2つ前、1つ前の記事で、大規模クラスで、オンラインアイデアワークをした事例を書きました。
その中で、全アイデアスケッチを、皆で☆付けをしてみたわけですが、する前はリアルと違うかもしれない、どういう分布傾向になるのだろうと、思いつつやっています。
なので、当事例で、星の数の分布を分析してみました。
といっても、図示しただけですが。
クリックすると大きくなります(多分)。
大雑把に、気づきをメモしますと3つです。
◎上位4%に極端に星が集中する。(これは、リアルと同じ傾向です。)
◎上位1/3(=33%)以降は、(比較的)星の数が少ない。(リアルだと、上位15%あたりからぐっと下がるので、オンラインだと、☆の分布がロングテールになる)
◎☆がゼロのものがない。(リアルだと、☆ゼロが5〜10%ぐらいは大抵存在する。リアルに比べて、オンラインの方がロングテールになる。)
以上です。
==石井の所見==
この1事例だけで、多くを語るのは、よりどころが細すぎると思いますが、それを踏まえて、一定の洞察を述べます。(のちに間違っていた、という可能性もある、と含みおきください。)
◎多くの人の極端に支持する上位案が出現する、という特性は、オンラインでも健在である。
上位4%に上がったものは、やはり広がる余地の豊富な魅力的なアイデアでした。リアルと同じく、抽出のための手法として有用と思われます。
ただし、動きの中で変わっていってしまって、一瞬の視認でありましたが、スケッチの並びの最初の方に置いたアイデアが☆をたくさん取り勝ち、という傾向があったようにも思います。リアルでも、並べたスケッチの配置上、角に置いたものは☆を多くとる、という本質以外の評価影響要素があります。リアルの場合は、一列に並ぶため、より強く効く可能性があります。
(なので、この時はそれを見越して「頭から見ると同時作業者で重くなる。なので、少し先から、とか、真ん中からとか、終わりの方から、と、見始める場所を変えて空いているスケッチから初めてください。」とばらけるように指示をしています。)
◎オンラインの方がアイデア評価はロングテールになるという傾向がある。
これは、他の人がどれに星を付けたか、という行為の匿名性にあるかもしれません。リアルの場だと、全然星の無いものに☆を打つ、のは少し勇気が要ります。特に後半になると。オンラインだと、純粋に、自分がつけたいものに着ける、という行動が顕著になるのかもしれません。他者がどういう振る舞いをしているかがわかりにくい、という環境の良い面、とも言えそうです。
◎書き換えの可能性と☆の過剰な投票の可能性の存在。
リアルだと、他の人が見ている可能性があるため、一人1スケッチに☆を1つまで、という基本ルールは比較的守られます。オンラインだとそれが分からないため、基本ルールを無視してつけてしまう可能性が高いな、というのは作業時の体験としておもいました。また、書き換える、という作業もアナログよりははるかに容易なので、「アイデアを書き換える、書き加えるのはNGです」ということは、繰り返しておかないと、どうしても起こりそうです。
(ここはまじめの厳しく対処するよりは、紳士協定で行く方が、ずっと軽く運用できて楽です。なので、いかにみんなに「いいものを創造的に押し上げよう」とする集団ムードを作れるか、に腐心することが大事かもしれません。)
以上です。
一言、最後にまとめます:
「オンラインでハイライト法をするのは、大いにありだと思います。皆が基本ルールを守りたくなるような、ファシリテータのムード醸成が十分にできていれば、いいワークになるでしょう」
言葉のメモ:
ハイライト法=アイデア収束の技法のひとつ。アイデアをめいめいに評価してまわり、「魅力度が高い」と思ったアイデアに星を付ける方法。実際は作業容易な評価指標として「魅力度」を「面白い、もしくは、広がる可能性があると感じる」と言い換えて、直観的につけてもらいます。
各自の持ち点(☆の総数)には制限がありませんが、一人の人が1つのスケッチに付けていいのは1個まで。すごくいいからといって一人で三ツ星を書いてくる、ということはできません。
原典は『創造的問題解決』(ファイアステンら)に。それを日本風に改良して用いているので原典とは表記や細かさはことなります。
アイデアスケッチ=アイデアの素描方法の一つ。文字だけで書けます。A4の用紙の上 1/4 あたりに太い横棒をひき、その上には「アイデアのタイトル」、その下には「アイデアの詳細・補足を3行ほど」書くというものです。
原典は『考具』、最近では筆者が共同執筆した『実例で学ぶ創造技法』に。