2024年09月24日

夏の旅仕事は、八尾(20名2日間)、早稲田大学(200名4日間)の講義ワークショップをしてきました

8月の終わりから9月の初めまで17日間の旅仕事に出てきました。「講義」と「感性の仕入れ」です。

余談から。

「感性の仕入れ」というのはアイデア創出の源泉であり大事な「インプット」の時間です。人から見ると、気の向くままに、ふらふら旅しているように見えるでしょうけれど、テーマがあり、テーマ外の出会いも柔かく受け止める姿勢で、行った先の土地でフィールドワーク的にいろんなことを吸収します。
旅の折り返し地点は高知県の最も西の地点。そこで偶然出会った、その日ちょうど誕生日で93歳になったという方と2時間ぐらい、いろんな話をしたり。戦争の悲惨さ、戦時下になったら生活するうえで何をすべきか、のノウハウなどは文献にも滅多に

報告の本題へ。

さて、八尾市では起業家の卵、あるいは、すでに起業していて伸びようとしている創業者が受講する八尾市の起業家育成講座です。石井はアイデア創出の回を担当。一日8時間を連続2日間、という結構スパルタンな構成。でも、楽しんで学んでもらえたようです。

早稲田大学では、人間科学部でデザイン論を、夏季集中講義で。場所は所沢キャンパスで、受講生は200名。このキャンパスの最大級の大規模授業です。こっちはさらにハードで、朝から夕方まで4日間連続で、大人数で立って動いて、アイデア創出を実践していく、という内容です。この仕事は、講義ーーという側面だけでなく、大規模イベントの運営、という側面もあり、質と量の両方を求められます。(講義の質、大人数でのワークショップ)。全力でお話しして、運営して、楽しんで学べて将来の仕事に役に立つ内容を提供するぞ、という姿勢でやっています。学生さんの全員の評価は分かりませんが、個別に来て感想を教えてくれた学生さんの言葉は講師冥利に尽きるものでした。(もっとも、わざわざ言いに来てくれる受講者というのは、集団の中でも満足度の高い人なのでそれを石井の評価の代表サンプルであるかのようにいうのは、いささか厚かましいわけで。)

designron2024.png

他、旅仕事の前後にも、2件ほど、大企業さん向けの講義ワークショップをしました。
重工業の企業さんのアイデア創出に向けたものが1件。
先端産業の装置産業の企業さんのアイデア創出に向けたものが1件。
どちらも、他の案件と同じく全力でお話ししました。

夏の1か月をざっくり束ねての活動報告でした。


posted by 石井力重 at 00:18 | アイデアプラント 7th(2024‐2026)

2024年09月23日

流れが戻らない今、私たちがすべきこと

コロナ以降、社会や生活の流れは大きく変わりました。一見するとコロナ前に戻ったようにも見えますが、実際にはかつての流れが枯れたり細くなっています。その一方で、新たな流れが生まれ、育っています。

ダムのモデル、アリのモデル

多くの事業者は「一時停止していたものが再開する」と考えてビジネスを再開しましたが、思うようにいきません。流れが“戻らない”のです。これは、水門を開けば溜めていた水が流れ出すという「ダム的なモデル」が心にあるからかもしれません。

しかし現実は、意志のない水の流れではなく、アリの行列を板で遮ったようなものです。道を塞がれると、アリたちはしばらくはとどまりますが、別の魅力のあるルートを見つけ、流れ出します。板を外しても、新しい道の上にある食物がより良いものであればそちらを選びます。人間はそこまでシンプルではないので、前のものが好きだった人は戻ってくるわけですが、一方で、他でいいものを見つけて戻らない層も結構いるわけです。

コロナの間、いろんな業種がやむを得ず道を塞ぎました。そして社会が再始動して、開けてたところ、戸惑います。溜まっているわけではなく、すでに他へ移ってしまったのです。移った先は同業他社だけでなく、消費者の時間とお金を奪い合うあらゆるもの。そのため、見えにくいのです。

「衰退の早まり」と「成長への投資」

負のインパクト(疫病や大災害やそのほかの危機)で社会をたたくと、「衰退の早まり」と「成長への投資」が生じると、未来予測の専門家に以前、教えてもらいました。

ある種の熟成市場はもともと縮小傾向にありました。コロナは、その時間を十年とか二十年とかの時間遷移を早送りしてしまった。

なので、いずれ消え去るトレンドにあったものは、見切りをつけ、成長のトレンドにあったものも、流れのない場所に店を構えた「駆け出し」として、創業時に相当する努力をしなければなりません。

先見のための予兆

さらに、社会全体でも変化が起きています。

(1)人間関係の希薄化

ソーシャルディスタンスやリモートワークにより、人間関係の希薄化は進みました。職場でのチームビルディングは弱まっています。それが顕在化してきたのもあり最近は、リモート文化から対面文化へと戻りつつあります。しかし、多分対面に戻すだけでは終わりそうにありません。
もう一つの大きなファクターは、ハラスメントやジェンダーへの配慮の進展です。先輩経由で訓練されてきた「昭和」の感覚を持つ人々には、今の新常識は難しく、まるで5歳児がガラス細工の店にいるようなもの。自由に動くと壊してしまうので、動かずにいるしかありません。それが、パワフルな組織の醸成にブレーキをかけています。(だからといって「昭和よ再び」とは言えません。あの時代はあの時代で、パワフルさと同時にいろんなものを壊していました。)徐々に適応していくでしょうけれど、長くブレーキを踏むことになるでしょう。

(2)知のロス

組織が持っていた暗黙知も、コロナの時期の多くの退職者により失われました。マニュアルでは伝えきれない貴重な知識が組織にはいっぱいあり、人数は戻しても業務の水準が上がりません。

(3)自信の低下

経済面では、コロナ明けには、賃金や物価の上昇の希望の兆しがありました。が、それほど皆の生活が豊かになった感じはありません。(結構上がった会社もあるのですが賢い人はそれを声高にいいませんしね。)
大きく言えば日本は30年間賃金がさほど変わっていないのに対し、欧米やアジアではその間上がってきました。
そして、円安で外国人観光客には日本は「安い国」になっていています。

経済だけでなくホワイトカラーの面でも、生成AIの急速な進化が影響要素に加わりました。虚無感や諦観を抱く者もいれば、AIを活用して進もうとする者もいます。(なので、このファクターは必ずしも、自信の低下項目に分類できませんが。)

負の回転だって商機を生む

以上、3つの変化を書きましたが、独立な要素というよりは、相互に関係しあっているものです。また、総じていえば、現在、大きな方向性が見えにくい時代に入りました。
そんな中でも上記の3つの変化は、「ある種の市場にとっては、ビジネスチャンスを生む変化」でもあるでしょう。3つの変化で生じる社会の軋轢を、事業の手法を通じて解決できれば、自社の新事業になります。

見知らぬ人生ゲームになっていた

コロナの中断が終わって、続きを再開した人生ゲームは、実は、新しいルールが加わり、参加プレイヤーも入れ替わり、その先のルートも大きく変わっていた、というのが今の状況です。「中断前の状況に戻らない」と感じたときは、財産も同乗者も何も持たなかった「リセットのスタート状態」から頑張る、という姿勢がいります。


new_start.png


ただ、現実社会では「借り入れていたお金」だけは、リセットされない。世知辛いもんですが。とはいえ、常識を更新し、新しいルールのゲームにいるという認識があれば、それまでのノウハウもまたリセットされずに、新しいゲームに写像して使えるはずです。プラスマイナス、とんとん、で。





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