人は多くなりすぎた選択肢を選べない。
なぜか。まず、心は「得ることの幸福」よりも「失うことの痛み」を大きく感じるという特性がある。そして1個を選ぶことは、N-1個を捨てることであり、Nが大きいと心の痛みは大きい。
このような時には、選択をせずに、選択肢を広げるだけ広げて、可能性をすべて持っておく。そして一旦ぐずぐずする。忘れるまで待ち、その後もやりたいと思えることが残っている状態にする。人間の忘却という「機能」を使うのだ。
これをすると最終的には、広げた選択肢の中で一番良かったものを選ぶことになる。ならば「冷却の期間」は必要ないのか。否。このやり方だと「全ての選択肢を忘却する」つまり「すべてを選ばない」ルートが存在する。ここが重要だ。選択肢の中で一番良いものですら、基準に達していない、ということは現実によくある。
例えば、押しの強い服屋さんで買った服。見せられた中では「最も気に入ったもの」だったが一度も着ていないことがあるだろう。
売り手が「即決を迫る」ケースは、大抵「水準に達していないものを買わせる」ケースだ。冷却されたらもう来ないからその場で即決させようとする。
選択肢を「広げる、冷ます、選ぶ」という3つのステップを経て決めることを意識しないと、不要なものを持つことになる。買い物だけでなく、何かの提案や頼まれごとが持ち込まれるときも同じだ。
選択肢が目の前に来たな、という時には、「広げる、冷ます、選ぶ」の段階を経たか、を意識したい。
なお、正しく「選択肢を扱う」のは時間がかかるものである。現実には、都合があってすぐ決めないといけないときはある。それでも、いったんトイレに行くぐらいの時間は取りたい。
選ぶべきものは、常に心が納得する