アイデアソンは、場に集まった人々の創造的知性を引き出して、アイデアの原石をたくさん生み出す活動です。
近年、企業のイノベーション活動をめぐる人々や公的機関と市民の発展的な取り組み等の場面で、アイデアソン、を行うことが増えました。
そうした活動のフロントランナーたちは互いに知見を共有しあい、いろんな運営上のコツや急所の回避方法、場の設計の要諦の見定め方などをもっていました。それらの多くは口伝であり、皆が広くアクセスできる形式知としては乏しいものでした。「そういう広範なノウハウを読み物として学べる書籍はありませんか?」ときかれると、なかなか、一冊の文献をもって回答する、ということは難しい状況でした。
そんな場面で、紹介するのにピッタリの本が登場しました。
『アイデアソン! アイデアを実現する最強の方法』
須藤順(すとうじゅん)、原亮(はらりょう)
2016年9月30日
徳間書店
ここで、著者の原さんについて。
原亮さんとは古い付き合いです。
10年前、私がNEDOフェローだった時代に駐在したベンチャー企業に、彼も別の立場で在籍していました。(そういう、色んな立場の人がいつもいる”場”みたいなある種のHUBみたいなベンチャーだったんです。)
その後、仙台市民として、共に311の復興活動をしてきた、いわば戦友のような友人です。
国内の大企業さんのイノベーション部門を、渡り鳥のようにいく日々の私から見て、この数年の日本の中のアイデアソンのリーディングは、矢吹さん達(ハックキャンプ)と原さん達(エイチタス)のツートップだなぁと、感じていました。(彼らと話すと、ベストプラクティスや失敗する方法を共有することができます。大量にそれを経験した人だけが知る水準で、知見を持っています。)
本題に戻ります。
原さんが、そうした活動から出てきた知見を書籍にされました。
いま、このブログを書いているのは、旅仕事で滞在している大田区のホテルなのですが、原さんのご実家が近いこともあり、本を贈呈しに来てくださいました。
本を挟んで向かい合い「ああ〜、この辺なんかは、企業内の担当者さんが良く困るところなんですよね〜。」とか「座組みや活動の意義が良く分かり、組織的に活動を推進するための材料となる部分も詳しいですね」とか「あっ、こんなワークショップもやられていたんですか(各社の事例が、後半にたくさん掲載されています)」なんて、会話していました。
原さんが、若いころに勤めていたのは、ベネッセさんであり、表現することにもプロ・スキルがあります。当時、受験の参考書の制作に携わっていたそうで、短く、濃く、読みやすい表現で文章を紡ぎだされます。
この本は、企業内でアイデアソンの担当になったら読む本、いわば、カテゴリーの「入口の書」みたいなものとして、今後広く読まれていくと思います。
(追記)
ここまでは、一般の方(このブログを読んでくださっている奇特な皆さん)にむけての文章でした。
ここから下は、震災復興の支援活動日々を共に進んだ戦友・原さん一人へのメッセージをつづります。
「多くの人の創造的挑戦にとって追い風となる、読みやすい内容、やってみたくなるムード醸成、上司や組織の説得にも使える文献感、など、日本組織から生み出すイノベーションに必要な上昇気流を生む素地がこの一冊にあると思います。原さんがこの時代にいなければ、無かったはずの可能性をこれからも、もっともっと生み出してください。」