昨日(2024年4月24日)は、京都精華大学の17年間の「アイデアの授業」の最終講義でした。
ゲスト講義というのは受け入れ担当の教員がいて実現します。2008年、本学の教授で漫画家の「さそうあきら」さんからゲスト講義の依頼をいただいて、この講義は始まりました。
そのうち、アニメーターの数井先生からも授業の依頼をいただいて並行して別の「アイデアの講義」を行っていました。
そして数年前、さそうさんの退官、当初の授業枠を数井さんが引き継いで継続し、そしてその数井さんも今年で退官、ということになり、長かったこの講義も今年で完全に終わりになりました。
私が、講義を担当した中で、気づけばもっとも長い年数を継続した案件でした。17年間。何せ2011の大震災の年も被災1ヶ月後の春にやりましたから。(次に長いのは、早稲田大学です。現在11年目)
いつも、登壇する前は心に誓います。
これが人生最後の仕事でも悔いのない、出し惜しみのない全力仕事をしようーーと。
そして、「最後の日は人生で一度切り」のはずなんですが、石井のような、いくつもの仕事がある、変わった生き方だと、そういう日が、本当に「何度か」やってきます。
昨夏の「奈良女子大学」の最終講義。そして昨日の「京都精華大学」の最終講義。
”これで、漫画の学生さんたちに講義をするのも、最後だ。”と思うと、17年の中で作ってきた知見やエピソードもすべて伝えきりたい、という情熱で話しきった90分間でした。
日が明けて今日、アンケートと質問の集計が上がってきて、(自分で言うのは自画自賛になりますが)学生さんたちがたくさんのものを受け取り、作品を生み出していく力にしてくれたことが、わかりました。
毎年、「これが最後の仕事でも悔いのない仕事を」と思っていますが、頭の先からつま先まで全部全力、という仕事ができてはいなかったもしれない。ーーそう、思いました。今年は、全部あんこの詰まったたい焼きが完成した、と思える講義ができたので、それに比べると、昔は、しっぽの所にあんこが足りなかったり、焼きすぎたり、生焼けだったりしたのかも。学生さんが「最高」と思える料理(講義のこと)を出せたのは、17年でこの一回きりだったのかも、しれない。と、アンケートのかきぶりの変化にそう感じるのでした。
この授業の熱量とクオリティーを17年前から毎年できていたらーーと思うその気持ちを、次の案件で活かします。「これが最後でも悔いのない仕事を毎回、しよう。」と心に誓って。
なお、17年の受講者の中には、佳作、新人賞、連載開始、人気作家になった方も何人もいます。今では、きっとお会いしたらなれなれしく「やあ、●●君、●●さん」ではなく「ご活躍を拝見しています、●●先生」と挨拶しなきゃ、というほどに立派になった方も。
素直に聞いてワークを実践するタイプの人もいたし、突っかかってきて反発するような受講態度だったタイプの人もいましたが、どちらのタイプからも連載を持つ漫画家が出ていて、生徒としての評価と、漫画家としての資質というのは、あまり関係がないのかもな、とも思う17年でした。
そしてだんだんと「どの子も将来、大先生になる可能性がある。僕はそういう人の若いころに出会っている可能性があるんだ。」そう思って、どの子も刮目して接するようにしてきました。
卒業生たちがツイッター上で、卒業後、食うために本屋でバイトしながら持ち込みを続けていて、なかなか目が出なくて鬱々としているのもみました。そのうち、作品が漫画誌に乗るようになって来て、すっかり漫画家になっていく人もいれば、ツイッターも綴じてしまって活動が分からなくなった人もいます。
後者の人にも、人生を生き抜く創造性の本質はお渡ししてきたつもりです。どういう道を行くのであれ、その道で自分の人生を切り開いていってくれることを心から祈っております。
最終講義の後、熱心に質問に来てくれた人に聞いたら、サンデーで奨励賞をもらった作品がある、とのことで、見せてもらいました。SOSさんの作品「佐原はいつも」。原稿を読ませてもらい、「またSOSさんの作品を読んでみたい」と思いました。思い返せば、若いころに出会った(まだその時点では学生で、後になる)漫画家さんのネームには「またこの人の作品を読んでみたい」と思わせるものがありました。きっと将来また、「俺は、この漫画家の若いころを知っているんだぜ」と自慢できる人が一人増えたのではないかと、思いつつ、帰路につきました。
京都精華大学の学生さん、先生方、事務方の皆さん、長い間、どうもありがとうございました。
追記:
アンケート結果をそのまま引用することは同意を得ていないのでできませんが、AIにすべての感想を短いサマリにしてもらったものを、紹介します。
ChatGPT4 「アイデア創出授業に対する学生のフィードバックの概要です。この授業では、多様なアイデア発想法が紹介され、学生たちに深い印象を残しました。特に、「カオス間引き法」や「出し尽くしたあとの追加10個のアイデア」などの技法が好評で、創造的思考を刺激する効果があったと評価されています。また、「歩きながらアイデアを得る」という身体的活動を通じた発想法も多くの学生に支持されました。授業を通じて、絶望や困難を乗り越える力としての創造性の重要性が強調され、多くの学生が新たな視角を得ることができたようです。」 | ||
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