アイデアソンのファシリテータが友人知人に沢山います。
彼らの活動を見聞きしていく中で、いくつかのパターンと時間変化があることに気が付きました。整理してみます。
(2016年現在の分け方です。時間がたつと、更に分化・発展しているでしょう。)
1)アイデアソン(パターンα)
- インプット
- アイデア醸成
- アイデア表出
- 良案抽出
- アイデア発展(ディテールやデザイン)
- 発表
- 目的:「創造的に話し合う共通体験の獲得」「創造的組織風土の涵養」「個々人の創造的資質の発露」「大量の初期段階のアイデアの獲得」
- 参加者属性:完全にオープンで地域の公的な立ち位置の場が主催だったり、企業主催でも社内外のだれでも参加できる座組みです。
- 創出したアイデアの扱い:社会の共有財、という位置づけです。
- 時期:企業や組織がアイデアソンへの取り組み始めの1~3年。
- アイデアの活用:アウトプット(アイデア群)が、小規模ですぐに実行できる「営み」であれば、それは使われますが、「投資の大きい開発」であれば、使われません。(それらは、一つ上の段階に行かせるための踏み台(着想材料)として役目を果たし終えます。※)
※その場合、次のステージからは、守秘プロジェクトとして開発できる体制にします。オープンtoクローズド型のイノベーションモデルです。
2)アイデアソン(パターンβ)
- インプット
- アイデア醸成
- アイデア表出
- 良案抽出
- 価値洗い出し(ユーザと問題を深く掘り下げ)
- アイデア発展(実現PIVOT、PPCO)
- 模用衆感(クイック・ヒアリング、ユーザテスト)
- 洞察(そして5を再び)
- アイデア改良
- 目的:「実際の開発ネタを作る」「クリエイティブ・エキスパートの育成」
- 参加者属性:社内の人材のみ。あるいは、守秘契約のあるプロジェクトに参画する人々。
- 創出したアイデアの扱い:企業やプロジェクトによる占有。
- 時期:企業や組織がアウトプットを事業や社会価値へ発展させはじめるころ。2〜5年。
- アイデアの活用:チームがアイデアを鍛えて練って、開発フェーズに進みます。
備考:人材の多様性が限定的になります。打開するには、守秘を結んだ外部人材をプロジェクト参画させます。
模用衆感とは: 模擬物を用いてもらい人々(衆)に感想をもらう作業。クイックヒアリング。本格版は、ユーザテスト。(石井造語)
3)アイデアソン(パターンγ)
- インプット
- アイデア醸成
- アイデア表出
- 良案抽出
- 価値洗い出し(ユーザと問題を深く掘り下げ)
- 素機即形(機能をシンプルに、ラフな形状での、模型)
- 模用衆感(ブラッシュアップツアー、エキスパートフィードバック)
- 洞察(ダウンロードと選択)
- プロト改良
- 目的:「実際にチームでごく短期間で開発するネタを作る」
- 参加者属性:一般に募集をかけ、スキル前提や構成バランスを踏まえ、事務局が選定・チームを指定された人々。
- 創出したアイデアの扱い:チーム内の共有材、あるいは、イベントごとの規約により様々。
- 時期:初めから(αと同様のγ1~4を実施し、それ以降の作業はハッカソンで吸収という形式も時にはありえますが)
- アイデアの活用:チームがごく短期間で開発し具現化します。その後、参加者による製造販売や、何らかの形で製造の可能な別のグループや企業に知財(おもに著作権として)の利用許諾をへて製造。※
- 備考:ごく短期間での開発なので、着想の中から、いかにシンプルな訴求効果を切り出し、自チームの保有技術で具現化するか、が勝負になります。集まる人材の幅広さが具現化能力に強く影響します。
※知財としては、公知性の観点で特許がほぼ取得できませんので、作る過程で得た評判や知名度、ネーミング、意匠など、を、譲渡や利用許諾の対象として扱います。
※ケースによっては参加者全員に守秘義務を書面で締結することで優秀案で起業しようとするチームの特許取得の可能性を残してあげようとする運営方法もあります。
素機即形とは: シンプルな機能を搭載した、即興での造形物。(石井造語)
(注)以上のパターンは、石井がオリジンに何らかの形でかかわっているものについて整理したものであり、これ以外も、世の中にはアイデアソンのプロセスがあります。それらを踏まえると、それほど単純なパターン化はできず「今は、いろんなものがありますね」という無難さに回帰してしまうので、避けました。
この整理には、友人の矢吹さんから示唆を多くもらっています。ありがとうございます。