今回は、創造工学の絵本1、として、アイデアを出す作業を、絵本調に表現してみます。
「子供向け」テイストで、いざ。
ブレスト村ではアイデア林檎をたくさん育てています。今日はちょうど、アイデア林檎を育てる日。かねてからの問題があって、みんなでアイデアを出そうと。
ブレスト村の村人がいいます。
「さあ、アイデア林檎を育てよう。まずは、問題を解く、適切な種(テーマ)を選ぼう。」
ブレスト村の人は知っています。問題は必ずしも適切な姿をしていないこと。複数のものが張り付いていることもあることを。
問題の箱、中には種がいっぱい。

そこに遊びに来ていた、となり村の人が不思議がって聞きました。
となり村
「似た種に見えるけど、どれも同じじゃないの?」
ブレスト村
「同じように見えて、実は一つ一つ、少しずつ違うんだ。中には、今日のメンバーでは、育てられない種もある。育てられるものの中にも、育てる順番があるんだ。」
そう言うと、種をざあっと出しました。

黒い種は今日のメンバーでは育てることができません。
茶色の種はすぐに育てることができます。
黄色の種は茶色の種がそだって十分にアイデア林檎を実らせてからでないと、なかなか育ちません。
となり村
「ふつうは、どうやって、調べたらいいの?」
ブレスト村
「黒い種をみわけるには、オーナーシップ、ということをチェックしてみるといい。」
「オーナーシップのないものは、充分なアイデア林檎をみのらせられないんだ。」
「黄色と茶色を見分けるには、上に引く力と下に引く力、をチェックしてみるといい。」
「茶色の種は、比較的解くのがやさしい問題の種。」
となり村
「ブレストには適切なテーマ設定が重要ということか。今までは、とりあえず問題をあいまいにしたまま、アイデアだしをしていたなぁ。」
ブレスト村の村人は、まずは茶色の種を一つ選んで埋めました。

アイデア林檎の木を育てる時には、水を沢山あげます。あげ続けます。
ブレスト村
「アイデア林檎の花がたくさん咲くように、花が咲いたらその花の良いところに目を向けて褒めるんだ。水をかけるつもりでみんなのアイデア林檎をたくさん褒める。」
となり村
「でも、どうして?」
ブレスト村
「アイデアというのは着想したばかりのころはとても未成熟なんだ。でも、褒めることで未成熟なアイデアの潜在的可能性を、発見することができるんだ。」
ブレスト村
「それから、アイデア林檎の花を「実」にしよう。咲いた花は一日と持たず消えてしまう。収穫できるようにするには「実」にしておくんだ。」
となり村
「それってどうするの?」
ブレスト村
「”紙に書く”こと。花を実にするとはそれだけ。簡単?でもとても重要なことなんだ。」

ブレスト村
「紙に書いておくと、発言者とアイデアを切り離す効果もあるんだ。それによってより皆の力を注ぎやすくなって、アイデアが育つんだ。」
となり村
「ところで、ブレーンストーミングって4つのルールがあるだろ。あれを守りながら活発に発言するのって結構難しいよ。」
ブレスト村
「そうだね。ブレインストーミングの4つルール、これは初めて取り組む人はその内容を守るだけでも結構頭を使うので、アイデア出しどころじゃない。また、どんどん発言が進む場合は、リズムよく発言をするというコミュニケーション能力の高さが結構必要かもしれない。」
「でも、ブレストの4つのルールには、その原点となる、2つの心がけがあるんだ。初めのうちはこれを目安にするといいよ。」
【ブレストの原点となる2つの意識づけ】
『判断を遅延しよう(判断遅延)』
種が育って沢山の実がなるまで、アイデアの木では、どんな枝もどんな花も摘み取らないこと。不恰好な枝振りの先に意外な花が咲いたりします。
『選択肢を広げよう(選択肢拡大)』
ちょっとしたことでもアイデアの花をつけよう。似てても少し違えばそれは別の花。それから、へんてこな花も気にせずつけよう。そして誰かのつけた花にヒントを得てその近くにつけられる花はつけよう。
ブレスト村
「ちなみに、ブレストのルールの”批判禁止”というのは、オズボーンは”判断遅延”としているんだ。判じるのは後でいいってね。現在の日本ではそれを強い言葉に表現したもの(批判禁止)が広く知られているんだ。」
となり村
「ブレインストーミングをやっても、批判禁止が徹底できなかったり、しゃべらない人がいるんだよな。全然発言の出ないアイデア会議って結構あるし。そういう場合に使える方法っていないかな。」
ブレスト村
「ブレストには、大きく分けて3つのスタイルがあるんだ。BS(ブレインストーミング)、BW(ブレインライティング)、CBS(カードブレインストーミング)。参加者が仲がいいか初対面か、参加者がブレスト的な会話に慣れているかそうでないか、などで使い分けると効果的にアイデア出しが進められるんだ。」
「ブレインストーミング(BS,ブレスト)」
ルールのある雑談。4つのルールにのっとってアイデアを自由に出し合う。アイデアの記録には、記録係が、ホワイトボードなどへアイデアを記録する。メンバーのコミュニケーション能力、リーダの場のムード作りの力、などが高い場合は効果的。ホットなアイデア出しの体験を楽しむことができる。メリットは、準備する道具がほとんどいらないこと。デメリットは、じっくり考える時間がほしいタイプの人の力を生かしにくい。批判禁止(≒判断遅延)の徹底は実質、難しい。
「ブレインライティング(BW)」
30分間、黙ったままシートに向かってアイデアを書く。アイデア出しを出す際のルールはブレストと同じ。数分おきにシートを他の人と交換するため、黙ったままでも数多くの他の人の発想に触れることができ、発想が広がる。メリットは、批判禁止の徹底が容易であること。突飛なアイデアも出しやすい。発言が苦手なメンバーやアイデア出しが苦手な人も参加しやすいこと。全員がほとんどの時間を考えることに費やすため、出てくるアイデアの数は非常に多くなる。デメリットは、シートを用意する必要があること。手書きでその場で作ってもよい。専用シートを使うとそのあとの収束作業がやしやすい。
「カードブレインストーミング(CBS)」
ブレストとBWの中間的なもの。基本的にはブレストと同じ。発言する際に、自分の手元にある大きめのカードにアイデアを記入してから発言する。発言の苦手な人、あがってしまう人などが発言しやすくなる。また、会議でも初めに2分程度の記入時間をとり、全員に書いてもらってから発言してもらうと、発言の少な人からも意見をもらいやすい。力のある人が先に発言しても皆が影響されないで一通り発言を出すことができる。発言がカード(やフリップボード)としてのこるので、あとでアイデアを整理しやすい。
筆者補足:
時折、「CBS=ブレスターですか」と聞かれます。ブレスター(ブレインストーミングカードゲーム)は、私のチームで開発しているカードを用いたブレインストーミング学習教材です。CBSのことではありません。ただ、将来的にはブレストの第4の方法になれば、と願っています。
となり村
「なるほどなぁ、色々やり方があるのか。ところで、どれもチームで行う活動のようだけど、一人でやる方法もあるの?」
ブレスト村
「俗にいう”一人ブレスト”だね。ブレストを作ったオズボーンやそのお弟子さんたちがまとめたSCAMPER法というのがあるよ。アイデアを引き出すための問いかけリストなんだ。日本では”アイデアの7つの問”が有名。より本格的に使うならば原典にちかい書物の一つでは48の問いかけがある。これらを自分の課題で問いかけるだけでかなりのアイデアが出せる。」
筆者補足:
一人ブレストのやり方を尋ねられることが結構あります。チェックリスト法だけじゃなくいくつかの方法もまとめて載せました。こちら。
創造工学の絵本1、終わり
関連記事:
創造工学の絵本2【ブレスト村。アイデアを収穫しよう】
以上のお話は、ごく普通の人が、創造のプロセスを使って効果的にアイデア出しを行う活動です。天才的な発想力が必要な方法ではりません。創造力は意識して伸ばすことができます。やり方を学べばより引き出すことができます。創造的な活動をする方の参考になれば幸いです。