危機というのは組織がイノベーションを起こすための重要な、大半のケースに共通する「要素」だと、経営戦略の授業で習いました。
危機というのは創造性を引き出す要因でもある、というのは、創造工学の領域の資料をみていても、見受けられます。ただ、失敗すると追い込まれるという「マイナス査定の中で、何かすると危機に陥る」ようなケースの”意地悪な危機感”は、創造性を消し込みます。この辺、どう折り合いをつけるのかな、思っていたのですが、今回危機の中に居続けて、すこし実感として得たことをメモしておきます。
毎日が危機。想定していないことがどんどん起こる。それを解決する専用道具なんてない。ありもので対処するしかない。危機に対峙したら、その案を出すまでに5秒ぐらいの時間しかない。「無くてもなんとかする」という発想力と、それを「すぐやる⇒小さく早く失敗する⇒失敗から示唆を得て案を修正しながら⇒すぐ試す」というハイスピードな行動力が必要で、いざとなるとそれは発揮される。
「失敗したらどうしよう」という心配は「なにも選択しないと死ぬ、けがする」という状況では、芽生えにくい。「だめでもともと、出来たらもうけもの」という状況は、創造的な土台でもある。「発想・行動」を高速回転させて、危機を切り抜けさせる。
近年の創造系の領域では、ラピッドプロトタイピング(簡易なすばやい制作と、実物をもとに調査し改良案をだしていく)がありますが、危機の現場では、出したアイデアはすぐに、軽微なトライアルを受けて、取捨選択されます。芽のあるものはトライアルの中で修正を受けてうまくいくように、行動的に改良されています。
「危機はイノベーションの重要な要素」
という概念と
「(危機から生き延びようとするとき、人は)無くてもなんとかする。しかも数秒で」
という事実には、なにか、共通するものがあるなぁとおもったのでした。
追記:
ちなみに発想と行動、という両輪が回る、という趣旨で書きましたが、平素の行いも大事だな、と思うのです。優れたインプットがなければ、その領域の発想は起こりにくく、その意味ではもっているインプット量の多さが、とっさの工夫を発想させる原料の良質さを決めている部分はあります。
手前味噌ですが、私の場合は幸運にも、今回使えるインプットはかなりあり、知識に助けてもらいました。
・防災アイテム開発の研究会で行っていた事前調査
(漫画では「彼女を守る51の方法」や「大震災発生! 公的支援がくるまでの200時間を生き延びる知識と知恵」で知ったことが。コクヨの防災キットも開封して、構造や使い方を吟味していました。ペーパー歯磨きとかは本当に便利)
・キャンプ、アウトドア、ロープワークの技術
(院生のころ、宮古のキャンプ場管理人バイトをしていて、ありものでいろいろ道具を作ることを学びました)
・原子炉と安全工学
(東北大のMOTコースにいた時に、北村先生の講義をうけていて、正しく放射能のリスクを検討する姿勢と知識をもらいました)
・TRIZ(発明的問題解決理論)
(こういうことを実現したい、という欲求に対して、その解決策をTRIZ発明原理はたくさん持っています。また、簡便な方法としてUSITもあります。そういう工夫発想の思考技術は、根底にたくさん生きていました)
・地震・津波に関する知識
(東北大周りにいると、今村先生の講演など、この辺の知識は得ようと思うとかなりありました。畑村先生の失敗学のお話も、かなり)
(妻が、介護福祉士の仕事をしていたのもあって、少ない水と食料でも健康的に生きられるように、配慮してくれたものあります。妻に感謝。)