今日はそのイノベーションの専有可能性(占有可能性)とはについて。

要約すると、以下のようにまとめられます。
『イノベーションの専有可能性』:
イノベーションを創造した事業者が、そのイノベーションからどれほど収益を上げられるか。ライバルの模倣をガードし、市場に安定迅速に提供するには、イノベーションの周辺の要素が強く影響してくる。
市場競争を勝ち抜くには、イノベーションを生み出した事業者は、『 イノベーションの専有可能性 』を決める4つのファクターのうち、1つもしくは複数を組み合わせて、自社の創造したイノベーションから、より多くの収益を上げることが必要となる。
ケースによっては、すべてのファクターが必ずしも構築・獲得できるとは限らない。どのファクターが有効に機能するかは、自社の資源や経営環境により様々である。
実際に、これまでの産業の歴史では、革新的な財やサービスを提供する事業が幾度も登場してきたが、彼らが勝利を収めた場合ばかりではない。フォロワーが勝利を収めたケースも多く見られる。
となります。以下、もう少し詳しく述べてみます。
イノベーションの専有可能性とは、イノベーションから実際どれだけ収益を上げられるか、という考え方です。
Grant.R.M『CONTEMPORARY STRATEGY ANALYSIS』Blackwellの第11章「Technology-based Industries and the Management of Innovation」では、The Profitability of Innovation(イノベーションの専有可能性)を決める4ファクターが提示されています。
この4つのファクターの要点をまとめると、以下のようになります。
▼Property Rights in Innovation
(知的財産権、パテント)
・薬では65%、パテントによってイノベーションの利益がプロテクトされ、成果を生み出せる。
ケミカルは30%。
機械、金属製品は10〜20%。
電子機器、装置、原始金属、オフィス機器、自動車、ゴム、織物は”10%以下。
パテントによるプロテクトが有効な分野とそうでない分野があるということです。
▼Complementary Resources
(補完資源、補完技術)
具体的には以下のものを指しています。
・競争力ある製造力
・安定的に顧客に提供できること
・サービス
・財務
・マーケティング
・コンプリーメンタリー テクノロジー(補完的技術)
・その他
コアテクノロジー以外のところで、実は利益の取り合いの勝負が決するということが、あるわけです。
▼Characteristics of the Technology
(技術の性質、性格)
暗黙的な知識(言葉とか数式よりも、そういうことで表せない重要な技術)ノウハウ、トレードシークレットなど暗黙知的要素が高いほど、比較的容易に、プロテクションすることが容易になる。
複雑性(ある技術があるときに、どれくらいの構成要素があって、その結びつき方の多様性)より複雑な技術であれば、一般的には模倣しにくくなる。
▼Lead Time(リードタイム)
イミテータが模倣して製品投入するまでの時間(リードタイムが長いと、キャッチアップするまでに非常に時間がかかる。)長いものほど、よりイノベータに有利になる。
となります。フォロアー(追従者)は、成功すればいずれ出てくる問題です。パテントは非常に重要だけれども、それ以外にも重要なものがある。ベンチャー企業を支援するにあたり、多面的に彼らのビジネスのエッセンスを考慮し適切な戦略構築を支援したいものですね。
■(追記)昨年の同時期、自分自多がベンチャープランを書いていて、ふと、その辺の視点で書いたものがあります。
ふと思う、「起業の自分」「コンサルティングする自分」 2005年10月30日の記事。
(ちなみに、このときに構想していたベンチャープランは、音co知心(おんこちしん)として、各賞を頂くことになったものです。)
あれからちょうど一年。この記事の内容を現場で語るような日々が来るとは。大続院で学ぶことは非常に知識に恵まれた環境だと実感。