台湾の公的研究所の中で、アイデア・ワークショップを行いました。
場所は、台北から新幹線で南に45分ほど行った新竹にある大きな研究機関「ITRI」(※1)です。
広大な敷地の中は、さながらセキュリティーエリアの中の学園都市。憩いの庭もあります。
そこのデザイン・チーム(※2)と数日間、一緒に仕事をしていました。(※3)
台北での講演の翌日、台北の街を案内をしてもらって、そのまま、ワークショップの打ち合わせ。そして新竹のITRIに向かい、研究所のゲストハウスに宿泊。
翌日も、ITRIのオフィスで、最終打ち合わせ。
今回のチームのみんなが敷地内に住んでいるので、基本的に毎日、夕飯も4人でとっていました。仕事のうちあわせは綿密に詰めますが、食事の時には、旅人には入れないお店にもつれていってもらい、台湾のことをいろいろ教えてもらいました。
そして最終日。ITRIの研究者20〜30名と、アイデアワークショップを行いました。
技術シーズから市場ニーズを大量に発想していくワークショップです。10時から17時までの7時間。
7~8人のグループが3つ。それぞれに異なる題材を持ったグループです。
シーズをニーズに変換していく発想ワークをしていきます。
後半になると、アイデアスケッチを描いたり、と、日本で石井が行っているいつものワークショップの流れになっていきます。
石井が日本語でしゃべり、通訳のテイさん(写真の左端の女性)が「逐次翻訳」で、二人でファシリテーションをしていきます。
(石井が喋り、次にテイさんがそれを中国語でしゃべる、というやり方です。)
(石井が喋り、次にテイさんがそれを中国語でしゃべる、というやり方です。)
テイさんはその3日前の台北での講演でも担当してくれた方で内容的には大幅に共通するのでかなり良く伝えてくれていました。
(なお、台北での講演の時は「同時翻訳」形式でした。同時翻訳、逐次翻訳、の2つをし、気づいた学びがたくさんあります。これはまた紙面を変えてシェアします。)
技術シーズには、守秘的要素が多いので、内容の映るワーク中の写真はあまりは挙げられませんが、雰囲気が映っている写真を紹介します。
タイムラインは、次のようになりました。(最終状態のホワイトボードを動画でとりました)
最終的には、時間ぴったりに終わっているのですが、7時間の中で、やりながら大幅にプロセスの変更をしゆき、時間を細かく調整をしつつ、進行しました。(遅れる幅を可視化していると、予想外の遅延でもファシリの軌道修正がしやすいんです。)
綿密な準備期間やデザインチームによるテーブル・ファシリテーターの支援もあり、無事、ワークショップは予定通り終えられました。
ただ、次に生かしたい改良可能なことも多く見いだしました。
それは、彼らや、また次に依頼をもらうどこかの外国でのワークで生かしてゆきたいと思います。
追記:
アイデアプラントにとって、海外ワークショップは、これで二度目です。韓国のテグで行った時には、即興で行った1~2時間の短いものであり、今回のような丸一日の本格版としては、海外は初めてでした。
そのため、講演とWSの下準備には膨大な時間をかけた四カ月間でした。
6月16日、日本国内での旅仕事の際に、東京駅近くで開かれていた「台湾エクセレンス」という展示を見に行ったまさにその日、偶然にもITRIのJさんから、講演会の打診をもらったのがすべての始まりでした。
そこから、何通ものメールのやり取り、フェイスタイムでの会話、そして、現地台湾での打ち合わせが始まりました。
3度の台湾渡航は、以下の期間です。
◎7月8日〜7月15日(第一回打ち合わせ)
◎10月4日〜10月11日(第二回打ち合わせ)
◎10月26日〜10月31日(講演、WS準備、WS)
◎10月4日〜10月11日(第二回打ち合わせ)
◎10月26日〜10月31日(講演、WS準備、WS)
合計で、22日19泊。
私にとって、一年間の滞在日数が最も多い外国となりました。
国内の仕事なら、こんな贅沢な時間のかけ方はできませんし、内容的にも相手に負担がないように1度か2度の打ち合わせでファイナルまで行きます。
が、今回は、外国の担当者さんと、日本語でのやりとりであり、かつ、大規模な講演と7時間ワークショップという仕事のボリューム、そして何より、石井自身にとって初の海外講演となることもあり、いろんな「不確実なファクター」がありました。
なので、この依頼を引き受ける、と決めてからは、もらう報酬のすべてを渡航経費に使ってもいいから、最高水準の仕事をしよう、ときめて、走ってきた4か月でした。
終わった日の日記には「まるで創業期のような潤沢な時間のかけ方をした数カ月だった」と記されています。まさにそうだと思います。創業期に仕事はぽつぽつとしかなく、コンテンツをじっくり練り上げるような時間をたくさん過ごした日々がありまして、いつかそういうことができなくなる時期に懐かしく思い出すだろう、と思ったのを覚えていますが、あの日々を、今の多忙な仕事環境下で行ったので、この数カ月は、自分の中では、えらい騒ぎだったわけです。
それでも、国内企業さんの創造支援や創造研修の仕事も丁寧に一つ一つ時間をかけて行い、新製品のリリースも学会発表もして、大学の先生(早稲田と東北工大)もして、という夏〜秋でした。
が、今回は、外国の担当者さんと、日本語でのやりとりであり、かつ、大規模な講演と7時間ワークショップという仕事のボリューム、そして何より、石井自身にとって初の海外講演となることもあり、いろんな「不確実なファクター」がありました。
なので、この依頼を引き受ける、と決めてからは、もらう報酬のすべてを渡航経費に使ってもいいから、最高水準の仕事をしよう、ときめて、走ってきた4か月でした。
終わった日の日記には「まるで創業期のような潤沢な時間のかけ方をした数カ月だった」と記されています。まさにそうだと思います。創業期に仕事はぽつぽつとしかなく、コンテンツをじっくり練り上げるような時間をたくさん過ごした日々がありまして、いつかそういうことができなくなる時期に懐かしく思い出すだろう、と思ったのを覚えていますが、あの日々を、今の多忙な仕事環境下で行ったので、この数カ月は、自分の中では、えらい騒ぎだったわけです。
それでも、国内企業さんの創造支援や創造研修の仕事も丁寧に一つ一つ時間をかけて行い、新製品のリリースも学会発表もして、大学の先生(早稲田と東北工大)もして、という夏〜秋でした。
(もっとも、台湾渡航日数の全部が、この仕事のための打ち合わせというわけではなく、行ったからには”感性の仕入れ”をしてこよう、ということで、いろんな台湾の街を見て回りもしました。基隆、台北の山、十分のあたりの猫村、台北、桃園、新竹、高雄、台湾最南端の海辺の墾丁、と見て回りました。バイクも2度借りて、気ままに小さい旅をしました。)
多分、次に、講演かワークショップの依頼が来た時には、それがどの国からであれ、今回よりは大幅に短期間で準備を行えるでしょう、私の中に経験と通訳ベースの言葉の伝え方の感覚ができましたので。
なお、実は今だから書けますが、当初、依頼のメールをもらった時に、今の忙しさで海外講演を引き受けるのは無理じゃないかと、おもって、最初の返信を書くまでの1時間、真剣に悩んでいました。ただ、ご縁があって僕のしていることが外国の人たちにも役に立てるなら、それも震災の時に大きくお世話になった台湾の人たちのお世話になれるなら、全力でやってみよう、と、えいっと、引き受けます、とお返事をしたのでした。
もし、あの時「今年は、製品リリース10周年の製品リリースラッシュ、そして、北米への新製品投入の年だから、海外講演の準備は無理だ」と思っていたら、この4カ月はもっと楽ができたでしょうけれど、今回得た大きな経験と知識、多くの外国の友人も、丸ごと、存在していませんでした。そう思うと、迷ったらやってみる、最後は自分の性分だときっと、なんとかしちゃうだろう、と未来の自分にムチャ振りして、「面白い依頼なので、やります」と、これからも答えていこうと思いました。
最後に:
今回、貴重な機会をくださったITRIのデザインチームの皆さん、特に担当のJさん、そして、通訳のテイさん、石井のほかの日本人枠として講演を引き受けてくれたイノベーションのエキスパートUさん、なにより、石井が飛んで歩いている間も丁寧にアイデアプラントの製品事業を運営してくれているパートナー企業のマグネットデザインさんに、心から感謝します。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
石井力重
2017年11月1日
<<ITRIについて>> ※1
ITRIとは、正式名称「工業技術研究院」。略称は、ITRI(イテュリ)、あるいは、工研院、です。
位置づけとしては、日本でいう産総研のような感じです。台湾の産業技術の基礎研究や応用開発から製品ベンチャーのスピンアウトもあるような組織です。
広大な敷地があり、セキュリティーゲートをくぐると敷地の中には大型の研究設備がたくさん並び、大きな芝生のエリアや、複数のレストラン、モスバーガー、ファミリーマート、幼稚園などがあります。奥には、研究者の住むドミトリーがあります(招待者の宿泊するゲストハウスはその一階です。私はそこに3泊しました。)
広大な敷地の中を移動する手段の一つに「u-Bike(のプロトタイプ)」があります。台湾中で見かける街中のシェア自転車「u-Bike」。そのビジネスモデル開発の実証研究もここでなされたそうで、その際の自転車が今も研究所スタッフの足として使われています。
私も、乗せてもらいましたが、台北市内などで乗れるu-Bikeとは少し違い、ここのはスペックがいい自転車です。快適!
<<ITRIのデザインチーム、その接点>> ※2
この研究所の研究院のほとんどは技術を開発する研究者なのですが、その中では毛色の違うチームとして、デザインチームがあります。Design+Technologyから作った造語「Dechnology」というコンセプトで、要素技術を社会的価値に変えていくための様々な活動をしています。
デザイン範疇もひろく、フォルムのデザイン、サービスのデザイン、UXのデザイン、ビジネスモデルのデザイン、と面白い活動をされています。
研究所が持つ技術シーズを市場ニーズに結び付けていく営みをしていくわけです。
そして、それは、私が10年前にしていたNEDOのフェロー時代の仕事も、類似する点が多いです。
研究所が持つ技術シーズを市場ニーズに結び付けていく営みをしていくわけです。
そして、それは、私が10年前にしていたNEDOのフェロー時代の仕事も、類似する点が多いです。
ITRIのデザインチームのメンバー(日本語ができる方)が、石井がネットに書いてきた情報にたどり着き、コンタクトをもらい、今回の台湾でのワークショップという運びになりました。
<<デザイン・チームとの数日>> ※3
今年三度目の台湾渡航は、ほぼずっとデザインチームと仕事をしていました。
10月27日(金曜日)TICCで200人講演会、台北101の講演者の夕食ディスカッション。
10月28日(土曜日)台北のガーデンカフェでワークショップ改良の打ち合わせ。新竹へ。
10月29日(日曜日)新竹での改良版のプロセス最終すり合わせ。
10月30日(月曜日)ITRIでの技術者20〜30人とのワークショップ。
そんな感じで、滞在中はずっと、デザイン・チームのメンバーと仕事をして夕食まで一緒にとって、寝る場所も同じ棟にもどる、という日々でした。
そんな感じで、滞在中はずっと、デザイン・チームのメンバーと仕事をして夕食まで一緒にとって、寝る場所も同じ棟にもどる、という日々でした。