東北工大「アイデア基礎」の授業の二度目では、FBS(フリップボード・ブレインストーミング)を実施しました。
まず、「フリップボード」とは何か、を短く。
クイズのパネラーなどが、自分の回答を書いて、一斉に、とんっとテーブル上に立てる、厚みのあるB4ぐらいのサイズのボードです。あるいは、ニュースの解説に使う、図示したもの(これは、フリップ”チャート”と呼ばれることが多いようです)。
ブレストの際に、これを用いて、アイデアを提示・説明するのがFBSです。
<<準備するもの>>
2つ。フリップボードとマーカーです。
実際には「ちゃんとした厚みのあるB4サイズのボード」を用いる必要はありません。
100円ショップで売っているスケッチブックで充分です。
それもなければ、コピー機の中のA4の紙束、あるいは、大きめのメモ用紙で結構です。
それから、太く書けるマーカー。
私のお薦めは、プロッキーの太いやつです。ですが、サインペンあたりでもいいでしょう。大抵、百均にあります。
あるいは、コピックでも、油性マジックでも、OKです。裏うつりするので机の汚損に注意と、換気をしましょう。
(ボールペン、シャーペンなどのような細かい文字を書くものは線いため、細く画面越しに見えないので避けます。)
※持ち運べるサイズのホワイトボードでもいいの?といわれると、FBSにはあまり向いていません。ホワイトボードをカメラ越しに見ると、肉眼とは違って照明の反射で思ったよりも視認性が低いのです。(あと、頻繁なかき消しをするので、ホワイトボードのケシカスが思ったよりも、とびちり、机の上の本やノートを汚します。土足の場所でないと消すのに気を使う道具なのです。)
<<やり方>>(オンラインのFBS)(想定人数は、3~6名)
0.ファシリテータ(いなければ、メンバーの誰かがやる”ブレストの軽い進行役”)が、ブレストのお題を説明します。
もしメンバーがお題について掘り下げるディスカッションが必要であれば、その時間も取ります。5分ぐらい。大抵は、そのお題について、疑問点や、アイデアの範囲(方向性や粒度)はどの辺まで許容されるのか、という話をするでしょう。
1.一人でアイデアを考えて、それを手元のフリップボードに書きます。5分間。
この時、各自がZoomやTeamsのシステムで参加していますので、多数のメンバーの並ぶ画面が横長(Zoom)か、縦長(Teams)かによって、フリップボードを横長に使うかを判断します。一般的には、アイデア素描は横長の紙に書く方が捗るという傾向があります。
アイデアスケッチは1案1枚の形式にします。複数案ある人は複数枚書いてもOKです。
2.皆で一斉にアイデアスケッチを画面の前に掲げ、順にアイデアを説明していきます。6~12分
アイデアを説明する時間は、一人2分程度。なので、参加人数N人いれば、2N分かかります。ステップ2が、6〜12分ぐらいで終わるのがが良いころ合いです。10分を大きく超えるようだとスピード感が失われすぎるので、参加人数は3〜6名がいいでしょう。
2分インターバルはできるだけ、確保します。2分間の中で、アイデアを紹介し、質問をもらって解説をくわえ、更にアイデアを広げてくるコメントが出てきたりもします。
もしそこで皆からのアイデアが広がり始めて2分で足りない場合は、ファシリテータは少し時間を延ばします。それでも長くて5分ぐらいまで。
なお、複数案を持っている人は、2分では足りない場合があります。というのも、1つ出すたびに質問が出て答える方が、場が温まります。なので、共有する時は、言いたい順に紹介して時間切れで共有し損ねてもいいようにします。
3.また、一人でアイデアを考え、フリップに書き出します。8分
この時間の長さは、ファシリが調整してOKです。先のステップで、アイデアの相互刺激が多く出てきて、ここは時間を少し長めにとった方が、アイデアを熟成させられそうだ、と思えば8分ぐらい。逆に、長くとるより、早く皆のブレスト状態に戻した方がいいと思えば、5分としても結構です。
各自が書くアイデアスケッチは、自分が新たに考えだす案ももちろんOKですし、先のステップで聞いた良いアイデアに着想を得てそれを改良発展させたアイデアを書くのもありです。この場で出てるくアイデアは共有材と思って相互に使います。
4.ステップ2を実施します。
基本的は同じです。ですがだんだん、アイデアが構造化されてきたり、アイデアの具体性が高まってくるので、共有やそれについての質問やプラスアイデアのコメントも多くなります。なので、一人のインターバルが長くなっていきます。ファシリテータはその辺は皆の発話状態を見ながら調整します。
さらに時間があれば、上記のステップ3と4を繰り返します。
おおくて、3周ぐらいをめどにします。
なお、ビデオ会議で会話状態にしている時間(ステップ0と2と4)の総時間が40分を超えると疲れてきます。アイデアが広がるのでどこかのステップを時間拡大することもあるでしょう、その際に、あと何分ぐらい、ビデオ会議時間を取っても場のエネルギーを維持できるだろう、ということを気にしてすすると、うまいく行きます。
<<アイデアの記録>>
ファシリテータが任命する記録係は、アイデアスケッチのスクショ(スクリーンショット)を取ります。
WindowsのPCの場合は、「Shift+Windowsマーク+S」を押すと、スクショが立ち上がります。「四角形の領域切り取り」で、スケッチ部分をラフに選んで、保存します。それがもたつくならば、「全画面表示の領域」の保存でもOK。
タイミングは、共有開始するステップ2や4で、各自の番でまず「はい、最初に、撮ります。でっかく映るように前に出して、5秒制止してください。」と声をかけて。こうすることで、他のメンバーもそのスケッチをじっくりと見ることができます。
そして、記録係は、オンラインで共同編集可能ファイルに張り付けていきます。
具体的には、Googleスライドがおすすめです。Win、Mac、他のPC、スマホのどのユーザからも軽くて開けます。
全員がパワポの使えるWinのPCから入っていれば、パワポをオンライン共有状態にして、(そういう設定があるのですが)、そこに張り付けてもいいでしょう。
この処理の効果は「一人でアイデア考える時間」に大きく効きます。一人発想時間には、「さっきのあのアイデア面白かったなぁ、、、」と回想し、そこを土台にして新しい着想が花開いていくことがあります。共有ファイルを書くが手元で開くことで、その刺激を何度も浴びることができます。
もう一つは、成果物の確保です。
オンラインでブレストしたアイデア群が各自の手元に紙で残った場合、あとでスキャンして送信、や、きれいに打ち直して提出、ということをすると、途端に”めんどくさく”なります。なかなか集まらないので、整理がつかない、リモートワークなのにスピードが下がる、ということが起こります。なので、その場で、全アイデアを確保してしまいます。
ブレスト後にアイデアの魅力度に対して、投票したり、グループピングをしたり、という次のステップも必要ですが、ブレストが終わると同時に、アイデアスケッチ集が出来上がっているので、次の作業へスムーズに進むこともできます。
<<実際の例>>
東北工大では、上記を実践しました。
その例を、次の記事で書きます。
(次に行く前の補足)
なお、この時は大規模(90名ぐらい)いる授業でしたので、上記のやり方をフルに足並みをそろえて行うことはできませんでした。特に記録です。そこが上記の用にはできませんでした。
その場合の対処として、「他の人のアイデアは、手元にメモをしておこう」としてしのぎました。
また、「各グループのリーダは、自分の偏見と好みでいいので、グループの中で魅力的だったアイデアを1案だけ、クラス共有のオンラインファイルへ記入してください」としました。
90名の全員がアクセスできるグーグルスライドのURLを石井がつくり、そこ、各チームの代表1案を記入してもらいました。
そうした理由は、その後、90名で、☆付けをして、上位案をレビューするためです。
このやり方は苦肉の策で、急遽とったのですが、実践上、ベターだったように思います。
もし、全チームのアイデアスケッチのスクショを、一つのファイルに置いたら、数〜数十ギガの重さになり、開けなくなる人が続出したでしょう。
ベストにするために、あと1歩欠けた部分は「代表1案をリーダが一人で決めた」点でした。各チームの中で、代表1案を決めて、それを投稿してもらう、ということをできれば、ベストに近かったと思います。(とはいえ、代表1案を決める、という作業は、アイデアスケッチをグループ内で記録していない中では、話し合いがしにくいはずなので、「5分話して代表案を合意できない場合は、リーダーに一任」という感じに、作業を明示していくことも併せて必要だったでしょう。)
追記:レクチャー動画を作りました。
上記の文章とは、微妙に時間設定が異なります。
そのあたりは、調整シロとお考え下さい。