それは、私の構想していた「一人ブレインストーミングを支援する機能をもったツール」について、アイデアプラントのメンバー(および、私が連携したいと思っている方々)にて、深いディスカッションの場を設けられたことです。
感想を言うと、全国各地から人に集まってもらうとしても、年に1度ぐらいはこうした機会を、恒例として企画してみたいな、ということでした。
私は普段、あまり人に労力をかけてもらうことを好みません。きてもらうとか集まってもらう、というのは、プロジェクトベースで、どうしても必要な方(最小人数)で、という形をとります。その代わり、一つ一つの打ち合わせは夜を徹してになることもしばしば。
そんな形で深く創る。 というスタイルでした。
今回は、プロジェクトになっていない、それこそ私の構想段階にある概念を対象に、アイデアプラントのコアメンバー(Aメンバー)とアイデアプラントがつながりたいと思っているメンバー(Bメンバー)のほとんど全員をお招きしての4時間となりました。
そういう場をつくれたらいいな、とは、思っていたのですが、今回の実現のきっかけをくれたのは、ラーニングプロセスの矢吹さんでした。
このエントリーは長くなりそうですので、すこし話をくぎって、しようとおもいます。
1)矢吹さんとの出会い
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今年のある日、突然、矢吹さんからメールをもらいました。後で聞いて知ったのですが、彼がカヤックさんのサイトを見ていて、私のことをしるにいたり、私たちの作った発想支援ツール(ブレスターとか智慧カードとか)や、拙著『アイデア・スイッチ』を読んでくださったようです。そして、連携してなにかしましょうよ、ということで、お誘いいただいて、私が東京出張の際に会いにいった、というのが出会いでした。そこには、エクセル教育研究所の上田さんもいらして、休日の会議室、お互いどんなことしていて、というのを簡単に紹介し始めたところ、そのまま、休憩も取らずに、トイレにも行かず、気がついたら6時間、ぶっとおしではなしつづける、という事態に。6時間が2時間ぐらいに感じるような創造的な示唆に満ちた会話でした。ちなみにお二人は組んでお仕事をされているということで、その武器の一つは、マインドマップ(彼らは国内でも数少ないクラスの使い手であり、認定された企業でもあり)だそうで、アートのようなマインドマップを即興で書かれていく手元にはしびれてしまいました。マインドマップの本物の熟達者の手元は、実に興味深いものでした。その後かれらが、アイデアプラントのコアメンバーと会いたい、仙台に行きますよ、といってくださったので、じゃあ、ということで私も、仙台にいるAとBのメンバー(プロダクトデザイナー、心理学の研究者、ツールの製造を担ってくれている企業の経営者、面白い企画力とものづくりにたけた美術の先生)におこえがけして、あつまっていただいたのでした。本当は金沢にいるTRIZの関連の知り合いで、企業の技術者の方も、Bメンバーにいて、およびしたいところでした。発想力の豊かでTRIZの世界でも有名な人です。なんと彼の奥さんは私の千葉の故郷の街の数年先輩になる方だそうで。
そんなことが、今回のきっかけになっています。
2)倉本先生との出会い
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面白い企画力とものづくりにたけた美術の先生が、仙台にいます。生文高の先生をされている倉本先生です。昨年、ある方の仲介で出会う機会をいただきましたが、あってすぐに「なんて面白い人だろう、仙台にこんな人がいたのか」と、思ったのでした。おりしも全国を回っていた時期でしたが、地元仙台にもっと目を向けてみなくちゃ、とおもうきっかけでした。このあたりから、すこし仙台にいる時間割合を増やすことになります。倉本先生の自作の手帳カバーや高校生のデザインイベントの内容など、これは娘がおおきくなったらこういう環境に送り出したい、と思うような教育をなさっていました。倉本先生も、カヤックさんのサイトを拝見されていて、私のことをしってくださったとのことで、それがご縁で、仲介してくださる方がいて、面会という運びになったのでした。こう思うと、カヤックさんに留学させてもらったことって、とても大きな影響を後に生み出してくれることだったんだなぁと思います。留学にいたったのは、その半年前に、一緒にシリコンバレーを訪問したことにあり、その訪問のきっかけは、私がIDEOの方にアポを取ってシリコンバレーに行こうとしたことがきっかけでした。IDEOへは、何の伝も無くただ紙一枚に「今年中にIDEOにいくぞ」と机の前に掲げた
その思いだけがありました。強く念じてみると、それを持ち続ければきっとかなうだろう、(でも、どうやって?)とおもったのが、今に至る流れです。シリコンバレーでIDEOやGoogleに行き、鎌倉でKAYACさんに行き、そして地元仙台にいるクリエイティブな人に出会う。もしこれで、将来、倉本先生と組んで、すごい何かをつくれたら、ちょっとしたストーリーですね。パウロコエーリョの『アルケミスト
そんな出会いでしたが、何も連携するネタが無い。お互いいいとしの大人なので、なんとなくだべるために集まる、というのも、粋じゃない。(そして、その関係は、長く続けられないリスクがあるので)なんとなくなにかの場にお誘いするのに躊躇していたのですが、今回は、貴重な機会であり、かつ、私の構想にアイデアを添加してくれるだろう人ということで、お招きしました。そして実際に、多くの優れたアイデアを出していていただきました。アイデアプラントのコアメンバー(Aメンバー)とまったく遜色ない水準でした。
3)そして、コアメンバー
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ブレスター(ブレストのカードゲーム)を出してから丸3年。今度はIDEAVote(大量のアイデアを絞り込んでいくカードゲーム)がでました。それらの間にもさまざまなツールが登場しています。これらのプロダクトデザイン、心理的な分析や助言、製造上の工夫などを下さる人々が、アイデアプラントのコアメンバーです。私が時折Aメンバーとよんでいる方々。彼らが一堂に会することはめったにありません。私よりもずっと忙しい3人なので、カードゲームの開発のときなどは、フェーズごとに、私が彼らを訪ねて打ち合わせをしていって、最終的に全員の手が入れられている、という状態になっています。多分、この三人が同じ場にいたのは・・・2年前、いや、はじめてかもしれません。
製造上の工夫など助言をくれているマグネットデザインの大上さんは、これまでもデュナミス駐在時代にサポートをしてくれていてとても助かったのですが、いまは、マグネットデザインの経営者として、いっそう動きが早くなって、私たちの作るツールの具現化精度を高めてくれています。(アイデアプラント(設立2005年)にとって、第3号パートナー企業でもあります。私の通り町オフィスは、マグネットデザインさんの中にありますし、ブレスターなどのオンラインショップも彼らが運営してくださっています)。
4)マインドマップをめぐる冒険
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さて、こうして、あつまって下さった方々。28日の午後4時間、「一人ブレストの道具」について、矢吹さんの司会の下、みなでディスカッションをしたのでした。

マインドマップの初心者でも、すぐに取り組めるスモールステップのワーク。企業研修でも、矢吹さんのところに依頼が集まるのが分かる気がしました。実効的で、分かりやすくて、そしてよく練られている研修資料と訓練された熟達者の存在。これは大きい。

これはクッシュボール(Kooshball)

これはエナジーチャイム、といって、時間が来たことをしらせるときに、こんとたたくと、ピーーーンというすんだおとが、柔らかに通ります。構造上の特性で、減衰性が非常に低く、鳴らした音がずーっと保たれるこの音は、すんだ通る音、として、心地よく鳴り響きます。紐でしばられた鉄柱が、どこにも触れていない(はった紐にだけ触れている)ので、こうしたことを実現できていると思われます。

無理なく、メンバーから、発想が引き出されていきます。単にブレストするだけの場合に比べて特徴的な違いがあります。「思考の筆算」と矢吹さんがはじめに行ったように、短期記憶の付加を極限まで提言してあげて頭に、思考の領域を作り出す感じがよくわかりました。熟達者の導くマインドマップの会議は、ちょっとすごいですよ。

この会議術はシンプルに構造化されています。
1)個人で発想、全体で共有・展開
2)拡げては絞る
この基本構造を、実に円滑にながしていきます。これは簡単に見えてかなりの技術が進行役にいります。時間コントロールもかなりの配慮があったはずです。ミニマップ、フルマップの合理的な使い分けについても、その考慮された部分に実に納得。

講義部分とワーク部分も実にいいバランスで設計されています。発想し続けますのでさすがに、4時間やるとへとへと(普段の私は、アイデアワークショップの講師側にいて、講師ってすごく体力使うなーとおもったのですが、なにおかいわんや。発想し続けるほうがずっと大変なのだ、と発想する側になって、実感したのでした。これから意を新たにしよう(笑))。
最終的に得られたいくつかのコンセプトは、私にとって、一人で考えていたときよりもはるかに、具体的で、ずっと魅力的なコンセプトになりました。中には、結構すぐにでもトライして見れそうなものもありました。また、いくつかのプランについては、コンピューターサイエンティストがチームに合流してくれたら、総遠くないうちに、実証実験ができそうなものもありました。一方(私の発案したものの中には)実現が困難そうなものもありました。粘土型インプットデバイス。ねじったりちぎって、アンビエントな入力。とか。あるいは、キーボードのストローク深さをセンシングして、軽いタッチで仮にうったものと、強く深いタッチで、確定的にうったもので、フォントを変えたり、もじ色を変えたりして、その言葉の表現力を複雑にしてみよう、というものなど。
お互いにパートナーになるにあたって、よく知り合おう、ということで体験をさせてもらいつつ、お互いがなじみになることが本目的でしたが、練習テーマ的にあげさせてもらったこのテーマを豊かにしてもらった私はとてもラッキーでした。
この、マインドマップをめぐる冒険、と書いた部分は、どうしてもつまびらかに出しにくいところがありますが、私たちのチームには、「ソフトウエア、特に、人間の思考(テキストや絵)を処理して一定の意味解析をしたうえで、異なる文脈に添加してアウトプットするような技術を持った人」の参画が必要です。なので、この辺、ある程度見えるようにだしてみました。この記事を、いつか未来にどなたかが読んでおもしろそうだから、ちょっと助言したるか、とおもってくれることを願い。私たちに必要なのは「それを作ってくれる方」ではなく、「そのあたりの専門知識を有していて、ブレストに参加していろいろ示唆をくださる方」なんです。実施際に作りこみをするとなれば、産学連携的なプロジェクトを組んだり、ソフトウエア作成の作業は、それに特化した企業さんにオーダーすることで、対応し、知的な創造部分にお付き合いしてくださる方、に、私たちは、出会いたいと思っています。
(とはいってもこんなに長いエントリーを、十分に読んでくださる方がいるのか、分かりませんが。でも、言葉で伝えられることの全てを、すべて文字にして書きました。これが私の思いの全体であるところを。)
さて、話を、この記事全体のことにもどします。
こうして、創業1周年を迎えようとするこの時期、私たちアイデアプラントの次なるステージへ向けて、頼もしいメンバーの合流と、魅力的なアイデアの獲得に、いたりました。
この「一人ブレストの道具(特にソフトウエア)」については、5年とかの長期計画で追い求めていきます。無理して始めたりしないで、時間的にながくつづけられることで、いつかコンタクトポイントがくるように、ながくながく、構想フェーズを行きたいと思っています。
アイデアプラントは創業2年目をもうすぐ迎えます。
私たちで無ければ生み出せないだろうもの、それを作ることが、縁あって、こうした環境に恵まれたものの社会的使命(の一つ)ではないか、と思います。
たのしいから、やる。そして、それが、世の中に役立つから作る。
そういう日々をずっと、行きたいと思います。