2007年11月08日

ブレストとブレインライティング(BW)

ブレインストーミング、というアイデア出しの話し合いの方法があります。これは企画系の人々には良く知られています。ブレスト、と略されることが多いです。英語圏の場合は、BS、と略すことが多いですね。

ある調査では、研究開発においてもっとも使われている手法は?との答えには、ブレストが一位、だったそうです。一方で有効度を問う設問では、あまり芳しくない結果が。

多くのブレスト体験者が感じる「ある種の難しさ」があります。その本質は実はコミュニケーション能力の高さを暗に要求していることと関係しています。ブレストを何十と観察しているとわかるのですが、アイデアを出すタイミングや表現の力に力量が問われるんですね、結構。盛り上がっていないときもそうですが、盛り上がっているときも、そうです。アメリカのようなコミュニケーション力の鍛えられている民族とは違う、日本の文化では、結構つらいものがあるのも確か。

日本だけじゃありません。西ドイツでも日本と同じような文化性があるとのこと。それで、西ドイツでブレインストーミングから「話す」という難しい行為を取り払った手法が随分まえに作られました。ブレインライティング、とよばれています。略称は、BW、です。

話さないでブレスト? と、ブレストを良く知る人は、頭をひねるかもしれませんが、実際、30分間、全くしゃべらずに行います。でも、この方法が良くできているのは、他の人のアイデアを発想を適度に材料にしながら、アイデアを出し続ける構造を持っていることです。


やり方を説明します。


<準備>

1.メンバー(推奨は6名。出来れば、4名〜8名くらいにおさめて)を集めます。

2.全員が囲めるテーブルを用意します。

3.全員に紙とペンを配ります。(普通のA4、もしくはA3)

4.紙の上に、少し余白をあけて、紙一杯に、ヨコ3×タテ6のマス目を書きます。余白には長細い四角を書きます。

こんな感じです。(クリック)


<テーマを書き込む>

1.アイデア出しのテーマをメンバーで話し合います。テーマの意味が分からない人がいないか確認し、全員がテーマを理解した状態にします。

2.アイデア出しのテーマを上部の横長の四角に書き込みます。全員が同じ表現でテーマを書きます。

このときに推奨する文のスタイルは
「もっと○○するにはどうすればいいか」
「○○を使った新製品のアイデア」「○○の新しい利用方法」
などの表現がよいです。


<アイデアを出す>

1.5分間で、3つのアイデアを考えます。話をしても結構ですが、手元のシートに書き留めるアイデアは、個々人のアイデアを書きます。書く場所は、一番上の3つの四角の中へ、です。一つの四角に一つのアイデアを。

補足:時間は5分ではなく、3分でも構いません。メンバーの進み具合で調整します。時間はリーダーが計り、時間を知らせます。

補足2:必ず3つ、書きます。駄作でも、平易すぎる・当たり前すぎるアイデアも、結構です。ほんの少し違うアイデアを3つ出しても結構です。(タイヤを3つにする、タイヤを5つにする、タイヤを6つにする、などでもOKです。ほんの少し違うのも新しいアイデアです。)

補足3:簡単な絵や図を書いても結構です。文字を補足的に使って。

2.5分が立ったら、左隣の人へシートをまわします。そして、手元には右手の人からシートがきますので、そこへ5分間でまたアイデアを3つ書きます。二段目の3つの四角へ。

補足:一段目に既に書かれているアイデアを見ます。そしてそこからヒントを得て、便乗したアイデアをだしたり、ほんの少しだけ変えたものを出したりします。全く同じアイデアはだめですが、少しだけ変えたら、それでOKです。

3.同じく時間がきたら、左に回して、3段目をやります。以降同じように、4,5,6段目も。

4.(6人で行っている場合は)自分のシートが手元に戻って、時間は30分経過して、アイデア出し終了。6枚のシートにあげれたアイデアは、108個。30分でかなりの量ですね。

補足:4人や8人で行っているときも、6段目で終わります。自分のシートがめぐってきても続けます。逆に一度も目にしなかったシートも、大人数ではあるでしょう。それで結構です。





ブレインライティングとしては、ここまでで終わりです。6人で30分で、108個のアイデア。この発想過程では、適度に他の人に便乗したり、突飛なアイデアを出せたり。量を出していく、ということも促進されています。そして最もよいのが「批判禁止を徹底できる」ことです。書き物の場合は、批判は出にくくなります。





追記:

アイデアを絞る作業とも相性がよいです。

ハイライト法、という「全てのアイデアを全員がチェックし面白い・広がる可能性がある、というものにチェックを入れる」方法があります。これは、たいていの場合、チェックの入ったアイデアが全体の20%になります。100以上のアイデアをそのまま、コントロールするのは大変ですが、ハイライト法で絞ると、質のいい上位20%を抽出することが出来ます。


<魅力的なアイデアを抽出する>

1.具体的には、BWの終わった後、手元に戻ったシートをみながら「面白いもの・広がる可能性のあるもの」に☆を書き込みます。そして、つけ終わったら左隣へ。

2.まわしてつけて、全てのシートをチェックしたらおわり。たったこれだけです。

なお、回ってきたシートで面白いものに既に☆がついていても気にせず、更に☆をつけます。

最終的には、☆が6つ(6人の場合)つくものもあれば、一個もつかないものもあります。大抵は、80%ちかくのアイデアが「☆無し」になります。それらは、その先のアイデアの深い検討では使いません。

補足:落としたものはそれでいいの?という声は当然の疑問だと思います。ブレストを繰り返して深めていく、という立場を創造工学ではとります。落としたものの中にいいものがあれば、次のときに復活させてもっと拡げてください。と。 ただ、だれかしらが「広がる可能性がある」と感じたものには既に☆がついているので、誰も☆をつけなかったものには、次回に持ち越されるものはほとんどありません。安心して、削り落としてください。




資料:

ブレインライティング・シート

(私が、アイデア出しをサポートするときに使っているシートです。A3サイズで出力するとちょうど一つの四角のサイズが名刺サイズになります。切り出したアイデアカードが、ちょうど名刺サイズなので扱いやすく、遺したいアイデアカードの保存も比較的容易です。
posted by 石井力重 at 23:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | アイデアの技法



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