2018年06月10日

親密さの重要性

創造的な成果物を得るのに重要な「発想のお題との親密さ」という話を書きます。


(1)お題との親密さを高めよ

創造的認知の学術的な文献においては

◎対象との親密さを増すこと
◎現実の世界といったん離れ、その世界に入ること
が重要である。

とされています。

(実際の文献では、説明はもう少し難解な感じに表現されていますが。)

親密さをあげることしないで、アイデアワークに入っても、
多くの人は、創造的資質をフルには使えない。

主題に対する親密さを上げるために、何ができるか。』

アイデアワークのファシリテータは、そこにもっと、心を砕かなければいけません。


(2)しかし、情報過多は避けよ

一方の効能を示すと、それだけをやりすぎて間違うので、カウンターパートとなるものも説明しておきます。

主題の関する説明が、長すぎてもいけません。

◎Too Much Informationに注意せよ。

これもまた、重要なのです。

発想を助けたいと思って、テーマの説明、ならびに、技術や情報提供を非常に長く行ってしまいがちです。しかし、知識のインストールをしすぎると、創造的心理を阻害します。心理的惰性とも表現されるものがあり、知りすぎると、「その問題は難しい」という心理になり、創造的な羽ばたきが少なくなります。


(3)なので、バランスが大事

親密さを上げつつも、情報過多に陥らせない、いい塩梅が大事、です。

具体的にどうすればいいでしょう。

この先は、確度がまた十分ではない、石井の経験則的な知見になります。一応、述べます。

◎アイデアの創出をする前に、主題に対する親密度を上げるために、そのお題の世界に対して充分に「入る」ための時間を取る。
具体的には、複数人でそのお題について洞察的に話し合ってもらったり、各自が自分一人でそのお題について洞察的について考えを巡らてもらったり、など。

洞察的に話し合う、洞察的に考える、とは具体的に何を指すか、ですが、洞察というのは、見えないものを見えるものや情報から”見通す”行為です、〔その主題から立ち上がってくるものを目を凝らしてよく見る〕といった感じです。
そんなに難しい精神活動は、ふつうは要求しておらず〔お題に関連する情報を、知っている限り、書き出してみる。お題から連想される物事を、想起して、話し合ってみる。何がそのお題の本質なのだろうか、を推測してみる〕というぐらいで結構です。

◎お題の情報過多を防ぐには、必要十分な適切な情報提供が要る。お題の説明に、盛り込む要素は次の7つ。

「なぜ問題なのか。(あるいは、企画系テーマなら)なぜチャンスなのか」
「簡単な背景説明(内側、外側)」
「そのお題の実現にあたっての制約」
「既に試みたこと、思いついていたこと」
「解決策を実施する権限の度合い」
「(詳細やHowは不明でいいので)理想的な解決状態」
「プロジェクトから得たい結果」

いつも、フルセットが必要な場合ばかりじゃありません。必要に応じて、減らしたり、付け加えたりしてください。

お題の説明者がよくする誤りは「制限を先に言うと、考えを狭くしてしまう」という考え。しかし、「制限」は創造的な頭の働きを引き出す要素であり、適切な制限の提示は、プラスになります。(考える余地がなくなるほどの制限は、マイナスですが。)

これらを端的に紹介し、次に、発想者たちに、お題に対しては「入る」時間を与える、といいでしょう。

お題に入る際に、上記の7つの要素は、自然と想起される質問です。先に与えておくことで、同じ時間で、より親密さを上げることができるでしょう。

以上が、本日紹介したい話でした。

補足)

なお、中途半端にこの「お題に入る」という概念を説明しようとすると「なんか、怪しげなことを言い出した」感が醸されてしまいます。さりとて、学術的な難しい表現を覚えて使っても、心が離れるでしょう。【お題に対する親密さを上げる】という表現をする方が、フォーマルな場ではふさわしいでしょう。アーティスティックなメンバーやメンタリティーが若い人が多いならば、端的に「お題に入る」と言ってもいいでしょう。



まとめ:


お題に入る時間を作れ



追記:

「いきなり、アイデア出しに入っていいケースってないの?」と問われたら、答えは、「あります」。

これがまた、混乱を起こす要因でもあるのですが、事実、あります。

それは、発想者がそのお題に対して充分に慣れ親しんでいて、普段からもそれについて、考えている、そんなお題の場合です。

例えば、ほとんどの学生さんにとって「学習効率を高める新しい文具を考案しよう」というテーマ。

これだと、「じゃあさ、シャーペンの中が、・・・」なんていう具合にすぐ、アイデアが沸き上がります。

このプロセスを表面的に見ると「お題に入る時間はゼロで、アイデア出しが始められている」となるわけです。

そんな集団に対しても、例えば「新聞配達の人材と機材を用いて、できうる、新しいサービスを考案しよう」というお題を出したときには、いきなりアイデア出しを初めても、全然うまくいきません。

そのお題でやるならば、お題についての7つの要素を紹介したり、参加同士で、お題について自分が知っていることを紹介しあったりして、お題に入る、という時間を取るようにします。

そうすると「毎日配達している人たちが持っている地域の知見」だったり、「特定地域に、一日1~2回、網羅的に物理的に物を運ぶ手段という強み」だったりが、浮かび上がってきます。
また、新聞を紙で読むかデジタルで読むかの選択ができる社会になってきて、届ける先の住人が高齢世帯が増えてきた、とか、いろんな動きが発想のくすぐりを引き越してきたりします。

そうして、いろんな切り口が頭にわいてきたところで、アイデア出しに入ると、良く出るわけです。

離し戻します。

良くできたアイデアワークショップでは、参加者層にとって、「お題にほぼ入っている」ような発想テーマが選定されています。なので、「突然、アイデア出しから始めてもいいだ。アイスブレイク、即、ブレストだ、それ〜」という流れを学習してしまいます。

しかしそれは「そうできるお題に整えられている」から、であって、いつもは、その特殊性は通用しません。

まずは、お題に入る時間をしっかりとるほうが、普通なのだ、と心にとめてください。

昨今、アイデアソン、ということで、いろんな場所でアイデアを出す活動が活発になされていて、多くの人が、見よう見まねで取り組んでいます。いいことだと思います。

でも、一度はうまくいったが、どうも、別のお題でやった時にはうまくいかなかった、というケースも良く聞きます。

お題と人の距離を良く見定めて、お題に入る時間を、とるようにしてみてください。

うまく言った方法の丸ごとコピーは、ほんの少しチューニングを変えただけでうまくいかなくなります。
そこには、特殊性から省かれたステップがあったりします。
特に、アイデアソンで大きい要素は、そこに、あります。
posted by 石井力重 at 16:01 | 研究(創造工学)/検討メモ&資料



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