2008年04月06日

ブレストのルールがもしも逆だったら・・・

創造工学の中でもブレストは基本スキルとしてよく使います。しかしブレストのルールがなぜそのような形(批判禁止、質より量、突飛さ歓迎、他の人に便乗)なのでしょうか。本質的理由に未だにたどりつけません。一端を探るために逆モデルを立てて考えてみます。



1.「批判禁止」の約束がもしなかったら・・・

⇒「出したアイデアの悪い点は、すぐ批判せよ


2.「質より量」の約束がもしなかったら・・・

⇒「質の高いものを出せ(無駄にたくさん出すな)


3.「突飛さ歓迎」の約束がもしなかったら・・・

⇒「実現性の高いアイデアを出せ(突飛なものはやめろ)


4.「他の人に便乗」の約束がもしなかったら・・・

⇒「オリジナルなアイデアを出せ(出たアイデアをもじったアイデアはやめろ



こうなりました。

しかし、これはよく考えると日本の会議で発言するときに、暗黙のルールとして存在していることに似ている気がします。

(まとめて書き直すと)
逆モデルにおける発言ルール

U1.出したアイデアの悪い点は、すぐ批判せよ

U2.質の高いものを出せ(無駄にたくさん出すな)

U3.実現性の高いアイデアを出せ(突飛なものはやめろ)

U4.オリジナルなアイデアを出せ(出たアイデアをもじったアイデアはやめろ


来期の売上を伸ばす会議をするときに「じゃあ、ブレスト的にアイデアを発言をしましょう」といいますが、本当にブレスト的に発言をしてはいけない空気があります。どうなるか「太郎」と「課長」を舞台に上げて考えてみます。


会話1

太郎「会議の回数を減らして、お客さんを回る時間を増やす」

課長「なんだって?いったいどうやったら必要な会議を削れるんだ?」

太郎「うっ、それはわかりませんが・・・。」

日本の会議ではこのケースは非常に多いですね。提案の脆弱点を指摘してあげることが親切だ、と思っています。暗黙的に。


会話2

太郎「最近B社製品がいいんですよ。なので、お客さんの所にB社の製品も持っていく。それと、仕入れ先にB社の製品の営業をしてみる。新規のお客さんにB社製品で、DMをうってみる。」

課長「おい、忙しいのに、無駄な発言をするな。『B社の製品の営業展開」ってまとめて言えよ。」

太郎「はぁ。次はもっとまとめます・・・。」

日本の会議では、議事録がビジネス文書スマートさを要求されます。似たようなアイデアで刻んでいくような発言を、議長は言い換えてしまいます。そして、書記役はホワイトボードをできるだけ詰めて書こうと、表現を濃縮してかけよ、と暗黙のプレッシャーを受けています。


会話3

太郎「うちの社長に営業に同行してもらいましょう。お客さんの常務と昔、担当者同士だったっていうし。」

課長「おい、できそうにないことをいうな。もっと考えてしゃべれ」

太郎「すみません!」

日本の会議では、アイデアとしての斬新さが仮にあっても、それが実現しなそうなものだと、却下されるムードがあります。斬新かつ、実現性も抑えつつ、針の穴を突くようなシャープな提案が出されることを場が要求します。出しにくいですね。


会話4

一郎「顧客業界の技術交流会でうちの事例を発表しましょう」

太郎「あ、じゃあ、顧客企業の参加がおおい学会の展示コーナーに出展しましょう」

課長「おい、人のアイデアを取るなよ。もっと独自なアイデアを出せよ」

日本では、人のアイデアのオリジナリティーを尊重する、という紳士的な文化風土があります。なので、人のアイデアをもじったりすることは、人によっては好ましくないと感じることがあります。とられた、と思う人もいるでしょう。



ここまで展開してみたことを、また、まとめ直してみます。

逆モデルの会議での行動ガイドライン(逆モデルのガイドライン)
1.提案の脆弱点はすぐに指摘してあげよう
2.提案は必ず整理し質の高いものを出そう
3.提案は必ず実現性の高いものを出そう
4.提案はオリジナルなものを出そう


よく考えると学校教育では、こんなトーンの規範をすりこまれている気がします。局面によっては悪くないガイドラインでもあると思います。

どういう局面でこれが悪くないか、といえば、「実施」もしくは「実施寸前」のステージだと思います。

たとえば、戦いで戦略を実行しようとするときなどが適した例です。

今まさに実行せんとする戦略を目にしたとき、
・戦略のほころびがあれはすぐに指摘し、補強を図る
・実行する戦略の質は高くなければいけない
・実行する戦略は実現性の高いものでなければいけない
・実行する戦略は独創性が高くなければいけない(見抜かれないように)


つまり、「即実行、明日にも実行」という話し合いでは、この「逆モデルのガイドライン」は適切です。実行できて質が高くて、しかも、他の人が思いつかない独創性も高い。ほころびは見つけ次第直す。出陣の準備万端さを感じさせます。



この展開には、モデル化の容易なように、話しをシンプルにしています。実際には、もう少し複雑でしょう。しかし、「日本の会議はなぜブレストがブレストにならないのか」の本質のいったんはここにあるのかもしれません。




気づきメモ

では、この状態はなにがいけないのでしょうか。
そのスタイルの場合、
戦略を立てる時に
新しい仮説を持ってこないと
敵と同質化してしまい
矛盾のない戦略をつくれても
勝てはしません。

これまでにない
新しい選択肢を手に入れることが
最初に必要です。

しかし、この状態はそれができません。

魅力的な、これまでにない新しい
選択肢を手に入れる。
その時には、この状態でない
なにか別の状態がいります。

明日のブログではそこについて
具体モデルへのアナロジーで、
考えてみます。



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