2012年07月17日

描かれるビジネスプランの3段階

描かれるビジネスプランの3段階.jpg


アイデア創出という仕事をしていると、よくビジネスプランコンテストに縁があり、主催者さんと話をします。たくさんのビジコンにも参加者として応募して、いろんなことをそこで見て学びました。

そうした中で、ビジネスプランを始めて書くような人が徐々に上がっていく階段、が見えました。

ビジコンでファイナリストになるような1%の人と、そうでない人はプランの何が違うのか。大体これらのどこかのレベルでダメになる3つの段階があります。逆に言えば、その3つを超えるようなビジネスアイデアをプランにしていけば、割とプランが簡素でもよい線まで行けます。それはプランコンテストに勝つ勝たない、というだけなく、自分自身の船をこいでいくときに冒険の計画書を立てるうえでも有効です。ちょっとそれを小紹介してみます。

レベル1)回せない

”その事業計画、あちこち整合性がない””一番のネックは、君のやりたいことは誰も欲しいと思っていないサービスだな。”

そんなセリフは、ごまんと、聞きます。人間の認知能力というのはそんなに高いわけでもないので、おうおうにしてそうしたことは起こります。まずは、回せるレベルにないようなプラン、誰も買わなそうな商品企画の段階を超える必要があります。これは、ある程度何度も書き直したり、人に聞いてほしいと思われる物事への感度を上げることが有効でしょう。

レベル2)儲からない

”やれるか、やれないかでいえば、やればやれるだろうなそれ。ただ、収益でないだろ、それ”

実にこれもよくよく、耳にするセリフです。”儲からなくなっていいんです!”という返しもほぼ何度も耳にします。それももちろんありではありますが、ビジネスプランを書いて計画を立てるという行為においては、回すほどに赤字、それも未来永劫に。という事業書を是とはできません。私自身もさほど儲かることは気にせず大好きなことで飯が食えたらそれでいい、というたちなのですが、ビジネスプランコンテストであれば話は別です。きちんとした収益モデルを検討し設計します。

大体、創業したら18か月ぐらいはどんどん、貯金が減っていくもので、計画上、上向き、となっているぐらいでも水平飛行。計画上、下向きとなっていれば、急降下の日々でどきどきしながら道を行くことになります。

事業をヨリヨクしていくにはある程度の+が必要で、適切な範囲での収益を長期的には出せるように、頑張って設計する必要があります。永続性がある回し方せよ、という点は、当たり前なようでいて、よく、ビジネスアイデアのレベルからプランの水準へと数字で測っていく段階で超えられていないレベルの一つになります。

レベル3)大手に模倣される

”やれそうだし、収益モデルもなかなか。だが、それ、君の所が一番、上手にやれるの?””やってみて、儲かるモデルであることが分かったなら、早晩、資本体力のもっとあるところが入ってくる。それに抗することができるのか?”

収益モデルがいい水準まで行けるのも結構少ないですがその水準に残った人たちが最後に超えるべき壁はここです。「儲かったら大手が来るで。」それはその通りで、さりとて特許でもとって知財的な保護を、、、と短絡的に答えがちですが、特許なんてとれない場合がほとんどです。(サービスの提供の仕方で、その一部が技術的要素があって、云々、というのはもちろんありますが、そういうもので守れるような事業以外にも、事業機会はいっぱいあります。さらに言うと、特許で固めてありますー、といっても、内容をみると迂回技術はいくらでも作れそうな凄く狭い内容の特許を見ると「おおぅ・・・」と思ったり。)

より好ましいのは、@その事業モデル、ビジネスを回して収益を出していくことができるのは、ある種の強み(特定領域の顧客との関係性であったり、特殊な技能であったり)を有するからでありA自分はその強みを特に大きく持っていて、Bそれを有していない事業者に大手といえどはうまく収益の出せる水準で事業を回すことができない、というビジネスアイデアです。

この要件を満たせるものを書ける人は、ほとんどいなくて、ビジネスプランコンテストのファイナリストを見ていると、(2)までの状態で、勝ち残っています。優勝を果たせる人はそんな中で(3)の水準を現在もしくは将来的に(連携などにより)達成できるプランであることが多いです。


あるケース)

あくまで仮想のケースですが、たとえば、大手スーパーのバイヤーをしていて、個人で独立して新しい流通と生産の特殊なビジネスを興そう、という方の場合、さすがに「回せる」し「収益構造も十分に期待できる」ものを描いているので成功しそうなのですが、「自身の強みに立脚して、それが将来のライバル候補たちの中で一番強い」と言えるかというと、△、になったりします。もといた会社の看板を外すと、その強みと思っているカードが急速に小さいものになる。大きな個人資産を投入するといっても、大きな川の中に、プールの水で応戦するようなもので、それは厳しいです。

そういう場合、その人が、会社を辞めた後でも、強みとして保有しているものがなんであるのかを、列挙して認識しなおして、その強みがあるからこそできるビジネスアイデアを構想しなおします。それが上手く構想で来てうまく実施できた場合、大きくて資本力があるところが仮に入ろうとしても、収益の出る回し方をするには、同じだけの強みが必要でそれを最もうまくできる人物との勝負になればかなり分の悪い勝負を相手はすることになります。もっといえば、競うより人こみで仕組み丸ごと買い取ったほうが効果的だ、という判断にもなるでしょう。

補足)

6W3Hシートを書くときの話について、述べますと、Who(誰がやるの?)の項目というのは、その最後の3段目を超えさせるための仕掛けになっています。そこに「私がやる」と書くわけですが、モデルを実施するのが最も効果的なのが「私」ではなく「ライバル」であると認識されるならば、早晩それは倒れます。適切な収益モデルがあるならば。



画餅だが、航路図である

チャレンジャーの中で、時々こういう声をききます。

”ビジネスプラン?そんなもの、絵に描いた餅だよ。書いたってその通りにならない。だから意味ないよ”

私はこの意見については、部分的に賛同し部分的に別の意見を唱えます。まず、賛同の部分。リスクゼロになるまで調べてから船出する、というマインドセットになると永遠に船出できる日は来ません。寿命で死ぬ日に、もっと別の道があったのでは、と思うかもしれません。それはさみしい。形を作るより走り出す、というマインドセットを私はかなり肯定しています。(私自身もそういう面がありますし、そういう動いてから考えるとスタイルは創造的に何かを生み出す時に効果的だと思います)

次に異を唱える部分。計画書はいわば航路図。実際は未踏領域の地図というのは進んでいくと、決めた通りの航路を行けないこともありますし、陸地がなかったり、行ってみると暗礁があって通れない航路もあります。港で書いた未踏海域の航路をそのままいける人は10%でしょう(たしか、創業系の機関が調べたところ、創業後3年?ぐらいたった人に、事業計画通りに進んでいますか?と尋ねたところ、Yesと答えたのは10%ぐらいだったそうです)。

しかし、もともと描いた航路からずれを知ることができます。具体的に何%ずれているかを数字ではじき出すこともできます。修正するにしても、元の航路図を手掛かりにして何%下方修正するのが現実的に正しいかを再設定することができると翌月からの目安もできます。全く航路図がないと、行ってみてやってみてできた出来高が唯一無二の数字。翌月もできた量が唯一の経営上数字になります。船が大きな流れに乗っているときには多少の舵きりが甘くても大きな方向に進みます。しかし、自力航行を始める時にそういう船は困ります。どこに向かえばいいのだろう。流れに沿って全力前進、方式が悪いとはいいきれませんが、潮目をみ、もう一方で大局も見据えつつ、自分たちで取捨選択が素早く常に行える状態にしておく必要があります。航路図があると、判断指針があるので、ブレずに一航海をつつけることができます。判断までの時間も早く、一人孤独でも、計画書と対話しながらエイッと覚悟を決めることができます。人は弱い生き物で、気弱なとき、疲れている時、思考力が低酩酊している時には「そこから逃げる」という原始的な考えに支配されます。しかし、理性がもう一方で警鐘もならしています。猛烈な嵐の中で司会もろくに効かず、判断に迷っている時間もほとんどない、そんなかなで進路を変更をする時に、なにをよりどころにするか。そういう時に、ろくでもない人にコロッとだまされたりするのを結構見たりしませんか。人はそういうところがありますが、この世で信頼に足る人、十分な時間をつかって真摯に調べ頭を使った過去の自分の描いた地図は、大きなよりどころになるでしょう。暗闇の中で握りしめて、一心不乱に進むべき地図。そういったものを未来の自分の残す、そういう意味合いもあります。

しまらない余談)

(書くための時間が付きました。もう一つ書きたいことがあります。地図、という意味では、雪山の地図、という逸話を経営戦略論の授業の中で学んだことがあります。どこかに書いたつもりでいたのですがうまく探せませんでした。 関連するものとしては http://ishiirikie.jpn.org/article/22033560.html ぐらいかな。 その話というのは、軍隊が演習で山に登ったが気候の良い時期ですぐに下山する予定で地図がなかったが、突然の吹雪で道がわからなくなり、軽装備しかないので下山をせざるを得ない状況になった時に、一人の人がコートの中に地図があった、ということでそれを頼りに下山を開始したが行く先々で地図が不正確であることを知り、その地形を修正書き込みをしながら苦労して下山したというもので、よく見てみるとそれは違う山の地図だった、という話。地図が正確であるに越したことはないが、自分たちがどこにいるのかを知る道具になり、地形を把握するための道具になるもの、それが地図という道具の本質である、という話だったと記憶しています。O先生の講義は聞かせる講義でしたが、出典のない、概要化された話でこれもその一つでした。ただ、本質はなるほどと。)
 
posted by 石井力重 at 17:22 | Comment(2) | TrackBack(0) | アイデアの技法



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