2015年10月16日

【発想技法】36Wandering(かすかな閃きを拾っていく)

アイデア創出ワークショップ中の一人Thinkingタイムが、もっともっと、閃きのかけらの掘り出しに使えるように、実行可能な発想補助メソッドをつくりました。

ワークシートは二枚目に。
使い方は3枚目のスライドにあります。


メソッドとしては、基本的には、サブ項目付きの発想トリガー法です。

「回遊的に思考をあちこち行かせて考えてみる」とか「Mind Wandering(マインド・ワンダリング)」とか、「一度寝かせる」とか、そういった「うろうろ歩き回っている思考」がもたらす意外な閃き、創造性、というものが、多様な領域で言及されています。

きちんとした研究テーマとして研究されているものもありますし、各種文献やビジネス記事などでも言及されています。

そうした行為の本質にあるものを私も肯定的に見ています。

問題は、短い時間での有意識的な実行には向かない点です。ビジネスは忙しい。今すぐ、やろうと思ってやれないものは、無いに等しい、という辛い場面も少なくなくーいや圧倒的に多いというべきでしょうけれどーそこで何とか少しでも、それに近いことを可能にする思考ツールを作りたいと常々思っていました。

今回提示したのは、多様な発想ワークを見ていて、発想トリガーのアプローチでわりと、回遊的な、意外な着想も引き出せていたようなケースを観察して、それらの中でも特にシンプルな技法として利用していたものを、メソッドとして整えて作ったものです。

シンプルにすると、自然と、平易かつどのようにもとれる表現のセットになるものですが、何度もの錬成の結果、これもそうなりました。

さりとて、技法として、使い出があるようにある程度の使い込みができるように、技法をデザインしてあります。

いずれまた、本を書く時が来たら、それまでの時期に積みあがる実用をもとにもっときれいにしたものを公表したいとおもいます。今は、技法としてはもうすこし時間によって洗練される余地がある段階です。

説明が不十分ですが、器用な人はこれだけでも使えるでしょう。石井と直接会うかたは、ご興味があれば、打合せの折にお尋ねください。

なんでもできちゃう万能な方法なんてものはありえませんが、これが創造思考を多様なアプローチにしていくことを、補助してくれる道具ぐらいにはなれば、と願っています。

posted by 石井力重 at 12:14 | アイデアの技法

2015年10月15日

私の中で行っているアイデアワークショップの設計の思考展開をここに綴ってみます(実例)

<<ワーク設計のメモ。そのうち消すかもしれません。>>

前のエントリーに対して、私の中で行っているアイデアワークショップの設計の思考展開をここに綴ってみます。

子ども、と、食、と言われて、すぐに何か便利なガジェットが思い浮かぶ人もいれば、ぜんぜん何も浮かんでこない人もいるでしょう。

日々、子どもと一緒の食事をする状況にある人もいれば、子どもに接点のない人もいて、それがずいぶん違いになるでしょう。

ただ、対象との距離が近い人は、クローズアップ効果でアプローチが具体で狭く固定的になる側面もありますので、門外漢の方がいることも良い効果があります。

子どもに接点がない、という人にとって、アイデアソンの中の短い時間で、これだという輝きを感じられるような、発想の材料を作ることは、はたして、できるのでしょうか?

今回のシチュエーションは、創造工学的に見えれば、クリエイティブジャンプの大きなものが必要という発想シーンではありませんで、どちらかといえば、自身の中にある大量のアイデア素材を掘り出してきて、明示的に検討できるように、思考作業のテーブルにざららっと、吐き出すことを最初にやるとよいシチュエーションです。

(逆に、このケースとは遠いケースでは、クリエイティブジャンプが必要で、そのための技法を投入することもあります。この違いは何かといえば、日々、そのテーマに対して何度も有意識的に考えていて、取り組みもしている。でも閉塞していて新しい考えが浮かんでこない。そういう状況であることが、違いです。例えば企業の中で特定の製品の開発をしているチームなどには、クリエイティブ・ジャンプの大きなものが求められていて、そういう場合は、直観力や回遊的に遠くまで飛ばしていくようなメソッドを使います。)

 
 
さて、具体的にはどういうワークコンテンツを組む? ・・・という段で、次のような、ラフスケッチが浮かびはじめます。


━━━━━━━━━━

1) ━(事前:0分)━
参加者は募集段階でテーマとテーマ文章をみる。これだ!と思うアイデアが浮かんでいる人も少しいる。仲間とともに刺激しあって面白いものがあれば、それを開発してみようと、という人もかなりいる。

2)━(15分)━
持ってきた人にとっては、アイデアをしっかり説明したい。刺激しあいたい人は、他の人のアイデアを醸成の刺激に使いたい。なのでチームでのアイデアピッチ(3分インターバルぐらい)があるとよい。

3)━(35+10分)━
こども、と、食は、原体験を誰しもが持っているので、着想の醸成は進行している。それらに明確な輪郭線を与えるため、一人Thinkingタイムを取る。What(何を叶える)とHow(それを、どうやって具現化する)を検討。

3-a)
Whatだけでもよい、とする。

3-b)
Whatを考える切り口を、簡単なツールにして渡す。
  • 明確な課題を挙げていき、それに対するうち手を考案する方式。
    この場合は、課題を発見するツールが要る。
    広い観点で課題を発見するには「6観点リスト」を。
  • 課題から、アイデアを明示的に考え出すには「属性分析」を。
    理想状態を描き出して、徐々に現実方向に引きもどし、可能な線を考案する方式。
    この場合は「理想解」がよい。

3-c)
Howは、チームにいるテクノロジストの具現化能力に沿ったものがいい。
最初はそれはメンバーが深く理解していないので、想定で描いてよいとする。
描かれたHowは自由に入れ替えて、アイデアPivotをすることを皆賛同しておく。
チームメンバは「自分であれば、こういう風に(この具現化方法でなら)できるかもしれない)」を逐次提案しあうことを前提ルールに。

3-d)
アイデアスケッチを描く。
Iamas式のものを描く。
絵の描けない人は、IDEAPLANT式のもの、あり。

<休憩10分>

4) ━(15+10+45分)━
アイデアを共有し、諸案の潜在的な可能性を引き出す。具体的には、チーム内での、各案の発表(3分インターバル)、および、3タイプ・シールVoteを行う。

4-a)
プレゼン時間は、ファシリによるタイマーがよい。時間が余った人のところはその案の魅力について話をしておく。

4-b)
全員の発表の後は、案を材料にさらに可能性を引き出していくブレストをするが、その前準備としてシールVoteをする。
  • 赤シール「これはWhatが魅力的!」
    (※その魅力は、後でしゃべる)
  • 青シール「自分のスキルで(そのまま、もしくは、別のHowに変えれば)作れそう」
    (※魅力的であるかどうかは別にして考えてよい)
  • 緑シール「赤と青の切り口以外で、特にコメントしたいアイデア」
    (※赤や緑のシールの切り口には当てはまらないが、特にコメントしたいことがあるアイデアである)

4-c)
じっくりチームでアイデアの吟味。
ブレストという発散オンリーの縛りはしない。アイデアの改良には指摘もいるがのでそれも否定コメントも許容する。
シールは、アイデアを吟味する際の手がかりにする。
場のルールは1つだけ。シールを貼った人のコメントをすべて聞くこと。(それだけは途中で口を挟まないで聞く。)

<休憩10分>

5)━(15分)━
アイデアMapping
アイデアスケッチを「A:魅力」と「F:フィット」の二軸上に並べる。
アイデアのPivotすれば、軸上のポジションが上がるものは、
ポストイットで「案3’(案3を◎◎方向に変えたもの)」のように、
別バージョンのアイデアとして記して、おいておく。

6)━(30分)━
意思決定。
どれを作りたいかを、話し合って決める。

6-a)
話し合いで決まればそれでよい。
ただし、複数の案を足して割ったようなものは上手くいかない。カレーとお汁粉のレシピを混ぜたレシピは単独よりもずっと悪くなる。

6-b)
話し合いで決まりにくい時には、意思決定のために重視したい評価軸をそれぞれが提示しあう。
なぜそれの軸を重視したいのかをつまびらかにする。
チームで重視したい評価軸として上位3つを、議論して決める。(軸のプライオリティもつける)

6-c)
合意形成した3軸を用いて、諸案を評価する。
のとき、3軸に対して最も平均的な案と思われるものを、5にし、基準と相対比較して点数をつけていく。
プライオリティが高い軸でダントツで高いものがあれば、それを選定する。
複数が高い群に入るならば、二つ目の軸の評価も行う。さらに優劣がつけにくい時には、3軸目も使う。


<<以上合計、ちょうど3時間>>

━━━━━━━━━━

さて、こんな感じで、アイデア創出から選定までを、ざっと組んでみました。

とはいえ、アイデアワークの時間は、3時間なので、これでは、プロセスが長すぎます。(アイデアワークは7割設計でなければならない。)コンパクトな作業で本質をもっと、ぎゅっと。

これからもっと洗練させていかなくてはいけない、という思考を残ししつつ、草案第一稿としては、こんな感じに書きあがりました。


このメモまでの作業としては、無意識の作業と、書き出しの作業がります。

案件の始まる前にも軽い打ち合わせもして、今日までもずっと考えてきています。

それをいま、文章にして書き出すのにかかった時間がだいたい4時間ぐらい。


ワークの作業時間とほぼ同じ時間を費やしてワーク・プロセスを書き出す。
そういうことを、アイデアワークショップの設計では、いつもしています。

ここから全く別の形になることもあります。
運営チームの方々と、この先も議論して、形を作っていきますので。

当日、どういう形になっているか、全く違ったものになっているのかもしれませんし、ほぼこのままの実施かもしれません。その辺、一か月後のイベントをぜひ楽しみにしていてください。

posted by 石井力重 at 16:36 | アイデアプラント 4th(2015-2017)

2015年10月14日

【ご案内】KIDSとFOODSのアイデアソン&ハッカソン(@秋葉原、11/7&11/21)

鷹木さんが編集長をされているEngadget(エンガジェット 日本版)では、アウトプット能力の高い”ハッカソン”を運営されています。

アイデア創出〜ハッカソン〜製品化、までを行うというものです。

従来のよくあるハッカソンは「動く試作品は作ったけれど、その先どうするの?(特になし)」で終わることが多いですが、Engadgetさんのは”次のステージ”につながりやすい座組みであるところが特筆すべき点です。

そんな彼らの運営するハッカソン、次回のイベントのDAY1のファシリテーションを石井がすることになりました。

DAY1は「アイデア創出〜ハードウエアスケッチ〜アイデア発表)」です。

ご興味があればぜひ、ご検討ください。



 〜 記 〜

テーマ:KIDS AND FOODS

(WEBサイトからテーマを引用します)

今回のテーマは KIDS AND FOODS 。

誤解を恐れず言えば、子どもの未来はきっと食でできています。
子どもと食の関係を考え、食を通じた子どもの未来に光が差すような、
そんなプロトタイプ(試作機)を作りましょう。 

KIDS AND FOODS と一口に言っても、たとえば
野菜嫌いが克服できるような、
自然とよく噛む習慣がつくような、
箸がきれいに持てるような、
といったようにいろいろなことが考えられます。

食卓や食のトレーサビリティにまつわる課題はもとより、
もしかすると農業そのものの何かを解決するような
ガジェットが、子どもと食に繋がるかもしれません。 

au未来研究所ハッカソンは、
エンジニアのためだけのハッカソンではありません。
そして技術を競い合うようなイベントでもありません。

アイデアと情熱と技術、さまざまなスキルをお持ちの方、
無邪気なアイデアを形にしてみませんか?

日時:2015年11月7日(土曜日)

場所:秋葉原のハードウェア・スタートアップのモノ作り拠点 DMM.make.AKIBA
      (千代田区神田練塀町3 富士ソフト秋葉原ビル)





 〜 〜 〜


<<参加者の心意気といいますか、姿勢について、石井からコメントを加えます。>>

工作技術のある方だけでなく、「デザイナー」や「ビジョナリスト」や「モノづくりを愛する人」は大歓迎、とのことです。

毎回応募殺到のハッカソンですので、申し込み多数でセレクションが入るときに積極的な参加姿勢を醸すようなエントリーでないと、なかなか入れないとおもいます。参加してみたい、というかたは、ぜひ本来のハッカソンよろしく、フルコミットメント姿勢で、エントリーしてみてください。

なお、DAY2(動くブツの完成)の参加、および、DAY2までのチームメンバーとの作る作業に参加することを前提としたものです。



〜 〜 〜

<<テーマの魅力、ちょっと語ります。石井私見ですが。>>

【KIDS】、というテーマ要素は、内面世界と外面世界の両方にひろがりがありそうです。内面世界としては、子どもの内側に立って、物事を見直してみたりするとおもしろそうです。外面世界としては、子供と親、子供と未来、子供と祖父祖母、子供と友達、という対人側面があり、いろんな振り出し方が出来そうです。

【FOODS】というテーマ要素も、食事、食品、食物、食育、食べ方、学び、気持ち、体を作る、味の好み、など、物体アプローチ、行動アプローチ、意味や感性的な側面にウエイトを置いたアプローチなどなど、いろんな方向性に展開が出来そうです。

〜 〜 〜

<<最後に>>

石井としてもアイデア創出の支援の観点から、参加者の多くの知性と感性が引き出さるようなアイデアソンを設計してみます。

参加者の個々の創造性が生きること。
集団としての創造力が発揮できること。

それを目指して、じっくり、ワークを作ってみようと思います。

石井がファシリテータをするならば、「アイデアソン部分だけとってみても大満足、さらに言えば、発想したものを世の中に物体として産み落としてみたいと強く思う」ような体験を作ってみようと思います。

参加してくださる人たちへの愛であり、それになにより、アイデアプラントと初期のころとてもお世話になった鷹木さんのところの仕事であり、彼らの事業活動がますます魅力的なものになるように、石井の現在の全力を注いで、作ってみようと思っています。

〜 〜 〜


posted by 石井力重 at 12:36 | アイデアプラント 4th(2015-2017)



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