アイデアプラントは、「書く・抽出する・発展させる」の3ステップを促す、あたらしいアイデアスケッチ・カードを発売しました。(少しブログへの掲載が遅れましたが、5月17日に、上市しました)

まず、アイデアプラント代表 兼 開発者の私の言葉は、長く、くどくなりますので、製品特設サイトと、アイデアプラント公式サイトの方を、ご覧いただくと、シンプルに全体が分かりますので、ぜひご覧ください。
・・・という道具です。
ここからは、いつもの如く、作り手(私)の生の言葉を無編集で載せてみます。
==【多くのアイデアワークを見ていて、気づくこと】==
企業内での創造研修や、大企業内のアイデア創出ワークショップ、オープンなアイデアソンなどを私は年間で50件ぐらい行います。その中では、絶対に「アイデアをかく」というタイミングがあります。書き方は、ケースバイケースです。
大量観て分かるのは「A4の白紙」や「A4の印刷されたフォームを有する紙」を使うか、「ポストイット」を使うか、「大判の紙、模造紙」を使うか、の3択であり、参加者はいつもおなじみのそのマテリアルであることに飽きる、という点がみられました。
また、素描されたアイデアには大抵は、発展余地(いうなれば、改良余地)が残されています。それを改良していくときに、A4の紙に描かれたものを、別のA4の紙へ発展させていく、という慣れた人にはどうってことのない作業が、アイデアワークの初歩段階にいる人にとってはとてもやりにくいという点も見られました。
熟達した人ならば、アイデアに欠点があれば、そのアイデアの輝き・本質、だけを見抜いて、それを抽出して、新しい具象(フォルムや具体的な仕組み)を付与しなおすことが出来ます。それが入門者にはとても難しいのです。熟達者は、その所作を説明できない。もどかしい。といった具合です。
そこで「先生、これって、どう発展させればいいでしょう」と聞かれることが本当に多いんです。(ちなみに、ファシリテータさんと呼ばれることは滅多になく、参加者は大抵登壇する人を、せんせー、と呼びます。どうでもいい話ですが。)
さて、そこでいうのは「そのアイデアの本質は何でしょう?そのアイデアの核となるものは何でしょう?それをまずは見抜いて、次にそれは最低限維持して別のアイデアへ再発展してみてください。懸念点がうまく回避できるように。」ということをアドバイスします。
アイデアPivotという営み。
これは、アイデアワークを頻繁にする人には、自然と起こっている思考展開であり説明もしにくいのですが、出来るようになった人とできない人の差は大きい、そんなポイントがあります。
==【望まれたもの】==
理想的には、ブレストAIみたいのがあって、アイデアをぶつけたら、たちどころに、そのアイデアのコア(核)を見抜いて、切り出して小さなラベルに印字してくれる、なんていうのが最高です。
でも、それはまだまだ望むべくもない。もしかしたら、ずっと無理かもしれない。誕生してもコストが高い、準備が面倒、というものかもしれません。
そこで、不慣れなメンバーでも、いつでも「アイデアを出したら、アイデアのコアも抽出する」という所作をガイドする「特別なアイデアスケッチ・シート」を作ろう、と思いました。
そのシートは、シンプルに、アイデアを素描するときは、ただ素描ができるべきで、描きあがったら次の思考作業として「このアイデアの核は何だろう」と考えることが促される「枠、あるいは、ガイド」が後から出現する、そういうものがいい、と。
折りたたんだ紙だったり、紙面の印刷によるガイドも可能性としてはあり得るし、後から書き込む場所を増設するような形状もあり得るでしょう。
==【試行錯誤を、例によって、膨大に】==
そういう理想状態を目指して、大量の試作品を作って、自分が被験者になって使ってみる、ということを繰り返していくうちに、2つの形状だけで無限にPivotしていける形に突き当たりました。
一つは六角形です。大判のポストイットよりもさらに2回りぐらい広い面積を有し、さりとて、A4サイズほど大きくはない面積にすることで、フルにしっかりしたアイデアをかくことまでは要求しないまでも、ある程度のアイデアを描くことが出来ます。形状は、アイデアスケッチをたくさん卓上に置く、という個人作業・共同作業をするために、自己相似形かつ横長にならない(円に近い)形状として、六角形、になりました。
もう一つは、その六角形の一遍の長さにちょうど合うような直径を持った「円」です。それは、アイデアスケッチを描く、という作業をあらかたして、アイデアを共有して、めぼしいアイデアが見つかった後から、使い始めます。
そのベストアイデア、それについてもきっとまだまだPivotして派生案をたくさん作れる余地があります。そのスケッチに対して、「このアイデアの核、アイデアの本質は何だろう?」と問いかけてみます。そして浮かんできたことを、間違っててもいいので、この「円」の形の紙に書きます。そして、それを、六角の一辺に差し込みます。もっと、考えてまた別の角度から、アイデアの本質らしきものが浮かべばそれも書いて、また別の辺に差し込みます。
一つのアイデアに対して、アイデアの核というのは、必ず1つ以上あります。多いものだと、実は2つ、3つ入っていることもあります。掘り出したダイア鉱石の塊が実はダイヤ3つがくっついている状態、みたいなイメージです。
なので、アイデアの核は、視点を変えたり、切り出す人を変えたりして複数切出せる、と考えてトライしてみます。
そうして、複数の核を切り出していく。
その具体的な形がこれです。

で、そうすると、今度は、具象、という囚われを超えて、「その核を元に新しいアイデアを結像してみよう」ということをやるわけです。
アイデアの核、として切り出したものは、考えようによっては、いろんな具象になりえます。
その時、アイデアの核がより活きてくるように、アイデアを素描したりもできます。
また、元のアイデアが持っていた欠点をうまく回避するように、新しいアイデアを素描することもできます。
そうして、アイデアをPivot(ズラス)という行為が、捗るわけです。
その新しいアイデアも、次の別の六角形に素描して、このCoreの差し込みに重ねるように指せば、
六角形と六角形が、隣接するようにつなげることが出来ます。
そうして、Coreを書き込むのにちょうどいい大きさ、アイデアの素描を短時間で次々するのにちょうどいい大きさ、書いたもの・描いたものを、要素として際立たせるためのふちどりの濃さ・太さも、多くのペンやシャーペンで試してみて、割り出していきました。
==【そして、出来たもの】==
それが、Roku + Core という「六角形の紙、6つのパンチ穴付き」と「円形の紙、2つの差し込み部つき」という、シートセットです。
枚数も一度のチームブレストで十分なアイデアスケッチ量を割り出し、50枚としました。(だいたい、一度のブレストで普通のチームが書き出し、アイデアPivotも行う場合、アイデアスケッチの総枚数は30、40枚ぐらいなんです。ただ、すごく発想の捗るチーム、アイデアワークになれている会社だと、100弱ぐらい、というケースもあります。)
上記のような道具である、ということの説明を、とことん削ぎ、「わかっている人にはうるさくない分量」のマニュアル1枚としてつけています。
全員が、アイデアPivotについての所作を全くもっていない、という集団の場合には、この道具のユーザになるのは少し難しいかもしれません。でも、リーダが一人ブレストするうえで、この所作を繰り返していくうちに、勘所はきっとわかって自分の中ですいすいと出来るようになると、チームをリードできるようになるでしょう。そうなってくると、メンバーに「A4白紙」や「ポストイット」で、あれこれ所作を説明して描き方の説明をするより「六角形には、アイデアスケッチ。丸には、そのアイデアの核を書く」という端的なアドバイスで、チームのアイデアPivotを導くことが出来るでしょう。
==【遊び的に、アイデアを回遊させていく使い方】==
==【遊び的に、アイデアを回遊させていく使い方】==
元のアイデアから、Coreを出して、新しいアイデアスケッチを描き出したら、そのアイデアの核を更に書き出し、そこからさらに新しいアイデアへ、と広げてみることも、自然な流れとしてやれます。
本来、アイデアが次々ジャンプしていって、面白いところに辿り着く、のが、多様な人がいる場でやるブレストの醍醐味であり、アイデアはどんどん回遊して形を変えていくものです。
それに近い所作を、「アイデア素描」と「核だし」でどこまでも、視角的にやることが出来ます。
==【発想する仕事が終わったら、30秒でストックしよう】==
ブレストや企画会議を、30分、1時間、長ければ半日、なんてやることもあるでしょう。終わった後、ポストイットやセロテープで繋げられたA4の紙が大量に残ってどうしよう、ということがあります。
そこも、クリエータの生産性を奪うところで、削りたいところです。
このRokuは、6つのパンチ穴は、キングファイルのパンチ穴と、規格をそろえてデザインしていますので、どの辺(どの向き)でも閉じることが出来ます。
連結部は差し込んでいるだけですので、引っ張ればぷるっと取れます。
ですのであらかたブレストが終わって、ストックしておけばいいや、となったら、連結部としてのCoreを外し、後は、そろえてキングファイルに入れておけば、OKです。50枚全部使い切ったとしても、手分けして作業すれば30秒で終わります。
なお、RokuにCoreを2個までは差し込んだまま、キングファイルにさすことが出来ます。ですので、「このRokuにはこのCoreをつけたままにしておきたい」という場合には、そのままつけて、ファイルできます。
ブレスト後に通常は、写真を撮って机一杯に広がったアイデアを残しますが、たまに、アイデアの一つ一つを参照したい時があります。その時まで、そのキングファイルを、棚にほおりこんでおけばOKです。
また、スキャンして残したい場合も、スキャンスナップに次々送り込めば、Okです。Coreを一つつけたままでも上手くやれば流し込めます。
== == ==
以上が、恒例の「開発者語る」でした。
実際に、企業さんで実践でブレストに使ってもらうと、道具の自由度の高さから、色んな使われ方をされます。
例えばこれは、色んな部署の人が集まって、新事業アイデアをチームでブレストしている場面です。

アイデアスケッチを各人が書いて、まずは共有・評価しているシーンです。
大きさとしては、ちょうど手のひらを目いっぱい広げたようなサイズの六角形で、多すぎず・少なすぎず、という感じの情報量が書かれています。
並べる時にも、六角形、というのは、横並びに置いてみたり、ジグザグにおいても見たりと、微妙な位置関係を自然と作りやすいようです。(これは、Rokuに限らず、六角形の紙がもつ特性ですが。)
<<最後に>>
道具というのは、人の目的と行動を補助するものであり、道具に振り回されて手間取る、なんてのは、もっともつまらないことだと思います。もちろん、習熟して初めて機能が出し切れる道具、というものあり、それはそれで素敵なんですが。ただ、アイデアワークという、繊細で忙しい思考作業をしている中において、アイデアの道具、というのは、とことんシンプルであらねばならない、と私は考えるのです。
ホワイトボードやボードマーカーも、アイデアワークの大事な道具です。それらはとてもシンプルです。
使おう、と思ってから、使い終わるまでに、ほとんど気にも止まらないぐらいの、空気みたいなもの、が理想だと思うんです。
使おう、と思ってから、使い終わるまでに、ほとんど気にも止まらないぐらいの、空気みたいなもの、が理想だと思うんです。
その意味では、このアイデワーク・ステーショナリー・シリーズ(ねこ、よも、ろく、という3製品)は、人が見た時にとてもシンプルに見えるように、仕上げています。(その気になれば、発想ガイドをいっぱい印刷して盛り込むことだって、出来はするのですが、そんなわけで、していません。)
ご興味のある方がいらしたら、ぜひ一度試してみてください。
これがなくても、慣れてくれば同等のことはできるはずで、その最初の一回を乗り越える補助になれれば、幸甚です。
製品が売れて適切な収益が出る。
それが次の製品開発の原資になります。
ですが、その辺は、意識としては二番目です。
アイデアプラントの理念は、創造的な活動をする人や組織が次々と生まれてくる社会を作りたい、です。私が全国でお話しして、一緒にワークショップをするといっても一生涯でできる回数はたかがしれています。30年は約一万日、ですが、どんなに樺ってもそのぐらいの回数しかできません。
でも、製品という形であれば、僕がどこにいようも、アイデアの補助を提供できます。
アイデアプラントの製品開発というのは、いつもニッチな市場、クリエイティブ・リーダという極めて人数の少ない人たちに向けて作っていますので、製品単価はどうしても高いのですが、真意としてはそんな意図で作り続けています。
今もどこかで、創造的な取り組みをする人たちの、ほんのささやかな助けになれていれば、幸甚です。
石井力重