2014年11月09日

「10個の10面体サイコロで遊びを作り出す」(発想の練習ワーク)

単純なものを使って遊びを作り出してみる。これは、遊びや面白さを作り出す、という創造性の訓練にもなります。

創造性についてはいくつかの側面がありますが、ひとつには「モノ単体の価値と、とそこに、使い方が加わって初めて出現する全体の価値」があります。

柔らかい思考系の学習の場の導入ワークであれば、10面体サイコロ(※正確には10面体、という図形ではありませんが、0,1,2,・・・,9の面を均等に出すサイコロのこと)を10個わたし、これで遊びを考案せよ、というお題を出してみると、よい思考のストレッチができます。

10面体がなければ、普通のサイコロ(6面体)でもいいでしょう。

『1個なら、こう使う』という固定観念があるのですが、手の中に10個のサイコロがある、という状態は、普通の人にはめったに無いことなので、わりと新鮮な発想がたちあがりはじめます。

そして思いついてためしてみて「ああ、でもこれじゃあ、遊びとして成り立たないかぁ」と試行錯誤をします。

試行錯誤を、何かを作るような回答をする課題のほうが、アイデアを扱うような場の導入としては、思考処理や言語処理のウォーミングアップに向いているようです。(※これは、ワークショップ&講義の長年の経験からの経験則にすぎませんけれども。)


〜 発想例 〜

10個の10面体サイコロの遊び、その発想例をいくつか紹介してみます。
アイデアとしては良いも悪いも無分別で、簡潔に書きます。

◎ 四則演算で10にする遊び

・サイコロを4つ振ります。
・出た数を四則演算で10に出来ればクリアです。
・10に出来ない場合は、手持ちのコマを1つ振り、それも使って10を作ることを試みます。
・それでも出来ないときには、更に加えて、同様に試みます。

・10に出来たら、使ったサイコロから4個を手元に戻せます。
(なので、4つで10を作れた人は、ロス0)

・これを順番でやっていって、一定のターン後、もっともたくさんサイコロを所有していた人の勝ち。

・Opitionルール
 サイコロを全部10面体にせず、6面体や4面体、8面体など、異なるものを手持ちに入れるスタイルにします。
 はじめに手持ちのサイコロをどれにするかはじゃんけんで順番に選ばせるなどをします。
 こうすると確率論の考慮した戦略性が生まれます。(5つ目に出て欲しい目を計算し、その最も出現確立の高いサイコロを選ぶ、と言ったこと)

・・補足・・

・この遊びでは、4つの時点で何とか工夫して10を作れるだけの算数的な思考力の高さが、勝敗に徐々に影響します。
・また、他の人がする四則演算の工夫は、他の人も吸収することにつながります。
・子どもと一緒にやると、単純だけれど工夫の余地のある算数の問題として楽しく遊べます。


◎最も多い出目を早く言う遊び

・サイコロ10個をいっぺんに投げます。
・大抵は、出目がダブります。
・例えば、3の目が、もっと多く出ていたら、「3!」と最初に宣言した人の得点になります。

・・補足・・
・これは、算数の力ではなく、空間に散った数を瞬時に見ていくような、スポーツ的な周辺視の力が問われます。
・理屈抜きで遊べます。
・一瞬で勝負がつく躍動感があります。
・慣れてくると、勝敗の判定が難しい、という点もあります。


◎スピード足し算遊び

・サイコロ10個をいっぺんに投げます。
・出目を合計して、いち早く言います。
・一番早い人が勝ちですが、間違っていればサイコロを振った人(番の人)に点数が入ります。
・番の人も回答権があります。

・Optionルール
・10個の期待値(10面体サイコロ×10であれば45。)に近い数のいくつかのカードを置いておきます。(たとえば、38、42、45、48、53)
・そして合計値もっとも近い数のカードを取ります。カルタ取りの要領で、早い者勝ち。一度さわったら手放せません。
・そして合計数に実際に最も近いカードを取った人の勝ち。

・・補足・・
・これは、ルールが簡単で判りやすいです。
・暗算の力の勝負なので、勝敗がいつも同じになりがちなところは寂しい点です。


このほかに、実は遊びは考案されます。特に子どもだと、次のようなことが考え出されます。

◎サイコロタワー

・10面体のような、細くて積みにくい形のサイコロを高くつむことを競います。

・・補足・・
・サイコロとしての使い方は一切していませんが、これも「10個の10面体で遊びを作る」ということにのっとっています。


◎サイコロおはじき

・3重の円を書き、30点、20点、10点、0点と書く。
・サイコロを指で弾いて高得点のところにうまくとどめる。
・良い位置にある相手のサイコロにぶつけてはじき出すのもあり。
・5つのサイコロの位置得点の合計の高い人が勝ち。

・Option
・サイコロの出目×位置得点(10点とか30点とか)で、点数をつける方式にする。
・ただし出目に0がある場合、それは10と読み替える。

・・補足・・
・これは、おはじきでもほぼ同じなので、サイコロとしての使い方をしません。
・サイコロのいびつな転がりが偶然的なゲーム性を高めます。
・Opiton方式だと、サイコロとしての使い方も少し出てきます。
・Opition方式だと、位置得点が低いエリアでも0が出ているさいころは弾いて転がそう、というゲーム性が出てきます。


〜以上、発想例でした〜

サイコロに限らず、さほど機能性の無い単純なものでも、たくさん集め遊びのプロセスを付与することで、物質が保有する以上の価値を出現させることができます。

創造、という行為の一側面として、無から有を生み出す、という要素があります。このワークはそういう作業をクローズアップして見せてくれます。


:蛇足(独り言です):

創造、を、新しい有用性(を生み出すこと)、とわたしは定義しています。(CPSでの定義に準じて。)

このワークをすると、うまく面白い遊びを作り出せた人はそのサイコロをほしいと感じるようです。その気持ちの強さを定量評価することが、実は彼、彼女のした創造の度合いを測定することなのかもしれない、とそういう場面で感じます。

創造性の豊かさは、その人の日々の暮らしや人生を豊かなものにする。想像性に造詣の深かったA.Fオズボーンは著書で語っています。

同じモノ(物体)を手にしたときに、その価値をプラスして作り出せるかどうか、は、その人の創造力しだい、という面はあるのかもしれませんね。

posted by 石井力重 at 14:00 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)



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