最終に近い時間帯の新幹線に乗っています。停車する駅では、最終便を終えたホームの電気が落とされています。かつて若いころに、鈍行しか乗れない切符でどこまでも旅をした時に見た、夜行列車の風景をふとよみがえってきます。
それはさておき、週末、アイデアソンのファシリを育てる講座の第十期を実施しました。
クリエイティブの教育をするNPO法人「iCON」が主催するものです。数年かけて実施してきて、100人以上が卒業してくれました。
ここから先は、やり方を発展的に再構築する時期です。
今回は、節目の十期が、通常の回とはかなり違ったリッチな内容になりました。
エクストラ・セッションズ
まず、DAY1は、グラフィックファシリテーションのタムラカイさんがオブザーバーとして遊びに来てくれました。私(講師)の話すことを即興でグラフィカルに書き留めていく、ということをしてくださいました。また、アイデアスケッチをブーストするためのオプショナル・ワークも実施してくださいました。
(その内容は、○○な線を書く、口・目・眉で100の表情を書く、棒人間からちょっと変えるだけで体を書く、というものです。)
このワークを実施した日のアイデアスケッチは、通常よりも「幾分」絵が多くなりました、しかし二日目のワークでは、顕著に違いが出ていました。多くのスケッチに絵が書かれるようになりました。このワークは、「習うと、一日で熟成して、翌日には効き」ます。たとえば、冒頭の導入ワークでこれをやることで、アイデアスケッチパートまでには沁みて反映される、という可能性もありそうです。
次に、DAY2は、フィンランドから大林あやさんがオブザーバーとして遊びに来てくれました。いつもの講座を一通り終えた後、大林さんの開発したカードセットや場を暖める手法を実践してくださいました。
(その内容は、いろくみ、とCx3ミニを組み合わせたコミュニケーション促進、記憶スケッチ、エアバンド、というものです。)
このワークは、二日間の終わりにしています。アイスブレイクをするべきタイミングではないので、エクストラセッション、ということでしたが、皆さん、プラスアルファの学びとして学び取っていたようです。
(エアバンド、というアイスブレイクは、フィンランドのエアギター世界選手権の絵面をほうふつとさせるもので、即興エア演奏の様子はなかなか楽しいものでした。記憶スケッチは、道具なしに、誰もがわいわい楽しいものでした。)
このエクストラセッションは、9期までは一切やったことがないものでした。今回はそれが2つもあり、今期の受講者はほんと得しましたね、と運営メンバーで話していました。(そして、これは今回のたまたま幸運な構成だっただけで、定例にはできないものですしね。)
改変にトライ
DAY2本編は、受講者が交代交代でファシリテータを実施する、という座組みです。
- 今期の受講者の皆さんは、少数精鋭で、各自、自分流にアレンジを大なり小なりしてきました。
- テーマ説明の所は、自分で情報を補完できるようにスライドをつくってありました。
- 一人発想技法は、テーマに最適なように技法を変えるといいですよ、という私の言葉に従いDAY1にやっていない技法が投入されました。
- スピードストーミングは8人実施でした。そこで昨日の10人実施バージョンの移動方法を更にアレンジして、うまくやりきる、という方法で進行され、うまくいきました。(少人数の場限定でうまくいくやり方ではありますが。)
- ハイライト法では、「まず見て回るだけ。」そのあとに「指標Aで☆をつける。指標Bで○をつける」という特殊なやり方を支持されました。
- (これは、どこまでやるとワークは破たんするかをテストする効果がありました。実行可能性の低い指示とはどういうものかを彼らは把握することができました。)
また、私自身もハイライト法の部分の大きな改良に取り組んでいまして、アレンジを試してみました。
- DAY1では、「魅力度で☆」をつけ、そのあとに「クラウドファンディングで成功しそうなアイデアに○シール」を貼る(二個まで)、ということをしました。その結果はほぼ一致する、というものでした。
- DAY2では、「指標A、指標Bは何らかの印」をつけ、「パブリックサービスロボとして、実現性が高いものにG」を書く、ということをしました。
- 上位の一部、2つの評価高得点が、かぶっていました。しかし、被らないで片方だけに高い得点を得ているものもよくありました。
- これらのことから、ハイライト法が評価しているものは、どういうものであるかを、うっすら透かしてみることができました。
私が、更に他の改良を考えているのは、「チームビルディング(ひいては、その前段のアイデアレビュー)」です。
- 星の多い少ないに関係なく、「これはいいものだ。」「これを俺はやりたい!(という強い主体性がある)」をチーム形成の核として提示でき、その情熱をプレゼンできるワーク設計もしたいと思います。
一人発想技法を、今回も変えて新しくしました。
- アイデアのチェックリスト(SCAMPER)を実施しました。他のワークで利活用しやすい用に。
今後
11期からは、どうしようかと、思案中です。
どんどん強力で実効的なプロセスにする、と、初見の学習者は、ファシリテーション難易度が上がります。
上がると実行可能性が下がります。
そうすると、一部の人しかできない「重たいメソッド」になってしまいます。
ドラスティックに変えず、実施しやすい従来型を実践したほうがいいのかもしれません。
改良版をするならば、今までの基礎コース卒業者に対するフォローアップ回として、ハイテクニック編とするのもいいかもしれません。
また、今回地方参加者が多く地方開催を希望する声が多くあることを再認識しました。年4回東京実施の現状から、将来的には、年2~3回は東京で。のこりは依頼があればその土地で開催、というのもいいでしょう。
タムラカイさんのグラフィックを見て、教材をもっとテキストブックとしてクオリティーを上げてみたいとも思います。(従来は、スライドのハンドアウトをお渡ししています。
今回は、石井の喉が腫れていて声が張れない、という事態に。(それが言葉の表出化、アイデアの生成にも影響をしていていつもよりパフォーマンス上げきれないでいる口惜しさがありました。今回は、それでも乗り切れましたが、抑えを作っておくことは大事だと痛感。
そこで、説明部分はビデオ動画を作っておいて、それでところどころ補い、のどを休めることでより言葉のクオリティーを上げていく、というのもアリかと思います。ファシリテーションをビデオ動画と人間のトークのハイブリッドで実施できないかと考える大きな契機となりました。
それは、可能性として、通信環境が十分でない二地点間での遠隔ファシリテーション、を考える上での検討材料ともなるでしょう。
(タムラカイさんのグラフィック全7枚の内、一枚を掲載しておきます)