 可能なら立ちブレスト。

  • 出し尽くしたら、あと10個。

  • 批判も材料に使う。

  • ファシリがその場の社会規範を作る、くだけて見せる。


といった、非言語に、無意識に、いい進行役がやっていることに絞って、書いてみました。


各種のブレスト技法では、それぞれのファシリのテクニックがありますが、どれにも共通する「知っておくといいこと」としてはこの辺かな、というノウハウの共有でした。


posted by 石井力重 at 17:12 | メソッド&ハウツー

探求のテーマを作り出す「アイデア創出の授業」(高校の探求の時間の特別講義としてお話し&ワークショップをした内容です)

高校で探求の授業において、各人のテーマを作り出す段階があります。これがなかなか上手くいかず悩ましいもの。それをアイデアの手法で実践する講義を作りました。探求に悩める高校の先生の一助になれば幸いです。(スライドの引用は許諾なしに行っていただいて結構です。知らせてくださったら喜びます。)

※スライドのほとんどは石井が著作権を持っていますので、転載の許諾を出せますが、中に「踏めば助かるのにロボ」が一か所あります。それは出版社さんの著作物を引用として活用していますので、その箇所だけは引用の形式を正しく守り、活用してください。


スライドはこちら↑


スクリーンショット 2024-07-09 150657.png

なお、このスクリーンショットがまさにその「踏めば助かるのにロボ」のページですが、そこに記したことは、割と真面目にそうおもっています。ネットミーム化している「鬼畜ロボ」ですが、教育デザイン的には、なかなか秀逸であると石井は思うのです。

探求のテーマ探しの際に「踏めば助かるのにロボ」になったつもりで、素朴な疑問を、空気読まずにどんどん上げてみる。それぐらいでいいんです。そして広げあって、磨いていく。

いいテーマは「力が出る」「終わる」「喜ばれる」という利点があります。(スライド53に詳しく書いてあります)

(授業の範囲を超えるので教育の場では言いませんでしたが)それって、「生き抜く力」とも通底するものがある。そう思うんです。


最後に【実施の状況、データなど】をつけておきます。


宮城第一高校。探求テーマを出し合う200人超でのブレストをしました。
手法は三人ブレストです。

アンケートはそのまま使うことの許可を取っていませんので、すべての内容における個人情報を記号化処理し、AIにサマリをしてもらいまして、それを紹介します。

設問3: 今日の学びの1番の気付きは何ですか?

• 探求のテーマを大きく考えるのではなく、身近なところから考えることの重要性。
• テーマを分解することでより身近な問題に気づくことができる。
• 他者と話し合うことで新しい意見や面白い意見を得ることができる。

設問4: 今日私たちが見たこと、経験したことは、普段のあなたの何を変えますか?

• グループワークに対する苦手意識が少し軽減された。
• 些細なことでも興味を持ち、テーマを考えることが重要であると感じた。
• 一人で考えるのではなく、周りの人の力を借りて考えることの重要性を認識した。

とのこと。お役に立てていたならば幸甚です。

2024年06月07日

4人ワークは 「4名。割り切れない場合は、3名」

4人ワークは 「4名。割り切れない場合は、3名」をおすすめします。

4人ワークの割り切れない場合を「5名にしない理由」は、会話速度の重視するため。
特に、オンラインでの「クリエイティブトークがはかどるには、
3人ないし4人ぐらいがちょうどいい。
では、なぜ3人組にしないのか、といいますと、通信環境が悪い人がいたり、参加姿勢が消極すぎる人が1名いると会話は実質2人になります。
大人数での研修の場合、そうしたばらつきの事態を見越し「4人」をおすすめしています。
posted by 石井力重 at 12:08 | メソッド&ハウツー

2024年06月03日

選択肢というものの特性

theNatureOfChoices.png

人は多くなりすぎた選択肢を選べない。
なぜか。まず、心は「得ることの幸福」よりも「失うことの痛み」を大きく感じるという特性がある。そして1個を選ぶことは、N-1個を捨てることであり、Nが大きいと心の痛みは大きい。

このような時には、選択をせずに、選択肢を広げるだけ広げて、可能性をすべて持っておく。そして一旦ぐずぐずする。忘れるまで待ち、その後もやりたいと思えることが残っている状態にする。人間の忘却という「機能」を使うのだ。

これをすると最終的には、広げた選択肢の中で一番良かったものを選ぶことになる。ならば「冷却の期間」は必要ないのか。否。このやり方だと「全ての選択肢を忘却する」つまり「すべてを選ばない」ルートが存在する。ここが重要だ。選択肢の中で一番良いものですら、基準に達していない、ということは現実によくある。

例えば、押しの強い服屋さんで買った服。見せられた中では「最も気に入ったもの」だったが一度も着ていないことがあるだろう。
売り手が「即決を迫る」ケースは、大抵「水準に達していないものを買わせる」ケースだ。冷却されたらもう来ないからその場で即決させようとする。

選択肢を「広げる、冷ます、選ぶ」という3つのステップを経て決めることを意識しないと、不要なものを持つことになる。買い物だけでなく、何かの提案や頼まれごとが持ち込まれるときも同じだ。

選択肢が目の前に来たな、という時には、「広げる、冷ます、選ぶ」の段階を経たか、を意識したい。

なお、正しく「選択肢を扱う」のは時間がかかるものである。現実には、都合があってすぐ決めないといけないときはある。それでも、いったんトイレに行くぐらいの時間は取りたい。

kokorochoice.png
選ぶべきものは、常に心が納得する


posted by 石井力重 at 14:57 | メソッド&ハウツー

2024年05月20日

人は苦労するがAIは得意なこと(アイデア領域)

アイデア創出に関して人は苦手でAIは得意なこと.png

AIの進化は日々加速しており、私たちは「考える」という行為の意味が初めて変わる時代に立ち会っています。数年後には、人とAIがタッグを組んで作業を進める時代が確実に訪れるでしょう。これは、創造や想像の仕事にも大きな影響を与えることでしょう。この新しい仕事スタイルを私は「人機共想」と呼んでいます。

この未来において、人間は単純作業や機械的作業、さらには高度な機械的作業から解放されるでしょう。その時、人間はどのような”脳作業”に専念するのでしょうか。

今日、チーム内で「アイデア創出において、人が苦手でAIが得意なこと」について議論しました。私がすぐに思いついたのは3つのポイントでしたが、もっとある気がしました。そこで、AIにも意見を求め、その結果をここに共有します。

AI曰く

  1. 大量のアイデア生成: 人間は短時間で大量のアイデアを出すのが難しいが、生成AIは高速で無数のアイデアを生成できる。

  2. ランダム性の導入: 人間は無意識にパターンに従う傾向があるが、AIは完全にランダムな要素を取り入れることができる。

  3. パターン認識と新しい組み合わせ: AIは膨大なデータを迅速に分析し、新しいパターンや意外な組み合わせを見つけ出すのが得意。

  4. 広範な知識ベースの活用: AIはあらゆる分野の知識を即座にアクセスし、関連付けてアイデアを生成できる。人間は特定の知識に限定されやすい。

  5. 感情に左右されない評価: AIは感情に影響されずにアイデアを評価し、純粋に論理的な観点から最適な選択肢を提示できる。

  6. 無限のクリエイティブリソース: 人間は疲れやストレスで創造力が低下するが、AIは常に一定のパフォーマンスでクリエイティブなプロセスを続けられる。

  7. 複数の視点からの分析: AIは異なる視点やフレームワークを迅速に切り替え、多面的なアイデアの評価を行える。

  8. データの統合と解析: 人間には困難な大量のデータを統合して解析し、洞察を得るのが得意。これにより、アイデアの質を向上させる。

  9. 即時のフィードバック提供: AIは生成されたアイデアに対して即座にフィードバックを提供し、迅速な改善を促進できる。

  10. 反復的な作業の自動化: 人間が退屈に感じる反復的な作業を自動化し、創造的な時間を増やすことができる。

石井もこれに全面賛同です。

今度は逆に、「人得意、AI苦手」を聞いてみました。

AI曰く

  1. 感情と共感に基づくアイデア生成: 人間は感情や共感を基にしたアイデアを生成するのが得意ですが、AIは感情を理解し共感する能力が限られている。

  2. 文化的コンテクストの理解: 人間は文化や社会的な文脈を理解し、それに基づいたアイデアを出すのが得意。AIはこのコンテクストの深い理解が難しい。

  3. 倫理的判断の含まれるアイデア生成: 人間は倫理観に基づいてアイデアを生成できるが、AIは倫理的判断が難しい。

  4. ユーモアのあるアイデア: ユーモアは文化や文脈に依存するため、人間にとっては自然でもAIには難しい。

  5. 抽象的かつ直感的な発想: 人間の直感や抽象的な思考から生まれるアイデアはAIには再現が難しい。

  6. 多義的なアイデア生成: 人間は多義的で曖昧な状況から意図的に多様な解釈を生むことが得意。AIは明確な定義を必要とすることが多い。

  7. 個人的な経験に基づくアイデア: 人間は自分の経験や個人的な背景からアイデアを生成できるが、AIは個別の経験を持たない。

  8. 即興性のあるアイデア生成: 人間は即興的に状況に応じたクリエイティブなアイデアを生む能力があるが、AIは事前のデータに依存する。

  9. 非言語的コミュニケーションの理解: 人間は非言語的な手がかりを理解し、それに基づいてアイデアを生成できるが、AIには難しい。

  10. 個別の人間関係に基づくアイデア: 人間は特定の人との関係性を基にしたアイデアを生成できるが、AIは個々の関係性を理解するのが難しい。

AIにはそれができないのか、の厳密な判定は、私の知見量ではできませんが、この2年間のAIとの対話からの感じでは、おおむね賛同です。(ただ、即興性のあるアイデア生成とかは、AIも得意だと思いますが。)

人機共想の時代に、人側の戦略的仕事の基本指針はだいたい、こんな感じになるんじゃないのかな、と思います。アイデアの領域に関しては。

posted by 石井力重 at 23:25 | アイデアプラント 6th(2021-2023)

2024年05月05日

起業100アイデアのすすめ

これから創業する人に役立つかもしれない、創業時の思考の工夫を3つ紹介します。

❶ 起業100アイデア


「〇〇を仕事にする(あるいは、〇〇で飯を食う)」という、その〇〇がなんであれ、こう考えてみます。

100円でもいいからお金を出してくれる人(買ってくれる人)がいる〇〇のサービスや製品を考えよう】

これを、1行アイデアでいいので100個、列挙します。今はできないかもしれない案もOK。未成熟な案でいいからとにかく100個、あげてみます。

〇〇が、仮に「水泳」だったら、“百円でもいいからお客さんからお金をもらえる”サービスって、なんだろう?と考えてみます。夏の海で、5100円の水泳コーチをする、とか、30500円でお客さんを乗せた浮き輪を引っ張って泳ぎます(海の人力車、みたいな)サービス。そんなばかばかしいサービスでいいんです。


なお、「今はできない」にもいくつかありますよね。創業期の今のスキルではできない。創業期で知名度と実績がないのでできない。現代のテクノロジーではできない。まだ社会インフラが整ってなくて独自にやろうとするとコストが高すぎてできない。お客がいるのかどうか、テスト実施をしてみないとがわからないので資金投入ができない。などなど。


だけど、それを無視し、とにかく「うまく条件が整えば、だけどさ」とか「□□という流れが来たら、という仮説の話だけどさ」というのも、書き出します。

さて、100個書き出せたら今度は、選択です。

(なお実際は、100個というのは、目標であって50個でも40個でも結構です。でも、さすがに3個、4個だと少ないですね。40個ぐらいは欲しいところです。)

さて、選択には、評価軸を2つ作ります。A軸とF軸です。


A軸は、「やりたい仕事の度合い」です。「めっちゃやりたい」が10。「全然やりたくない」が1

F軸は、「仕事としての現実性の度合い」です。「やれば確実に仕事としてなりたつ」が10。「いや〜全然わからんよ、まあ、もしかしたら、可能性はあるかも」が1

さて、100個のリストを、まずはやりたい順(Aの大きい順)で並べます。

次に、Aが同点のもの(複数あるはずですが)の中で、やりやすい順(Fの大きい順)で並べます。

これで、一応の評価が終わりました。できたリストを眺めてみると、「意外と、やりたいし、いけそう(現実的にできそう)があるもんだなあ」と思えます。

めんどくさい?でも、これには、ありがたみがあります。


たくさん出して、起業アイデアのストックがたくさんあると、大胆に仕事ができます。

もし、思いついた案が一つしかなくて、それだけではじめようとすると「これにかける!」となります。「これが失敗したら、後がない!」「筋悪でもなんとかやり抜くしかない」みたいな悪い意味での不退転になりがち。そうすると、慎重になりすぎたり、顧客候補に対して、気に入ってもらおうと必死になり、そういうのは伝わり、嫌われたり、買いたたかれたりします。


顧客とは対等の関係になることをお勧めします。顧客も「この人は仕事の依頼の仕方が悪いとちゃんと言ってくれるし、できないことを頼もうとすると断ってくれる。」という信頼感がうまれます。これって、長い付き合いをするために大事です。


さて、そうして創業期の一年半(これが大事な時期)にあれこれ試していくと、結構短い時間で、「実際はどれが仕事になるのか」が分かってきます。


創業から3年で伸びるビジネスアイデアが大体定まります。(上から4個ぐらいはトライして、お蔵入りになり)、残り95個ぐらいはやらないまま。それでいいんです。これも無駄じゃない。


10年たったとき、あるいはもっと前に「この道でやれることはやりつくして、もう手を抜いても成果が出せて、なんか、マンネリだなあ」という幸せな退屈にたどり着いたときには、リストを眺めてください。そうすると、「あ、昔は、実績がなくてできなったこのコンサル事業、いまなら、いけそうだな。」とか「前はあまりやりたいと思えなかった案だけど、今の俺にはかなり魅力的。ちょっと開発投資してやってみるか」といった気持ちになるものが結構あります。


❷ “平均のチョイ上”でいいThinking


創業する人は、自分でハードルを爆上げしがちです。「その道の専門家であって、すべてを最高の成果でこたえられるようにしなくてはいけない。それができるようになるまで、仕事ができな」と。ストイックな性格の人とか、上質のサービスをたくさん利用してきた人は、そう考えます。

ですが、世の中には、能力的に49とか50の人が、55ぐらいの仕事を「自分でやると時間がかかるので、誰かに外注したいな〜」という薄いニーズがあります。自分の能力が56であればそれにこたえられます。薄いニーズなので一案件ではそんなに高い報酬はもらえませんが、何とか工夫をして、たくさんの人に手間なくサービスを提供できれば、「小利益×多数の売り上げ」で、食えるだけの事業になります。


仕事の品質が低いものを世の中に出していくのは哲学に反する、という声もあるでしょうけれど、その期間は比較的短いでしょう。実績を積むと、いろんなことを学び、発見し、どんどん独自のノウハウやスキルがたまります。


そうして、65のニーズにこたえられる。70に。75に。と上がっていきます。50の人が75の仕事を外注したいときには予算がそれなりにあります。先ほどの掛け算はだんだんと、「結構高い価格×それなりの案件数」になり、その先には「かなり高い価格×厳選された案件」という専門サービスへの道があります。


まとめますと、最初にハードルを上げて、一歩も進めない人は、「世の中の平均のチョイ上の能力があれば、それで飯は食える」と意識をかえてください。きっと100個書き出すのも、難しくなくなるはずです。


❸ “好きなこと”ד得意なこと”でさらにブースト


好きなことと、得意なことの両方を兼ね備えた事業で起業することを、おすすめします。

好きなことは、力が出せます。得意なことは、早く完遂できます。この、「早くできる」というのは、仕事をするうえで、非常にありがたい能力なんです。ライバルは10の時間がかかるところを、8の時間で終えられる。余った時間は、プラスアルファのサービスを載せてもいいし、早く帰って自分のスキルを上げるための勉強をするのも武器が増えていいでしょう。

(さらにいうと、時間の余白があると、心の余白ができ、空いた時間で人にやさしくできます。人を大事にする組織にするには、トップがいつもいっぱいいっぱいではなく、「なにか困っていることない?一緒に考えよう」と手を貸せます。律をもって運営するより、徳をもって運営するほうが、社員のマインドが明るいですよね)


さて、「自分が得意なことを思いつけない」と思った方は、大丈夫です。人間、何かしら、いびつです。へっこみもあればその分出っ張っているところがある。すべてが平均という人間は存在しません。なので、必ず、(へっこんでいることの代償として)出っ張っているものです。

で、これが面白いところなのですが、「こんなこと、簡単にできるので、他の人もきっと簡単にできるんだろうなあ」と人は思ってしまうものです。多くの人は、本人が秀でているところは「誰でもできる、普通のこと」ととらえて生きています。

だから、そういう人は、「51でいい。世の中の平均の人より、ちょっとでも秀でているなら、得意なことに入れていい」と考えてみると、そういうものも、把握できるようになります。

周りの人10人に「私が他の人よりも、楽にこなしていることって何がありますか」と聞いてみるのもいいでしょう。意外な答えが返ってきます。

おうおうにして、それは、自分が好きなこと、とは、違っています。「別にそれ、足りたいことじゃないなあ」と、面白くない気持ちで相手の言葉を聞くでしょう。でも、捨てるのは待ってください。メモしておいてください。「得意なことリスト」として、持っておくんです。


この「得意なこと」と、「好きなこと」を組み合わせてビジネスアイデアを作れないか、と考えてみるんです。そんなの、全然わからない、という感じもしますが、ほんとにばかばかしいことでも、無茶なことでもいいから考える。そうすると、ビジネスアイデアを考えるときに、ほかのライバルよりもうまくいくだろう勝ち筋が見えてきます。


たとえば、好きなもの「旅」で、得意なものが「絵を描く」だったら、発想しやすいですよね。旅先で出会った風景を描いて、オンラインで販売する、とか。もっと難しいケースも考えてみましょう。好きなものは「旅」、得意なものが「会議の進行がうまい(ファシリテーションの資質がある)」だったら?・・・これは悩みます。旅をサービスにして100円でも貰おう、という❶の考え方にのっとって色々出せたとして、そこに、「ファシリテーション能力」って関係なさ過ぎて。ここでばかげた未成熟な思い付きも言葉にしてしまいます。このお題も今考えたばかりなんですが、思い付きの例として、いま熟考なしに思いつくそのままに書き出してみます。・・・そうですね・・・「旅する会議室」なんていうのが思い浮かびます。会議メンバーがサルーンカーのようなものに乗っているイメージです、そこでファシリテーションをする本人がいて、会議がいつもと違った発想や展開になっていく、、、そんなサービスを提供していそうです。これが意味を持つアイデアになるならどういう風になるか、と、考えてみます。


「合宿会議ファシリテーションサービス」

いつもと違う環境で事業展開について深く議論していく合宿です。会議のできる共有エリア付きの一棟貸し切りの宿プラス、ディスカッションを進行してくれるファシリテーターがついています。議論のお題の設定も皆でできるように助けます。話したことは基本的に発言者各々が付箋に書き留めますが、オプションサービスとして、議論を要約しながら書き留める書記やグラフィカルに描き出す「グラレコ」もあります(事前予約制)

・・・という感じならどうでしょうか。個人的にあったら使ってみたいなあ、という感じにした他てみました。好きなことが旅、ということですが、旅の要素はあまりサービスの前面には出していませんが、この事業をすると、旅行会社のツアーコンダクターのように全国各地にいけるでしょう。


単に「〇〇がすき」だけから考え出すビジネスアイデアよりも、だいぶお金の入ってくるイメージができるものになります。



以上、3つの考え方を紹介しました。


❶ 起業100アイデア

❷ “平均のチョイ上”でいいThinking

❸ “好きなこと”ד得意なこと”でさらにブースト


会社で副業制度ができたので副業をしてみよう、という方や、定年や早期退職制度をつかってこの先は自分で仕事をしてみよう、という方にとって、こうした考え方がなにかお役に立てば幸いです。


100ideas.png


タグ:アイデア

2024年04月25日

京都精華大学の「アイデアの授業」の最終講義でした。(17年間の講義)

昨日(2024年4月24日)は、京都精華大学の17年間の「アイデアの授業」の最終講義でした。

ゲスト講義というのは受け入れ担当の教員がいて実現します。2008年、本学の教授で漫画家の「さそうあきら」さんからゲスト講義の依頼をいただいて、この講義は始まりました。
そのうち、アニメーターの数井先生からも授業の依頼をいただいて並行して別の「アイデアの講義」を行っていました。
そして数年前、さそうさんの退官、当初の授業枠を数井さんが引き継いで継続し、そしてその数井さんも今年で退官、ということになり、長かったこの講義も今年で完全に終わりになりました。

私が、講義を担当した中で、気づけばもっとも長い年数を継続した案件でした。17年間。何せ2011の大震災の年も被災1ヶ月後の春にやりましたから。(次に長いのは、早稲田大学です。現在11年目)

いつも、登壇する前は心に誓います。
これが人生最後の仕事でも悔いのない、出し惜しみのない全力仕事をしようーーと。

そして、「最後の日は人生で一度切り」のはずなんですが、石井のような、いくつもの仕事がある、変わった生き方だと、そういう日が、本当に「何度か」やってきます。
昨夏の「奈良女子大学」の最終講義。そして昨日の「京都精華大学」の最終講義。
”これで、漫画の学生さんたちに講義をするのも、最後だ。”と思うと、17年の中で作ってきた知見やエピソードもすべて伝えきりたい、という情熱で話しきった90分間でした。

日が明けて今日、アンケートと質問の集計が上がってきて、(自分で言うのは自画自賛になりますが)学生さんたちがたくさんのものを受け取り、作品を生み出していく力にしてくれたことが、わかりました。
毎年、「これが最後の仕事でも悔いのない仕事を」と思っていますが、頭の先からつま先まで全部全力、という仕事ができてはいなかったもしれない。ーーそう、思いました。今年は、全部あんこの詰まったたい焼きが完成した、と思える講義ができたので、それに比べると、昔は、しっぽの所にあんこが足りなかったり、焼きすぎたり、生焼けだったりしたのかも。学生さんが「最高」と思える料理(講義のこと)を出せたのは、17年でこの一回きりだったのかも、しれない。と、アンケートのかきぶりの変化にそう感じるのでした。

この授業の熱量とクオリティーを17年前から毎年できていたらーーと思うその気持ちを、次の案件で活かします。「これが最後でも悔いのない仕事を毎回、しよう。」と心に誓って。

なお、17年の受講者の中には、佳作、新人賞、連載開始、人気作家になった方も何人もいます。今では、きっとお会いしたらなれなれしく「やあ、●●君、●●さん」ではなく「ご活躍を拝見しています、●●先生」と挨拶しなきゃ、というほどに立派になった方も。
素直に聞いてワークを実践するタイプの人もいたし、突っかかってきて反発するような受講態度だったタイプの人もいましたが、どちらのタイプからも連載を持つ漫画家が出ていて、生徒としての評価と、漫画家としての資質というのは、あまり関係がないのかもな、とも思う17年でした。
そしてだんだんと「どの子も将来、大先生になる可能性がある。僕はそういう人の若いころに出会っている可能性があるんだ。」そう思って、どの子も刮目して接するようにしてきました。
卒業生たちがツイッター上で、卒業後、食うために本屋でバイトしながら持ち込みを続けていて、なかなか目が出なくて鬱々としているのもみました。そのうち、作品が漫画誌に乗るようになって来て、すっかり漫画家になっていく人もいれば、ツイッターも綴じてしまって活動が分からなくなった人もいます。
後者の人にも、人生を生き抜く創造性の本質はお渡ししてきたつもりです。どういう道を行くのであれ、その道で自分の人生を切り開いていってくれることを心から祈っております。

最終講義の後、熱心に質問に来てくれた人に聞いたら、サンデーで奨励賞をもらった作品がある、とのことで、見せてもらいました。SOSさんの作品「佐原はいつも」。原稿を読ませてもらい、「またSOSさんの作品を読んでみたい」と思いました。思い返せば、若いころに出会った(まだその時点では学生で、後になる)漫画家さんのネームには「またこの人の作品を読んでみたい」と思わせるものがありました。きっと将来また、「俺は、この漫画家の若いころを知っているんだぜ」と自慢できる人が一人増えたのではないかと、思いつつ、帰路につきました。

京都精華大学の学生さん、先生方、事務方の皆さん、長い間、どうもありがとうございました。

saishukogi_kyoto.png

追記:
アンケート結果をそのまま引用することは同意を得ていないのでできませんが、AIにすべての感想を短いサマリにしてもらったものを、紹介します。

   
 ChatGPT4
「アイデア創出授業に対する学生のフィードバックの概要です。この授業では、多様なアイデア発想法が紹介され、学生たちに深い印象を残しました。特に、「カオス間引き法」や「出し尽くしたあとの追加10個のアイデア」などの技法が好評で、創造的思考を刺激する効果があったと評価されています。また、「歩きながらアイデアを得る」という身体的活動を通じた発想法も多くの学生に支持されました。授業を通じて、絶望や困難を乗り越える力としての創造性の重要性が強調され、多くの学生が新たな視角を得ることができたようです。」
 
   
タグ:最終講義
posted by 石井力重 at 13:00 | アイデアプラント 7th(2024‐2026)



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