母校、東北大学で、博士向けの講座でお話をします。ずいぶん先で、10ヶ月も先のことなんですが、公開になりましたので、書きます。
この講座というのは
イノベーションに関する知見、マネジメントスキル、 社会人基礎力、課題設定・解決力等を身に 解決力等を身につけ、 イノベーション創発博士リーダーに成長しよう! |
というものだそうです。
PDFの最後にあります、「ベンチャー起業とキャリアパス」として、私の仕事を紹介します。
私は、社会自認なった後、母校に戻り、2つの博士後期課程に学びました。工学と経済。
どちらの研究かも単位の数としては、必要な数をとり、しかし、博士論文は出していないので、必須の単位はそろいきっていませんで、最終的には、在学年限にほぼなってしまって、退学という形をとっています。(途中で、休学して、行政法人のフェローを3年したことも、期間の使い切りにきいてしまいました。)
そんな感じで、退学ではありますが、割りと、大学や学問が好きで、入られる年限の限り、席を置いていました。
そんな私が現在、アイデアプラントの代表として、「一般的にはなんだか良く分からない仕事」で生計を立てています。事業形態は個人事業主。私の仕事は、顧客の半分以上が、一部上場の日本企業です。契約を結ぶ時は、大企業と石井力重で結ぶ、ということが日常茶飯事。
さて、博士で学んだことを、どうやって経済的価値に変えているのか、創業の頃の実際の話(18ヶ月目までは、残預金が単調減少し、そこからは反転して増加になったこと、など)、事業をする上で見つめている遥か遠くの北極星となる指針はどう作るのか、などなど、そんなことをお伝えしようと思います。
で、大人には、実利が必要です。
聞いてくださる方々にとっての実利です。彼ら彼女らの今後のキャリアパスに、「もしも博士過程を終えたあと、自分の身につけてきたことで、自分で飯を食うなら、どんなやり方ができるか」も、想起してもらうようなミニワークもしてもらおう、と思っています。主催者さんの意向次第ですが。
大上段に構えた喋りではなく、後輩の友人達に、お茶の時間に読んでもらったように、率直な話をしてみたいと思っています。
例えば、以下のようなストーリー展開はどうかしら、と。
博士に長く在籍した身として、現在の日本のドクター人材の現状を知っています。博士まで行くと、就職が「すごく高度なもの」になるので、たまにしか出現しないレアなニーズがめぐってこないと、飯が食いにくい、と。いわば、博士人材は、スーパーコンピューターみたいなもので、企業側はノートPCは毎年無尽蔵に買うけれど、スパコンは時々でいい。事業部によっては、無くてはならないけれど、毎年大量に買うわけにも行かない。
で、自分の中にたくさんの価値があるのに、雇う人がいないから、そのCPUパワーは発揮する場がない。
しかし、私は思います。
石井の場合は、マスターは理系でした。理論物理、それも、量子力学をやっていました。そのあと、専門商社に進みます。商社マンといえば、聞こえはカッコいいですが、営業マンとして、ビジネスの現場にいきなりはいって、思い切り揉んでもらいました。そして、そのあと、更に博士に進みます。
そうすると、身に着ける高度知識の「売り方」が分かるわけです。
売り方、というと、下賎な表現ですね。
身に着けた高度知識の「貨幣的価値への転換方法」が分かるわけです。
そうすると、博士にいるころから「飯は自分で食う。」と自然と考えていました。
博士をでて、創業する人はすくないですが、博士の1つ目と2つ目の間に、某フェローをやっていたときには、博士たちの創業、という事例も多く見聞きしていて、中には危うい事例もあれば、示唆に富む事例もありました。
そういうケースに学んで、自分のビジネスをデザインして行きました。
世界で1番の何かがなけば、商売にならない、なんて、博士にいると思いがちなんですが、世の中の5の人たちに対して、自分が5.5の能力があれば、薄い商売が存在します。掛け算する量目が多くできれば、食えます。
5の人に9.5の能力の人がやる仕事は、利益が濃いですが、その量目はそんなにジャブジャブありません。でも一定の量はあります。そういう人たちと仕事をするには、何をするといいのか。それを考える方法もあります。
そういうことを色々知っておいて、いくつかのアイデアを暇なときに考えておくと便利です。
「いざとなったら、自分の才覚ひとつで自分ひとり食わす分ぐらい、稼いでやるわい!」という自信や覚悟があると、研究を続ける道を行くにしても、不確実さの不安と同居できるでしょうしね。
・・・なんていう語りだしから、してみようかなぁとおもいます。
高度な知識を身に着けた人が、もっともっとお腹いっぱいご飯がたべらるような世の中であって欲しいですし、そういう社会でなければ、未来の可能性はどんどん狭くなります。
ご縁をいただいてしゃべるからには、そうしたことへの一助になれるよう、全力でやってみようと思います。