今回は少し、物理と新しい道具の可能性を考えたい、というお話です。
■面白い風力発電機構
先ほど、ツイッター上で、可能性を感じる風車「スパイラルマグナス」という秋田の企業の風車を知りました。風車の翼がなんと円柱でそこにはらせんの小さい羽根が付いています。面白いのは、その円柱をモータで回転することで、吹いてくる風に対して翼を回転させる方向に力が発生するというもの。原理はカーブのボールを投げるのと同じでなるほど、と。ボールなどの回転で生じる揚力には、マグナス効果という名称があるそうです。
この風車は、従来のスタイリッシュでバターナイフのような、典型的な風力発電風車の強風対応力や低風速の発電性能についての問題をクリアしそうな、おもしろい特徴も持っているようです。ざっと、特許情報やメーカサイト見た範囲では。
■シャウベルガーの渦
この回転する円柱が風邪から揚力をもらう、ということをみていて、数年前のTRIZシンポジウムで、オーストリアのウォルフガングさんが紹介した「シャウベルガー」の面白い技術を思い出しました。
シャウベルガー、をネットで検索すると、イロモノ扱いの所もあり、判断を慎重にして読んでいくべきなのですが、彼の「ぐるぐる回る、回転の動きを利用した機構が生み出す強い力」という観点はとても面白い物で、エッセンスは構造・機構の工夫の際に、ぜひ取り入れたいものがありました。
■系に存在する無限リソースとしての風
「風」のように、地球規模でずっと生じているエネルギーは、人間にとって、実質的に無限に利用できる”リソース”です。(無限のエネルギー、というのは、物理学的にはありませんで、太陽系というシステムで見れば、決して風というエネルギーは無から生み出しているわけではないのですが。たとえば、成層圏エレベータサイズの風車を各国が建設できる時代がくれば、この無限リソース、という近似はくずれます)
■「風」×「回転体」という観点で工夫を考えてみる。
風の中で、回転体はその流れと垂直方向に力を受けます。もちろん回転を継続するにはエネルギーが要ります。大気との摩擦、内部構造で発生する摩擦など。ただ、その摩擦で消費するエネルギーよりも、場合によっては大きいエネルギーが得られる場合がありそうです。それを利用すると、スパイラルマグナス以外にも、いろんなものが考案できる可能性があるな、と感じました。
一休さんのように、腕を組んで頭の中で、15分で考えた「未成熟なアイデア」ですが、ちょっと書いてみます。
ランナーズ・グライダー

カーボンファイバーの様なものでできたとても軽い筒とシャフトでできています。
ローラーの内部には強力なゴムのようなものがあってそれを予め、走る前にきつくネジっておきます。開放する時にはゆっくりと長く回るように、制御ギヤを入れておきます。
まずは、回転を解放せずに頭上に掲げて走ります。するとこんな構造物を頭上に掲げておくのはバランス的に難しく、しかも走れば空気抵抗も強いのですぐに後ろ側に傾倒してしまうでしょう。なので後部に羽をつけてみました。この羽で進む方向に対してまっすぐになる(風見鶏の尾っぽの役割)をになわせたいなと。
これでだけだと、単にグライダーにハンググライダーの出来損ないみたいなもので、筒が付いているだけ無駄に抵抗がありますが、ここからが違います。
ゴムを開放します。図のように回転すると揚力が生じます。
なお、回転体ではなく、翼のようなものをはじめっからつけておいて、揚力を付けたっていいじゃないか、ということに対しては、人間の走る程度の速さでも十分な揚力を出すのが従来の翼構造では難しいだろうのに対して、この場合はゴムの戻ろうとする力を調整しはやい速度で回転させることで、ランナーの速度でも十分や速さをだせるようにできるかもしれません。回転体の大きさなどにもよるでしょうけれど。
多分、試作をいくつもし、単に揚力よりも重たいだけの物体になるんでしょうけれど、もしかしたら、いろいろチューンすることで、そういうものができるかもしれません。
そうなったら、個人的には、キャスターバッグや、車いすの上にそれが付いているような産業用ともあっていいなと思うのです。駅の階段で、そのローラーを付けた車椅子を上までみんなで運ぶ時に、階段の下から扇風機で風を送り、巻いておいたゴムでローラーを回し、少ない力で車いすを持ち上げていくよな用途がないだろうかと。(大きな構造物があることであおられる不安定さが、この図の方式だとありそうで、その辺は何か改良のよりがあります。(そして、非常に強く、軽く、安全なこの構造が作れたら、微風でも人間が垂直に浮上するような、たけこぷたー相当のものが、できないかなぁと、連想的におもわなくもないのですが)
久々に面白い技術に触れて、いろいろとイマジネーションが刺激されたので、ちょっと書いてみました。
(一度、風力発電機メーカさんをご縁があれば訪ねてみたいなぁと、思いました。)