2006年04月04日

『TRIZ』発明的問題解決の理論(自主レポート)

ロシアのアルトシュラー氏が生み出したシステマチックなイノベーションの理論があります。当初、私はアイデアプラントでのアイデア出しの技法開発のために勉強し始めた理論ですが、この理論「TRIZ」にかなり深い可能性を感じて、最近独学でこの理論の勉強をはじめました。幸い、インターラボ(産学連携分野の無料雑誌)にTRIZの大家の中川先生の連載がありそれが非常に分かりやすく助かっています。自主レポートとして、連載第一回目の内容を以下、簡単にまとめました。これから業務において専門的に活用したいと考えてある種の構想を練っています。

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自主レポート 『TRIZ』
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(出展:インターラボ 2006年1月)

■TRIZの意味
発明問題解決の理論を意味する
ロシア語の頭文字をつづったものを英語表記に直したもの。

■発祥
旧ソ連のアルトシュラー(1926-1998)が50年にわたり
発展させ確立させた。

■日本での普及
本格的に紹介されたのは1996年〜1998年。
現在では米・欧で国際会議が毎年開催されるようになった。

■TRIZの情報源
(日本)(大阪学院大学 中川教授、編集)
TRIZホームページ www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/
(米国)
TRIZ Journal  www.triz-journal.com

■入門書的な本
三菱総研編著(1999)『革新的技術開発の技法:図解TRIZ』日本実業出版社

■教科書的な本
Darrell Mann、中川徹監訳(2004)
『TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新』創造開発イニシアチブ

■TRIZのそもそもの発想。
アルトシュラーが特許関係の仕事で多数の特許を調査する中で、
「特許のアイデアのエッセンスには、似たパターンがしばしば現れる。
もしそのパターンを抽出して学べば、誰でも発明家になれるだろう。」
と考えたもの。

■特許から抽出したそのパターンが、発明原理。
40の発明原理、サブ原理レベルでは、約100項目を抽出・整理。
分割の原理、分離(摘出)の原理、局所的性質の原理、などから
複合材料の原理など、いろいろ。

■抽出は直感的になされている。
TRIZはボトムアップに、事実を整理していって次第に仮説を形成し、
それを実地応用で検証しながら高めていく(深めていく)という
帰納的・実証的アプローチで形成してきた。
この40の発明原理はその後ずっと使われ、
書く原理の含蓄が深まり、多数の事例が集められている。

■そのほかの、特許の分析からまとめられたもの。
科学技術の現象・原理や諸技術を網羅したもの
(Effects:物理・化学的効果データベース)
機能目標から実現手段を調べるデータベース
技術の進化・発展の方向性をまとめたもの(進化のトレンド)

■TRIZでのそれらの知見の使用方法
問題を抱えている技術者たちの視野を広げ、
自分の専門知識だけでなくて、他の科学技術分野、
他の産業などでの知識を有効に使えるようにするもの。
「誰かがどこかであなたの問題をすでに解決している」
というのを警告としてではなく、「解決の鍵」として
使おうとするもの。
自分の問題の本質が解決されているのであって、
実際の問題の解決策は、状況によっていろいろに
変化が必要。そこに自分の創造がある。

(石井私見)TRIZと歴史学の思想的根底には、同じ温故知新があるように思えます。

■デボノの「水平思考」
デボノの水平思考と基本的には同じ。
具体的な知識ベースを蓄積し活用する点で異なる。

デボノの水平思考

■発明のアイデアを出す方法
技術上の困難な課題に対して、確実に創造的な解決策を
作り出す方法としてTRIZは開発された。

■使う場面
第一には、将来の製品やサービスを構想する場合。
9画面法で、現在の製品やサービスの上位と下位のシステムを考え、
過去・現在・未来の発展を、「進化のトレンド」の知識などを
つかって考える。
第二には、技術的な問題(困ったこと)に遭遇した場合に
解決策を考える場面。
一つの製品・サービスの初期の企画・設計・開発の段階だけでなく、
製造の段階でも、保守の段階でも、要するに技術的な
問題点を解決する、そのための基本方針を作るのに使う。

■「発想法」「発明のノウハウ」との違い
TRIZでは、問題の設定、問題の分析、解決策の生成など、
きちんと段階を踏んで問題解決をします。
知識ベースを使うこと。
しっかりした技術的思想に基礎があること。

■問題の設定、分析の段階の方法の特徴
問題を広く体系的に捉え、問題の根本原因を考えて、
その問題の技術システムのメカニズムを理解しようとすること。
システムの機能と属性に関する分析をきちんとすること。

■解決策のアイデアを出す段階にも方法をもつ。
知識ベースに蓄積した「発明の原理」や「進化のトレンド」
などの中から、分析結果に応じて有効そうなものを
ヒントとして提示することが、もっとも典型的で有効なやり方。
TRIZの機能分析のやり方の一つに「物質・場分析」と
呼ばれるものがあり、その分析結果に応じて出されるヒント集を
「76の発明標準解」と呼ぶ。

■TRIZでもっとも特徴的な方法。
問題が持っている本質的な困難さを「矛盾」として明確にし。
その上で(妥協や最適化でなく)きちんと解決すること。
TRIZでは「一つの側面を改良しようとすると、別の側面が悪化する」型の
矛盾に対してはこれらの側面の組に対して今までの発明者たちが最も多く
使用した発明の原理を抽出しており「アルトシュラーの矛盾マトリックス」
と呼んで公表している。
また「一つのシステムの一つの側面に対して、正・逆の互いに対立する
要求が同時である問題」(TRIZではこれを物理的矛盾と呼ぶ)を
確実に解決する方法を持っている。

■二律背反、にっちもさっちもいなかい状況が、解決できる。
「分離原則」と呼ばれ、次の3段階で行う。
「(1)対立する要求を吟味して、それらを空間、時間、
またはその他の条件で分離しなさい
(2)分離できたら、分離した状況でそれぞれの要求を完全に
満たす解決策を作りなさい。
(3)そして、両者を統合して用いなさい。」
大抵の問題で(1)(2)は比較的容易に進むが、(3)で
はたと困る。この段階に、それぞれの分離条件に応じて、
多数の発明原理が有効であることが知られている。
発明原理をうまく適用すると、矛盾が鮮やかに解決される。
posted by 石井力重 at 23:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | TRIZ



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