この秋冬を振り返ると、ふと思うのです。
完璧だと感じた仕事の遂行より、ずっと多くネジをまいてくれるのは、力不足や偶然の失態で苦さを味わう夜だ、と。
物語は、単話ハッピーエンドより、ピンチ展開で次号に続く方が、推進力があります。
それに似てるんでしょう。
苦さ(にがさ)をどうやっても楽しむことはできません。
ですが、生み出すための創造的知性が強く機能するのは僕の場合はにがさに悶える時なので、時々は苦さを味わい苦悶する夜を迎えなくては、と思うのです。
さらに大事なことに、手抜きが至らしめる失態は、ちっとも苦くない、ということ。
そう思えば、苦さに浴する時間も、悪くはないんだって、理性が慰めてくれます。
甘さに溺れず、苦さに腐らず。
そんなことを時々思います。