ブレスト村の人たちは、みんなでがんばって、ブレストをしました。その結果、ブレストが終わるころには、木に沢山のアイデア林檎が生っていました。ざっと100個はありそう。

村の人たちは、輝きのある、おもしろそうな、アイデア林檎に☆のシールを貼ることにしました。ざっと、20個ほどのアイデア林檎に、☆シールが張られました。
よし収穫しよう。ということで箱を持ってきた村人たちは、手分けして、アイデア林檎を摘み取り始めました。

似たアイデア林檎同士が同じ箱に入るように工夫しました。そして、そのハコに、そのアイデア林檎が一目で分かるようなマークを書きました。
村人たちは、摘み取ったアイデア林檎を並べて、すべてのアイデア林檎の良いところ、面白いところ、魅力を感じたところをどんどん上げていきます。

それを見ていた隣村から遊びにきていた人は不思議に思いました。そしてたずねました。「どうしてアイデア林檎を褒めるの?ははぁ、今は、休んでいるの?」村人たちは答えました。「仕事中だよ。それも重要な仕事をしているところなんだ。この作業は本当においしいアイデア林檎を見抜くために、重要なんだよ。」と村人たちはこたえました。
褒め終わると、村人たちは、今度は、ものさしについて、話し始めました。隣村の人は、また不思議に思ってききました。「どのアイデア林檎が良いのかを選ばずに、ものさしをいくつも出してどうするの?重さならバネばかり一つで十分じゃないか。」村人は答えました。「アイデア林檎を評価するにはいろんなものさしがありえるんだよ。」「評価するのに適切とおもわれるものさしをどんどん出していっているんだよ。」
村人たちは、いろんなものさしを考えました。林檎の太さを測る巻尺。甘さをはかるメータ。林檎の縦の長さを計るノギス(ものをはさんで大きさをはかる道具)。林檎の重さをはかるバネばかり。林檎の色つやをはかる色シート。それから、分度器(角度を測る道具)、なんていうのも出ていました。
村人たちは話し合います。そして、評価に最も適したものさしを3つ選びました。
村人たちは、ようやくアイデア林檎を評価し始めました。一つ目のものさしで、アイデア林檎を計ります。そのものさしでよい値を示すものはAとしるします。悪い値のものはC。良くも悪くもないものはBです。
二つ目三つ目のものさしでも同様に図っていきます。そうして、すべてのアイデア林檎を3つの物差しで計った結果を☆の数で表していきます。A、B、Cはそれぞれ、☆3つ、2つ、1つです。その結果、一番目のアイデア林檎が一番多く☆を獲得していました。
この村には4つ約束が掲示されています。その一つ『批判禁止』に布がかぶせられました。そして村人たちは、選んだアイデア林檎を囲んで、話し始めました。「このアイデア林檎の心配なところをみんなで上げてみよう」するとこれまでひたすら批判しなかった村人たちは、深刻そうな表情になって、次々と心配を上げていきます。「これは壊れやすいかもしれない」「だれかが手に取ったときに怪我するかもしれない」そんな心配が次々出されます。
隣村の人は、その様子を見ていて思いました。「ブレスト村の人たちは、批判しないと聞いていたが、それは間違いだった。彼らは批判するべきときを知っているのだ。」と。
そして、その批判ブレストが終わると、村人たちは、また、『批判禁止』にかけた布を外しました。そして、どの心配事が一番重大だろうかと話し合います。もっとも重要なものを選び出しました。そしてそれをテーブルの上に乗せて、みんなでその解決方法のアイデアを出し始めました。山のように対策アイデアがでました。そして二番目に重大な懸念事項を選びだし、同じく解決アイデアをブレストしました。そして三番目も。そこで村人たちは解決策のブレストをやめました。
隣村の人が聞きます。「のこりの心配事はいいのかい?」。村人は答えます「残りの心配事の対策は、ほとんどの場合、上3つの対策リストに含まれているんだ。」と。
村人たちは、最終的にアイデア林檎をきれいに整え、悪くなりそうな部分には十分なクッション材(対策アイデア)を詰め込んで、そのアイデア林檎のすばらしい部分をみがいて、きれいな箱に入れました。
そのアイデア林檎はもう、ただの思い付きアイデアではありません。アイデアの深みと幅があり、潜在的な可能性もとても高い。そして十分にリスクに対する対策が考慮された、スターアイデアです。村人たちは、100のアイデア林檎から1つのスターアイデアができ、満足そうでした。
ブレスト村は決してどこかにあるわけじゃありません。発散と収束の根底ルールをきちんと理解し、創造性の特性、とくにチームで行う創造作業における特性とうまく付き合える普通の人たちです。ほとんどの人には創造性のよい能力がある。それを引き出す何かが必要なんです。その一つのヒントに、この絵本がなればいいなとおもいます。
(参考にした本:「創造的問題解決−なぜ問題が解決できないのか」)