2010年01月23日

ブレスト、ブレインライティング、フリップボード・ブレスト、そして『アイデアカード会議』

アイデア会議にも、様々あります。

スタンダードな「ブレインストーミング(BS)」。

好対照な「ブレインライティング(BW)」。

中間的な「フリップボードを用いたブレインストーミング(FBS)」。

これらは、アイデア会議の時間(仮に30分して)の使い方でみてみると、違いが良くわかります。

「ブレインストーミング」 
= 30分間、シンキングと発言とヒアリングは混在

「ブレインライティング」 
= 30分間、ほとんどシンキング

「フリップボードを用いたブレインストーミング」 
= 3分はシンキング。
  その後、4〜6分は発言とヒアリング。
  これの繰り返し。


「フリップボード・ブレインストーミング」は、「ゼブラ」のようなスタイルです。

「シンキング」を黒、「発言とヒアリング」を白、としたら、
タイムラインは、「黒・白・黒・白・黒…」です。

ちなみに、「ブレインストーミング」は、『グレー』(白黒が微細にいりまじって)。

「ブレインライティング」は『殆どの時間、黒』(シート交換時に、ほんの少しリーディングがあります。ヒアリングに近いので、白)。

これらを絵にしてみました。

brainstorming_3type_timeline_hikaku.jpg

発言は好まないけれど、優れたアイデアを持っている人材が多い組織(日本の知的な部門にはこの傾向が強い)では、
BSよりもFBSが、適しています。
さらにFBSよりもBWが適しています。


ですが、一方でBWには問題もあります。

一定の時間を予め確保する、という点です。

ライトにさっと、アイデアを出し合うことが求められている場では、BWは適しません。5分だけやってみる、というわけにきませんので。

FBSは幾分、”あり”ですが、やっぱり3回ぐらいはサイクルを回したいところ。

ブレストの3タイプを比較整理してみると、こうなります。


さて、ブレストの4つ目のタイプ、というのは大げさですが、4つ目を紹介します。

いろんな企画会議や開発部門でのアイデアワークにおいて見られているやり方を、整理・単純化してまとめてみました。名前がなかったので『アイデアカード会議』法とネーミングしてみました。

ここに紹介する方法は、「いまさら、そんなの、やっているよ」という企業さんも多くあります。ですのでネーミングは、固有性の高いものはつけず、”なんとなくみんながよんでいる名前”をととのええて”アイデアカード会議”とつけました。


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 『アイデアカード会議』法

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0)名刺サイズのメモカードを100枚用意します。
  (コレクトの情報カードがオススメ。
   筆者はC-212を使っています。ロディアっぽいんです。

1)ブレストと同じように、発想のテーマを課題持ち込み者が
  説明します。

2)3分間、各自のアイデアを、メモカードに書きます。
  できるだけ、ショートフレーズ。絵や単語だけもOK。
  1アイデア=1枚。
  大体、1枚〜5枚の範囲で各人が書けます。

3)司会者が合図して、書いたアイデアカードを左隣の人に
  回します。
  それをみて、発想の刺激を得て、
  また3分間、アイデアカードを書きます。

4)これを繰り返します。
  理想は、6回ぐらい繰り返し、
  「アイデアが出尽くして、もうでない、の一歩先」まで、
  いけるといいです。創造性のおいしいゾーンですので。
  ただ、時間がなければ、3回ぐらいでもOKです。

この後は、CPSにおける「ハイライト法」をします。具体的には

5)アイデアカードをテーブルの周囲部分にならべて、
  皆で、立ち、ぺんを持って、カードに☆を書きこみます。
  「おもしろい」あるいは「広がる可能性がある」と感じるカードに。
  星は、何枚に、つけてもOK。他の人の☆を気にせずにつけます。

時間がなければ、この時点でアイデアリストとして
星のついているものを、課題持ち込み者は、持ち帰ってもOKです。

ですが、できれば、次の『振り返り(ショートブレスト)』を。

6)振り返りとショートブレストを数回します。

  まず、星の多い順にならべます。
  星の多いトップ3〜5ぐらいを、
  提案者がさらに補足説明します。

  それを聞いて、他のメンバーにも考えがありますので
  ショートブレストをします。こういう発展もあり得る、
  こうだったらおもしろいなとおもった、などなど。

あまり、普段、アイデア創出会議が盛り上がらない場でも
上位のアイデア
(特に、メンバー人数の75%以上が☆をつけたもの:スターアイデア)は
ほおっておいても、振り返りをするだけで、
結構ブレスト的な会話が始まります。


以上が、『アイデアカード会議』法です。

アイデアプラントが作った、と言うわけではありませんで、
多くの企業さん、産業団体さんのアイデアワークの中で
みられる優秀なスタイルを、標準化・単純化すると
こうなります、というものです。

世の中からいただいた知見なので、多くの人にシェアしたいとおもって、まとめてみました。



なお、標準的な話すタイプのブレストは、
3〜6人ぐらいが適量ですが
『アイデアカード会議』の場合は、かなり多くても出来ます。
10人ぐらいでも行けます。振り返りのショートブレストを、
ホットにしたいときには、6人ぐらいのほうが、よいですが。


なお、上記のタイムラインの絵でいえば、アイデアカード会議法は、BWのモデルに近いですね。ただ、BWが3分6回なり、5分6回で構成されるのにたいし、アイデアカード会議は、時間に応じて、3分3回ぐらいで、終わることもできる利点があります。また、ワークプロセスの説明が簡単というだけ、というのも実践上、大きな利点です。「カードに書いて、3分ごとに回す。」それだけですみますので。☆をつけるハイライトは、別途話せばいいのですから。

コレクトの情報カードは100枚1パックで、200円ぐらいですが、ビジネスマン6人の会議経費を考えると、その消耗品費で、アイデアの産出量が大幅にアップするので、これを使う方が、経費節約になるとおもいます。



追記:ちょっと、高度なハウツーも、付記しておきます。

この「アイデアカード会議」法には、「やむを得ず欠席するメンバー」が参加できる、という面白さもあります。

ブレストのテーマについて、事前に、出せるだけだして、カードに書いておいてもらいます。

そして、最初にカードを回すとタイミングで、司会者が、そのカードを投入します。たとえば、参加者5人いて、欠席者のアイデアカードが10枚あれば、2枚ずつ、まわすカードにわけていれます。

あるいは、大量にかいてくれていれば、回す度に徐々に投入してもいいでしょう。

そこにいない人が、ブレストの起爆剤になったりしているのをみると、組織的な創造能力というものの面白さを垣間見ることも出来ます。
posted by 石井力重 at 16:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | アイデアの技法



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