2023年05月22日

AIを活用したアイデア創出:アイデアソンでの新たな試み(1)

 生成AIによる記事リード 
 AIはアイデアソンの強力なツールになる可能性があります。アイデアソンは、チームがアイデアをブレインストーミングして、それらを実行可能な計画に変換できるようにするワークショップです。AIは、チームがアイデアを見つけ、アイデアを現実のものにする方法を理解するのに役立ちます。 
   


生成AIを用いて、アイデアソン(チームでアイデアを出し合い、企画にまとめていくワークショップ)を行う事例が増えてきました。そして実績リリースやWEB上の報告を目にすることもちらほら。

萌芽の時には様々なスタイルが登場します。そして、いずれ収斂して定番が出来上がります。しかし、面白いのはこういう萌芽期の多様さです。
かつては自転車には様々なスタイルがあったり、初期の自動車も多様な方式がありました。(エンジン車にすべて駆逐されてしまいますが、実は自動車の黎明期にはEV車がそれなりに存在していました。)それらは収斂して定番化していきました。しかし、単に歴史的な面白ネタというだけでなく、ある方式がやりつくされて、新しいテクノロジーにも支えられて、次の方式が生まれてくるときに、黎明期の多様な方向性が次の開発のヒントとなることも、よくあります。

そして、今のAI。様々な活用方法が試みられています。定番に収斂するのを待ってみてもいいのですが、定番にならなかった方法は、2年後とか10年後、AIが異次元のレベルまで引き上げられたときに、AI活用の豊富なヒントとして活用できるはずです。その意味でも、今の多種多様は知っておいて損はないでしょう。

というわけで、定番的知見かどうかは歴史の検証を待つ必要がありますが、今、定番としてありだなぁと思う使い方を紹介します。

1.課題を見つける。
2.アイデアを見つける。その具体的方法を見つける。
3.アイデアを企画に展開する。

(それぞれの所で、沢山の列挙、選び取り、ブラッシュアップ、が入ります)

AIに限らず、創造工学的には、発想するときに大事なことをステップにすると上記のようになります。従来のフル人力であっても、実施してほしかったステップなのですが、人間の認知資源(いっときに考える量)には限界があり、上記の一部にフォーカスしたことを行ってきました。
(人力のみでフルセットでやろうとすると、へとへとになる1日か、2日ぐらいを使う必要がありました。現実的に難しいので、一部にとどめることが多かったのです。)

人力でしかできないことに集中して認知資源を使えるので、AIが使えるようになると格段に変わります。(格段に広くなります)

さて、もう少し解説をします。

まず、最初は、アイデアを出すステップの「2」から始めがちですが、たいてい、薄っぺらなアイデアしか提示しません。きわめて対処療法的なやぶ医者に似ています。「この子、熱があるんです。」「(熱を下げたいということか。)では、氷水のたらいを用意して1時間ほどそこに入れておいてください。熱が下がります。」のような。
「どうして、熱があるのか」にいったん掘り下げてほしいわけですが、しない。そういうのを対処療法といいます。現時点のAIは、そういう感じになっています。

してほしいことは、課題の深堀です。

発想のお題があったなら、そのアイデアで助かる人はだれか(ペルソナ。=複数いる)を尋ねる。あるいは、その課題を抱えている人はだれかを尋ねる。
その人たちがその課題に関して困っていることを具体的にあげてもらう。その際に、その困りごとを挙げた理由も挙げてもらうと、回答精度があがります。また、のちにチョイスする際の人間側の負担が軽くなります。
人力:その困りごとの中で注目したいものを1つ選ぶ。
その困りごとを増やす要因があるとしたらなにかを、何かを尋ねる。その困りごとを解決する助けとなる可能性があるものを尋ねる。(←創造工学の『属性分析』という手法のエッセンス)
AIにそれらの要素を考慮して、解決策をN個出してもらう。(アイデアの1行タイトルと、詳細補足3行まで、をテーブル形式で出してもらうと読みやすいです。)Nは5〜10あたりを適宜選択。多すぎると依頼内容を外れ始めますので適度な数を。
その中で、特に注目したいアイデアをピックアップし、アイデアの具体的な部分を記述してもらう。その際に、実現性の高い具体方法から、魅力度の高い具体方法までバリエーションをつけてもらうのもおすすめ。
そうして得られたアイデア(タイトル、詳細、実現方法)を、AIに投げて、このアイデアの主な懸念点は何か。その懸念点へのうち手としてはどんなものがあるか、を挙げさせる。
人力:ここまでのアウトプットを編集して、アイデアとしてまとめる。

そのアイデアをリーンキャンバス、か、ビジネスモデルキャンバスに展開させる。新規にゼロから生み出す事業であれば、リーンキャンバスを。既存ビジネスが既にあってその改良発展であれば、ビジネスモデルキャンバスを使う。
自社の事業を具現化するうえで、社内の稟議上、上層部が重視するファクターは何かを考えて整理する。それをもとに、リーンキャンバスを見た上層部が、どのような指摘(建設的批判)をするかを、考えさせる。
その指摘をクリアするようにリーンキャンバス(ひいてはアイデア)を改良させる。

上層部の稟議上の観点が分からないときは、一般に経営者が気にすること、としてもいいですし、自社の創業者の伝記などがWEB上にあるのであれば「〇〇社の創業者が建設的批判をするとしたらどんなことか」などで、少し自社のテイストに引き戻すのもありです。

これが主な流れです。
この先にも、各社や個別の状況に応じてやれることがあります。

五月雨にあげます。

V)仮想プレスリリースをかかせる。この企画が今から3年後にリリースされる運びになったときを想定して、プレスリリースを書いてもらいます。そこには、想定するユーザ像とそのユーザによるテストサービス利用の感想も記してもらう。

M)月次の売り上げ、コスト、利益表を書いてもらう。期間は18か月。

F)初期の顧客獲得の戦略を提案させる。ややリーンキャンバスのチャネルと被るが重なっていてもいいので明確にする。

S)この事業を成功させるのに必要な強みは何か?この事業を行うのに最適な企業はどこか?

などのことがあります。

Designer.png


(なお、上記のすべては、課題解決型の場合です。それ以外のプロセスをとることもあります。具体的には、シーズ起点型の場合は、環境分析&強み分析、シーズニーズ変換、先見倍歴(石井造語)を用います。根本から違う発想の手順です。AI対話の仕掛けも異なります。)

追記:

こうしたことを、創造やイノベーション界隈の人たちがそれぞれに議論して、知見を持ち寄り、より良い知見を共有することが、求められている感じがします。
学会(日本創造学会)の理事としても、この辺の問題意識はあります。
公的私的に、その辺、いろんな形で場を設けていきたいと思っています。

皆でよりよい未来を開いていきましょう。

posted by 石井力重 at 16:44 | アイデアの技法

2023年05月04日

京都精華大学でのアイデア授業:脳とAIの役割分担、創造性の観点から

最近のブログ更新で、私が行った講義やワークショップの資料や学会報告を紹介してきました。
今回は、京都精華大学の漫画学部で開催された授業について掲載します。


この授業では、脳とAIの力を得意な部分を明確に創造性を引き出す方法について講義しました。
またその相補により、AIと人間の創造性に対する展望についても論じました。

この授業で使用したスライドを動画で掲載します。
(1画面=1.3秒で遷移します。読み切れないときは、停止しつつご覧ください。)

↓↓↓(Youtubeへ飛びます)

京都精華大学2023(人と、AIと、アイデアの授業)

スクリーンショット 2023-05-04 140218.png

余話:

知的生産、特に、創造性の領域は突如急速な変化の波が立ち始めました。
一年後には、この講義内容も、全面刷新するだろうと思います。
習う知識のうち「短期のトピック」と「長期に成り立つもの」を分けておかないと、いけません。
自戒を持ちつつも、つい、急速な変化の中で近視眼的になりそうです。

突如始まった(実際には昨年の学会ですでにGPTに言及した研究者もいた)創造とAIの変革期。
面白くなりそうです。


追記(2023年5月22日):
 
 授業アンケートが大量に届きました。固有の感想を引用するのははばかられるのでAIに要約してもらい、以下に紹介します。(要約が内容的にアンケート文章とマッチしていることは、人力でチェック済みです。 
 

以下は、ゲスト講師として行われた授業の受講者からの感想アンケートの要約です:

「講義が大変面白かったという感想が多数ありました。AIについての専門的な視点からの説明が新鮮で、理解に役立ったという声もありました。特にウーバーイーツのアイデア出しのセッションやアイデア出しの様々な方法についての話題が受け入れられていました。

講義を通じて、アイデアが浮かばない時やアイデアが煮詰まった時に試してみたいと思う新たな発想法を学べたという受講者もいました。先生との対話が楽しく、学びやすい雰囲気があったとの声も見受けられました。

また、漫画のアイディア出しをする際に、講義で得た知識を参考にしたいと考える受講者もいました。講義を通じて、可能性が広がったと感じる受講者や、素晴らしい授業だったと感謝の声を寄せる受講者も多くいました。

さらに、アイデア出しについて新たな視点を得られたという感想や、実践したい新たなアイデア出し方を学んだという声もありました。直感力を鍛えたいと考える受講者や、AIが人間のアイディア出し能力を超えられないと感じて希望を持った受講者もいました。」

 
   



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