世の中を見ていると、熟達の軌道を登り続けられる人と、水平飛行のつもりで徐々に落ちていく人がいます。
維持のつもりが、知らず知らずのうちに、安直な仕事スタイルに流れる。力というものは、磨くか錆びるかのどちらかだ、と心得なければなりません。
そんな話を書きます。
私は、自分の登壇(講演・講義・ファシリ)仕事に3つのステージがあると思っています。
- ステージ1
どこでも同じことを同じスタイルで話します。
この方法では、伝える言葉はだんだん手練れて行きます。話者が費やす準備時間は少なくて済むのですが、一人一人の栄養の吸収(学習)効率が悪く、参加者の時間損失はそこそこあります。
- ステージ2
個別に合わせた一品料理を作ります。
それには参加者のプロファイルや職場環境の情報が必要になります。取れないこともあるのですが、出来るかぎり、一次情報を取りに行くように努めています。
参加者の方の時間投資効率は高まります。作り手(石井)の時間は相当にかかります。事務局さんにも手間がかかります。
- ステージ3
大量に案件に対応していくと、世の中の個別案件の集合の中にパターンが見えてきます。同じような願いや挑戦をもとにした依頼であれば、推し量り内容を提案できることもあります。それがぴたりと当たっていればステージ3です。
事務局さんも話者も準備時間が短く、聞き手の皆さんも得るものが大きい、というケースです。
ただし、注意が必要です。慢心は見極めを鈍くさせ、行き過ぎればステージ1に突入します。
(たぶん、3つのステージは円形につながっています。)

年に50回ぐらい登壇(講演、講義、ワークショップ)をしていくとレベル3で行けるような感触の依頼も増えます。
しかし、自分がそれをできる段階にいるのか、はたまた慢心かは、本人は気づきにくいということも知っています。
そう自戒し、手間をかけることを厭わずに、ステージ2にとどまり続けようとしています。
(事務局さんにお手間をおかけてしまうことは心苦しいところです。石井の身勝手といわばいえます。)
道の初めに立った日のような心で、目に見えにくいものも真正面からとらえてゆく。
そういう仕事を、今日も、明日も、明後日も。