
ここまでの作業は、ターゲットユーザを描き出し、コンセプトが固まり、ボードのスタイルが固まり、さあ、プロトモデルをつくろう、という段階でした。
プロトモデルを創るための苦しみは結構大きい。これは、普段コーディネータをしている自分には分からない世界でした。文字だけの概念世界を、「文字」と「絵」と「立体物」の世界にしていく。選択肢はさまざまであり、明確にするということは、何かを選択し、なにかを捨てる、そういうこと。作り手は思いがあるから、なかなか捨てることができない。
プロトタイプver1は、必要なことがすべて盛り込まれたものになりました。自分でその絵を書いてみて、「これでは何一つ伝わらない。絞ろう。」と理解しました。そこで4つの要素のうち、最も知ってもらいたい2つに話を絞ろうとしました。1つに絞ると意味を成さないとおもい2つに。
プロトタイプver2は、2つの要素を、細かいステップに分けて書き出しました。概念を絵にしたものをつけました。作り手の私としては、「いいものができたぞ。」「内容が十分に絞られていて、それでいて、体験してもらいたいすべてが入っているぞ。」と納得のでき。
それを打ち合わせに持参して、内容の説明をしました。外部機関の開発パートナーは端的にアドバイスをしてくれました。「そのゲームをするには、石井さんが必要です。」「つまり。その構造は、現実問題を課題できるレベルの内容が入っています。それのプレイをするチームは石井さんと同じレベルのノウハウが必要なんですよ。」
なるほど。と思いました。プロトタイプのボードを見直してみると、絞った2つの要素ではあるけれど、必要な全ステップが圧縮されてはいっています。細かいことは書きませんので、口頭で付け足しています。一般に知られていないノウハウは例示をまじえながら説明する必要がありました。
これらをすべて文字に落として説明文にしたらすごく理解に時間のかかるものになります。そしてそれは、プロジェクト開始時にきめた「ターゲットユーザ」と「商品コンセプト」に照らし合わせてみるととても不適切。そこまでのことを分かっていながらも、作り手の思いは、盛り込ませすぎる。そういうことに気がつきました。
最終的には、ゼロのお皿の上に、最低限のものだけをのせて、ユーザが手軽に楽しめるようなものにしようと。その発想、実際に自分が作る側になるとできないものですね。
コンサルタントという職業の人がいます。私もMOTコンサルタントとして仕事をする時があります。彼らの質問、そんなにすごいことをしているか、といえば、珠玉の一言、をいつもはっしているわけでもありません。
多分、コンサルティングを受けている人は、いわれたことが頭のなかではもう分かっている。そして、別のシーンで自分が第三者であればそのことを指摘することもできる。ただ、進むことに注力している主体的事業に、自分を客観的視点で見直すことは、難しい。
これは同じ人でもできるときもあればできないときもあります。今回の私のように、初めて取り組む時や、その創造過程に大変な集中が必要でそれだけに特化した状態になる時があります。そのときには、コンサルタント(相談者)が必要なわけです。
そう考えると、未来の自分への質問を、頭から出して紙やPCに入れておくことはとても意味のあることだと思います。創造作業中に、効果的な自己質問はなかなかできませんから。それがかなわないときは、コンサルタントを利用することが有効でしょう。
ちなみに余談ですが、オズボーンのチェックリスト(詳細版、49個)をカード上に印刷して、シャッフルして、発想ゲームのときに使ってみました。カードに「○○できないか」とだけシンプルに書かれたカードを手にとってみる。そんな質問知ってるよ、と思いつつも、そのシンプルなカードを眺めていると「そういえば、こういうやり方って、ありえるな」ということが浮かんできたりします。
知っていることと、効果的に問うてくれることは、ちょっと違います。そういうことを、紙でさえもできるわけです。(ただし、事前に良く練られた効果的な問いである必要はあります。)
■ちなみに、
コンサルタントは、教えてばかり、はだめです。気づかせるのです。多くの場合、人間は、自分の着想したものに大きな価値を感じる傾向があります。なので、本人の頭の中にある材料がうまくつながって、その答えとなるものを「思いついた」状態にすることが一番よい方法です。
もちろん本人がその分野の必要な知識をもっていないとか、複数のロジカルステップの先に、その着想が存在しえるならば、ある程度、教える作業も必要ですが、このときは、効果的な情報提供という位置づけであるべきでしょう。その情報提供をつかうもつかわぬも、本人の選択に任せる。
必要性の感じていない情報をつめこんでたどり着いた地点の着想に、本人がさほど価値を感じないならば、その着想は生かされることがありません。いずれその着想に異なる形で出会うまでは、記憶のそこに、お蔵入りです。(親の意見と冷酒は・・・、です。)
コンサルティングをするときに、何をすべきか、ということも、今回のプロジェクトで学んでいるような気がします。
それらのことを整理して、私見を以下のようにまとめて見ました。

意識と情報、の2軸でわけると、コンサルタントを使うのには、2つの場合がありそうです。相手に必要な問いのできること、それから、必要な領域の豊富な知識があること。
ある優秀なコンサルタントの先生はいいました。「私のところに相談にきてコンサルをお願いするする企業さんのなかには、全く知らん分野のものもある。その分野のこと、知りませんよ、といっても相手は熱心にお願いする。案の定うけてもその分野のことは、わからない。でもね、お客さんは満足するんですよ。ふふふ。」この言葉、私はすこしだけ理解できたのでしょうかね。