2006年12月29日

自分の事業に、自分の物差しを。(ビジネスプラン学習プロセス)

ビジネスプラン。事業計画。常に移り行く経営環境の中で、事業を引っ張っていくための地図であり、内外の人とのコミュニケーションのツールとなるものです。

ビジネスプランを作る力、とでもいうべきものがあります。訓練によってあるレベルまでは誰でも身につけることができます。産学連携コーディネータとしての私の活動において、事業化をベースにリエゾン活動するわけですが、ビジネスプランニングの知識はとても重宝しています。

私自身が、その作成能力を身に着けるまでを簡単に振り返ってみます。初めてビジネスプラン作成に取り組む人は、どのようにしてプランを書き上げていくのか。そんな視点で、私自身のケースをば。


■サマリ版■

(1ヶ月目〜6ヶ月目)

経営戦略論の学習。
ビジネスプランの概要(構成要素)を認識。

「事業理念」「何を提供したいか(商品・サービス)」
(成し遂げたいことと、売ろうとするもの)をはっきり描く・文章化・可視化できるように。

(7ヶ月目〜12ヶ月目)

差別化戦略・ビジョン・商品・財務・プレゼン方法を学ぶ。
講習にそってビジネスプランを一通り描く。

「ビジネスモデル」
(われわれは、何をするのか)をはっきり描く・文章化・可視化出来るように。

(13ヶ月目〜18ヶ月目)

後にパートナーになる企業になるに出会う。
プレゼン。パートナーになっても良い、という話へ。

ほとんど何もない状態からでも「描いたことは実現する」ということを学ぶ。
機会はおもがけないタイミングでやってくる。小さく事業開始。

既存のデータベースを細かく調べてゆき、
潜在的な市場規模を算出。

財務的な数字を記述。売り上げ計画など。
実績を元に、説得性の高い売上計画が出来た。
完全でなくとも実行をすることの大切さを実感。
実行する以前よりも、はるかに深い分析や計画立案が可能。

(19ヶ月目〜24ヶ月目)

公認会計士の方に指導していただき、
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフローを学ぶ。
言葉で考えていたビジネスを数字で語ることを学ぶ。

経営戦略の実践的バイブルから、本格的な事業計画書を具体的に学ぶ。

大学院の戦略論は、社会を洞察し大きな方向性を選び取るのには最適。
一方、プランの精度・実行可能性を高めるのは戦術的な「ハウツー」が
必要であり実践的なケースを学ぶことが重要。ということを学ぶ。

公表資料から、新興企業の成長モデルを調査・分析し、プランニング。

付加価値を高め、他社に模倣することが出来ない競争優位性のために
必要な「特許」を探しプランに組み入れる。
 有効な特許を保有する教授にコンタクト、使わせもらいたいとお願い。
 幸運にも快諾いただく。
 ※ビジネスプランコンテストなどでは、ビジネスのモデルが
 「性善説」では通りにくい。特許技術や、規制に縛られた強力な
 参入障壁があることが重要。

プレゼンにおいて、審査員の質問やアドバイスがプランに磨きを。
繰り返すほど、プランの納得性が高まる。

多くの場所で自分の構想をさらしてだめ出しをもらうほど、
そのプランの完成度は上がっていく。ことを学ぶ。



・・・以上が二年間の学習プロセスです。

ただし、実際にやってみると、事業はほとんど計画どおりにいきません。
ある調査では、創業一年目の起業家の9割が「当初の計画を大きく修正した」
と回答しているそうです。
しかし、事業計画が意味を成さないと言うわけではありません。

自分たちが描いた道筋があって初めてずれているということがわかります。
軌道修正をしなければならない、ということが分析的に判断できます。
地図のないまま、さまよう行為は、自分たちがうまくいっているのか、
あるいは、軌道修正を必要としているのか、を分析的に判断するものさしが
ない状態です。

 自分の事業に、自分の物差しを。

二年間の大学院で学んだ、最も重要なことの一つです。






学習プロセスの詳細メモ■

(1ヶ月目〜6ヶ月目)
大学院(専門=技術経営)へ入学。経営戦略の基礎を学ぶ。
講義(ベンチャービジネス関連)で「ビジネスプラン」の概要を学ぶ。
 ビジネスプランの構成要素をはじめて認識。
 具体的中身は分からない。
合宿形式の学生ビジネスプランコンテストに参加。
 「事業理念」と「何を提供したいか(商品・サービス)」を チームで話し合い、合意することを学ぶ。
 成し遂げたいことと、売ろうとするものをはっきり描く
 文章化・可視化できるようになる。
 ただ、市場のニーズ、仕入れ、販売方法、資本政策、
 収益モデルなどは、数字で示すことができないまま。

(7ヶ月目〜12ヶ月目)
学内のビジネスプラン講習会に参加。
 差別化戦略・ビジョン・商品・財務・プレゼン方法などの
 構成内容を具体的に学ぶ。講習にそってビジネスプランを一通り描く。
 「新事業エージェント(新技術を事業化する支援事業)」が生まれる。
 今にしてみれば、内容はプアである。が、一番やりたい
 ことを素直にカタチににしたものが書かれている。
 事業の強みに欠け、初期の顧客の獲得に課題が残る。
 
 ※初めて描いたプランが一番やりたいことであることだと、
 後になって気が付く。幾度も幾度もプランを書くと
 何をやりたかったのかわからなくなる時期が来るもの。
 初期に描いたストレートな構想は
 「私は何をやりたかったのか」をズドンと思い出させてくれる。

学内のビジネスプランコンテストに出場。最終審査へ進むも受賞なし。
コンテストの締め切り一時間前に、学生の持っている
リソースで出来るビジネス
のアイデアとして
「アイデアプラント」の事業アイデアを思いつき、
さっと記入して応募。最終審査で好評を得る。
 モデルの新規性では評価を受けたが、事業規模面
 ・収益性・顧客獲得などの点で問題点を抱えていた。

ここまでをまとめると、1ヶ月目〜12ヶ月目で、ビジネスプランを2つ書くことができ、
・事業理念(われわれは、どうありたいのか)
・ビジネスモデル(そのために、われわれは、何をするのか)

ということをドキュメントにする力がついた。

しかし一方で足りていないものも見えた。
・それは市場が求めているものなのか
・それは高い付加価値をもった商品(財・サービス)なのか
・それはわが社の強みを活かしているか・そして他社はまねできないものか

ということ。

この時点でのプランというのは、
(1)やりたいことははっきりしていて、(2)どういうモノを売るのか、
ということがはっきり語れるようレベル。
相手に訴えかける商品やその構想があるので起業家的に
活動できるけれど、市場のニーズのなさや他社でもすぐに
模倣できる事業を構想している。

事業計画として一通りのフォーマットが埋められるけれど、
マーケティングと、勝負するに足る強みの確立に課題がある状態。


(13ヶ月目〜18ヶ月目)
後にアイデアプラント設立期のパートナー企業になる
福祉大学発ベンチャーの有限会社ラフの経営陣に出会う。

仙台の学生達のお祭りで、即興のプレゼンの機会を得る。
プレゼンスライドをもっていたのでそれを使ってプレゼン。
会場にいた学生さんや小西社長から事業に参加しても良い、という話が。
このときのメンバーが中心となってアイデアプラントという組織を形成。
このときに学んだことは、
ほとんど何もない状態からでも「描いたことは実現する」

ということ。思いをプレゼンファイルや紙などに描いておくと、
おもがけないタイミングでやってくる機会から事業は立ち上がるものだ、
ということを実感。

仙台市の行うビジネスグランプリへのチャレンジに向け
ビジネスプランを作成開始。
 これまで学んできたこと・頂いた事業計画作成資料をもとに、
 独力でビジネスプランを作成。
 これまでに作ってきた原案を基に再作成するのでかなり深く作ることが出来る。
特殊な市場をターゲットにしているため、市場性の調査を行った。
 全国の新聞社データベースやWEB上の検索を用いて、
 プランの潜在的な市場規模を算出
 初めて財務的な数字を記述する。販売計画的なものが主軸。全く新しい分野のビジネスであったため、応募時点までに
「実行」した実績がいきた。小さくとも市場の様子が分かったため
販売計画などの作成が出来た。このときに、
「完全でなくとも実行をすることの大切さ。」

を実感。実行すると見えてくるものがある。
そうする以前よりもはるかに深い分析や計画立案が可能になる。

(19ヶ月目〜24ヶ月目)
学内のビジネスプラン講習会に参加。公認会計士の方が講師。
財務計画の講義に参加し
具体的に損益計算書、貸借対照表、キャッシュフローの表を、どのように埋めて行くのかを学ぶ。

今まで言葉で考えていたビジネスを数字で語る、ということを学ぶ。
頂いた財務諸表作成用のエクセルを見よう見まねで記入していくと、
どんどん売り上げ計画の数字が出来上がっていく。
販売計画のちょっとした変更が3年後の事業の姿を大きく変えることが面白く、
どこで大きな資金ショートをするかや、長期借入金やベンチャー
キャピタルからの投資を戦略的に行うにはどのタイミングで
いくら必要か、などの算出が出来るようになる。


学内のビジネスプランコンテストと新聞社の行うベンチャー
コンテストに応募。
これまでの各種のビジネスプラン講習会でもらった資料を
付合わせてみる。講習会ごとに方向性や教え方の癖がわかる。非営利なコミュニティービジネスから大規模なベンチャープランまで、
講習会ごとに念頭においているビジネス特性がさまざまである。
それらの複数の方向性から自分のプランに最も合うものを組み合わせて使う。


経営戦略論の辞書的書物である、ジェフリーAティモンズ氏の
分厚いベンチャービジネスの本から、ベンチャーの本格的な
事業計画書を具体的に学ぶ。この時点で、
大学院の戦略論などを学ぶことは社会を洞察し大きな方向性を選び取るのには最適

であるが、
プランの実行可能性を高めるのは戦術的な「ハウツー」であり実践的なケースを学ぶことが重要

だと理解する。実際のモデルに学ぶために、構想したプランと比較的近い業種業態の新興企業の成長モデルを公表資料から調査・推測し、
息遣いの聞こえるようなプランを書くことを学ぶ。

事業の付加価値を高め、他社に模倣することが出来ない競争優位性を
持つことが大事であるとの考えから、競争優位性の主たる要因の
一つである「権利化された特許」をプランに組み入れる。
プランに有効な特許を保有する教授にコンタクトしベンチャープランに
使わせもらいたいとお願いする。幸運にもこころよく承諾していただき、
その上その技術分野周辺の特性やトレンド、競合サービスの存在などを
教えていただく。

ビジネスプランコンテストなどでは、ビジネスのモデルが
「性善説」的なモノだけでは通りにくい。ビジネスプランのベース
であるアメリカなどのビジネスの基調にある「契約社会」的な要素が重要。

自社の強みが感性やゆるやかなネットワークがあること、ではなく、
権利化された技術があること、規制に縛られた強力な参入障壁があること、など、といった感じである。

3つのコンテストで本審査に進む。プレゼンの中で審査員が
発言する質問やアドバイスがありがたい。すぐに吸収し、
後半側になるほど、プランの納得性が高まる。
このときに学んだことは、多くの場所で自分の構想をさらしてだめ出しをもらうほど、そのプランの完成度は上がっていく。
一つのコンテストに応募するよりも複数のコンテストに応募する
ほうが早いスピードで成長できるので、受賞できる可能性があがる。
posted by 石井力重 at 23:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料



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