定番のアイデアの本、といえば、あちこちで語っていますし、大体、創る系の人は知っている本ですが、そうじゃなく、この数年で、じっくり読んでいるけれど、あまり周囲が知らない本を、三冊紹介します。
一冊目、
Austin Kleon の『クリエイティブの授業』
オースティンクレオンは、面白いクリエイティブ作品の作り手で、新聞を塗りつぶしわずかに残す単語を使って詩を作ります。
彼の創作の中で、創造に悩める人にくれる力強いアドバイスをここから得ることが出来ます。授業、という書名ですが、かたっくるしさとは程遠い、クリエータ魂の本です。
僕はこれを、何年か前の誕生日、岐阜県の大垣に滞在していて、旅先で一人の誕生日をしんみり迎える、そんなときに、ふといつもは行かないリアルの本屋さんに立ち寄ってみたくなってこの本を手に取りました。時に人は、書棚に長く残る本に出会いますが、その年はこれでした。
二冊目、
『ひらめきスイッチ大全』
これは一人もしくは数人の共著、とはちがって、たぶん制作プロダクションのたくさんのスタッフが作っている、Mook的なあっさりさ×大量の切り口、形式の本です。いろんな発想の切り口を示し、その事例となるものを、文献からの引用し、提示してくれています。どれもわずか数分で読めます。
僕のiPod TouchのKindleにはこの本は、ちょっとずつページを消費しながら一年ぐらいあります。
目を閉じてもなかなか寝付けない晩に、これを開き、1つ読みます。「商品対象を大人と子どもで入れ替える」といった逸話が事例とともに語られています。あっさりと。このあっさりとした潔さが良くて、著者の解釈としての色づけは極めて上品。この静かなさざなみを頭に入れたら、今取り組んでいる商品企画に対してこのさざなみ(発想のヒント)を交わらせて、何が思い浮かぶかを10分ぐらいやりますと、実に良く眠れます。
(発想が湧き上がり興奮するほどの濃い味にWEB上のトピックは満ちていて”寝酒”に向いてないことはみな経験があると思いますが、これは、寝酒にちょうどいいんです。)
必死に発想ヒントを求めて読むよりも、そういう感じが似合う本です。気がつけば、一年近く、iPod touchの中にある本です。
三冊目、
『課題解決のための思考トレーニング』
これは”日経アソシエ(ASSOCIE)”のムックで、今月発売されました。
先にフェアに言っておきますと、43ページに自分の記事が出ています。私の記事部分は、以前、アソシエ紙面に掲載された記事と同じ紙面です。いつもだと、「メディアに掲載されまいた」報告記事を書いて終わりのところ、このムックは、現代の創る人にとっての発想のヒントがたくさんつまっていていい本でして、そこにクローズアップして言及してみたくなりました。
WEBにもいい記事は一杯ありますが、さすがアソシエのムック、どの記事も、いい仕事をしている人の創造のヒントがコンパクトにいろんな観点で取材されています。噺家の方の創作に10万歩歩く、そして、どういう道を歩くか3条件、なども、(私には)興味深く、またある方が、発想に煮詰まったら一度寝かせる、を実践しているくだりも創造の営みとして実に興味深く、拝読しました。
時々発行される、ビジネス雑誌のムックは、現代の創る人の見ていることやっていることをうまく切り取っているものが多いです。これはその中でも特に、どこも中身が濃くて、参考文献として、書棚に永く残したいと思うものでした。
タイトルは、課題解決のための思考トレーニング、とちょっと固いテイストのタイトルですが、中身は濃く、テンポ良い紙面です。
以上です。
アイデア発想のことばかりをやっている人でなければ、手にとって見ない文献が世には一杯あり、私はアイデアの仕事をする日々でそういうものを沢山読みます。定番の本は講義の最後でも紹介しますが、「参考文献のちょっと外」を紹介するならば、この辺、言及したいよなぁと、削っている情報の裾野を見つめながら思っているところを、紹介してみました。