今日は、旅仕事の旅程の途中で、ビジネスラウンジのある名古屋で仕事をしています。最近の話を少し書きます。
書斎でのアイデアツール開発時期には、〔ユーザ数=数百人〜数千人〕というものを作ると同時に、〔ユーザ数=1〕の道具を作ることも「開発の仕事」と位置付けて結構な精神的精力を注いでしています。
自分のためだけに、カリッカリにチューンしたツール、です。
切っ掛けとなったのは、あるワークショップに参加者として入った時です。ポストイットを書き散らして、大量発案をするフェーズで、ふと、困りました。
うまくアイデアを表現できたポストイットと、うまく出来なかったものとが、あるわけです。
そうするとグループの人たちによるポストイットの評価や集約をするときに、表現の品質が大きくきいてきます。
〔周囲のアイデア評価V〕=〔アイデアの質Q〕×〔アイデアの表現P〕
であり、
Pは、0〜1の間です。(たまに、Pが1を超えるものもあるにはありますが、例外として外して話を先に進めます。)
『“ポストイット記法“を作りたいな』という思い(≒アイデア)がもやもやっと、立ち上がってきました。
表現すること(ファクターP)にそれほど思考をさかず、アイデアの表現を1に近づけるような記法を作りたい、と。
まず、過去のポストイットで、アイデアがうまく表現されていたものを、記憶から引き出し、たくさん書き出してみました。
そして、多様さはあるものの、シンプルな3要素で、ポストイットを書くような記法を作れそうだと気が付きました。
私はそれを、ポストイット記法、と名付けてしばらく使い倒してみました。
そうすると、今度は、多様なテーマで、それに沿ってアイデアを描き出そうとすると、思いつかない要素があることに気が付くようになりました。3要素(H,F,Wと呼んでいます)を思いついているときの発想集中状態の自分を観察して、どういう思考の巡らせ(切り口、アプローチ)で、それを出しているかを知りました。
そういうてがかりを一枚の手のひらぐらいのプレートにまとめて〔ポストイット画板〕と名付けたものを作りました。そこに空白のポストイットを貼ると、書くべき項目をガイドしてくれて、それに従って思考のふわふわを切り出していく感じのものです。
そして、それらの3要素に対して、閃きの材料となるものを、発想手法の中から煮詰めて、作りました。それらは、発想手法の形態的には「発想トリガー法」に近いものです。
3つの要素、それぞれに作っていきました。その過程で長らく作ろうと思ってほおっておいたメソッドも形成することができました。(それは、出来ました、と一言で表現しましたが、3日間ぐらいかけています。VEとTRIZのあるエッセンスを融合して作りました。)
それらは、発想作業の中のかすかな閃きの出現を加速してくれるもの、として〔Inspiration engine〕と名付けました。
こうして、表裏をつかった手のひら大の〔アイデアワーク支援ツール〕が、出来ました。
発想仕事の猛烈な速度の思考処理の嵐の中で、きっと自分を助けてくれるだろうと思います。
商品開発をするときにともすると忘れがちなこと、【本当にそれを自分が欲しいと思えるか】、をこうして思い出しています。
商品開発時期に、〔ユーザ数=1〕の道具を作る。自分が究極のユーザで、それは嵐の混乱の中でも自分をブーストしてくれる本物ツールであるように、作る。自分だけが分かればいいので、余計な装飾も、単純化も不要。本質にまっすぐに作る。
そういう時間を深く過ごすことは、商品開発の刃を研いでいくことにもなります。「作ること」に深く深く潜っていく導入剤、としての効果があります。(石井の場合は、ですが。)
本気で使うつもりの商品を作る。
それを形骸化させないために、世界においてユーザ数=1、のものを、時々は本気で作ってみる。
それが大事だな、と備忘録として、ブログにしたためてみました。