■やる気を高める方法
人のやる気には、自分の行動がある結果をもたらす「結果期待(outcome expectation)」だけでなく、その行動をうまく行うことができるという「効用期待(efficacy expectation)」を持つことが大切。
自分はある行動をとれるはずだという自信(効力期待)があるときに、人間のやる気(結果期待)は高まる。個人によって知覚された効力期待を「自己効力(seif efficacy)」とよび、個の自己効力の高低が動機づけに大きく影響する。
自己効力を高める4つの情報:
1行為的情報…実際に自分でやってみることで得られる情報
2代理的情報…他者が成功したり失敗するのを見ることによって得られる情報
3言語的説得の情報…言葉による説得によって得られる情報
4生理的喚起の情報…声が震える、赤面するといった生理的反応に関わる情報
実際にやってみて成功体験が得られれば、自信がついて自己効力は高まる。成功体験、失敗体験をお互い語り合うことで、失敗したのは自分だけではない、と励まされたり、次はこうすれば成功する、とヒントを得ることで、失っていた自信を取り戻すことができるかもしれない。3,4に比べ1,2は大きい。
■能力観の重要性
やる気には能力に対する考え方(能力観)が影響している。同じくらいの能力を持っていても、問題があるとすぐにあきらめてしまう子どもと、最後まで粘り強く挑戦し続ける子どもがいる。なぜ違う?実験で明らかに。無気力状態の子どもの集団。2つに分けた。
成功経験群:一方のグループにはやさしい問題を多く与え、自信をつけさせた。
努力帰属群:もう一方のグループには、やさしい問題と難しい問題とを与え、難しい問題ができなかったときには、それが努力が足りなかったためであることを繰り返し話した。
成功経験群の子どもたちに比べ、努力帰属群の子どものほうが、難しい問題で失敗してもやる気を失わず、根気よく学習を続けた。このことから、能力は努力次第で変えられるという考え(能力変化観)を持つ人は、能力は固定的でコントロールできないものだという考え(能力固定観)をもつ人に比べ、内発的に動機づけられやすいことが、明らかになった。
また、達成しようする目標の違いが、内発的な動機づけや持続的に努力する姿勢に関係する。能力固定観のように、他者から評価されることに関心をもち、成功したり、他者に勝ちたいという「パフォーマンス目標」をもつ場合、他者から思うような評価が得られなかったり、一度失敗すると、目標達成に対するやる気を失いやすい。
アイデア:カードゲームで、プレイヤーごとに、達成しようとする目標が違う、という設定は面白いかもしれない。お互いの行動スタイルの違い、秘められた達成目標の違い。それが織り成す多様性を楽しむ、といった感じ。
これに対し、能力変化観のように、自分の有能さを他者に示すことよりも、自分の能力をどのくらい自分で高めることができるかという「ラーニング目標」をもつ場合には、目標達成のプロセスに関心があり、他者の評価や成功・失敗に関わりなく、目標達成に向けて持続的に努力していこうとする姿勢につながる。