Aさんという、面白い事業を展開れている、優秀な経営者の方に、以前「IDEAVote」を用いたワークショップにご参加いただきました。

示唆深いご質問でしたので、ご本人に了解を得て、以下、転載します。
■ 石井→Aさんへ の メール
Aさん
ご無沙汰しております。
石井力重です。
某協会さんから、アンケートの詳細をもらいました。(正確には、少し前に、もらっていました。)
その中でAさんから
Aさん
ご無沙汰しております。
石井力重です。
某協会さんから、アンケートの詳細をもらいました。(正確には、少し前に、もらっていました。)
その中でAさんから
「IDEAVoteで1位になったアイデアが感情的にピンとこない場合、というのは何なのか気になりました」
というコメントをいただいていました。
とても貴重なコメントだと感じ、これについて、しばらく考えてみていました。
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2つの要因
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ピンとこない事には、2つの要因がありそうです。
どちらも、IDEAVoteというツールとその基本アクションに起因するものです。
1)モノゴトの全方位をカバーするような評価軸をたった8つ程度で表現したため、概念の分解能が荒い事。
2)チームとして採用する価値軸3つを「決定するプロセス」が、単に多数決で決めてしまうことに起因すること。
細かく述べます。
まず、教材の話を離れて、企業内の創造活動の指導の場面での話をします。
創造的にアイデアを収束させていく作業としては、プロセスの骨格は同じでも、もっとじっくりやります。
特に、「価値観軸(開発において、チームとして重視したい評価軸)」を選定するところは、じっくりとやります。
まず、各自が主張したい価値観軸を挙げあって、皆の価値観軸が場に出そろうようにします。
(なお、価値観軸をゼロから考えて提示することは、創造活動になじみのない人にとって負担が大きく、実際は”備考”に記したような感じになります。※)
次に、チームとしての価値観軸として、3つまでに絞ります。
(実際は、もう少しあってもいいのですが、多すぎると中庸なアイデアが選定される傾向が強くなります。出来るだけ3つ、多くても5つまでにしてもらいます。)
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”備考”: 自分が重視したい評価軸を挙げることは難しい
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創造活動に慣れていないと、挙げられて採用される評価軸は”ぼやっ”としたものになります。
だいたい、自社のための軸なのに、IDEAVoteの軸カードの表現ぐらいの大まかさになります。
まずは、それでよいとして、それらを用い、全アイデアの評価をしてもらいます。
そうすると、途中で気づきます。
「あれ、、、この評価軸じゃまずいな。。。うーん、なんというか、もっとこう・・・、初期の市場化がエネルギッシュに行くようなモノを選びたいんだよな。評価軸として、なんといえばいいのかはうまく言葉にはできないけれど」
といった具合に。
こうした、違和感をジャンプ台にして、本当に重視している評価軸に徐々に気が付いていきます。
全アイデアの評価をやってもらった後、軸やトップアイデア群について、納得できなかった点から話してもらい、ディスカッションして
再度「評価軸を挙げあう」→「議論して、皆が重視したいと考える評価軸を決める」ことをしてもらいます。
この議論は、かなり白熱します。そして、ずっと具体的になった評価軸が出ます。
時には、基本的な価値観があいいれず方向性がどうしてもばらけてしまうメンバーもいます。なぜその軸を重視したいのかという点を詳らかに話し合ってなお、あいいれない場合は、チームからメンバーが大量に抜けて、共感できるメンバーを増強する、という展開にもなります。場合によってはそれも良しとしています。
(経営学に出てくるGrowing painsの概念によると、ある程度具体的な経験を経たベンチャーチームは、具体的な方向性が表出しはじめ、語り始めた方向性は創業者メンバー間でも割れて、メンバーが一気に出て行って、残った社長を核に、再成長すると、されますが、これがプロジェクトチームレベルで起こるような感じです。)
(備考、終わり)
この備考を踏まえると、もう一つの疑問が展開します。
評価軸を”再度選ぶ”行為に関するものです。
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評価軸の再設定は、活かしたいアイデアを念頭に、恣意的なものになる?
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全てのアイデアを見たうえで、新しい評価軸を提案するというのは、自分たちが推したいアイデアを合格させるための評価軸を設定しているような作業をしているようにも、感じられます。「この評価軸を採用するってことは、〇〇というアイデアを選ぶって、ことと、実質イコールだろ」と。
それは、一つの側面として正しいのですが、それを踏まえつつも、得られる大事なものがあります。
新たに設定する評価軸は、「まだそこにはないアイデア」が到来した時にも、チームのゆるがない判断指針として機能します。
アイデアは外からくるばかりではなく、発展の途中で、新しいいくつかのアイデアに分化していくこともあります。そういう時に機能する判断指針となります。
ただ単に、アイデアを全部見てベスト1を選ぶ、ということだけをした場合は、新しいアイデアの到来時に、混迷を極めます。(新しいアイデアが、全ての面で劣っている場合や、全ての面で勝っている場合は、すぐに判断が付きます。しかし、一部は勝っていて一部は劣っている場合は、判断できなくなります。多くの場合は、そういうケースとしてアイデアが到来します。)
・・・
以上です。
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味見としての、ツール
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開発部門のプロジェクトであれば、創造的にアイデアを収束させる方法としては、ここまで実践していきます。
ただ、それを、上司がいきなり説明しても、参画意欲が出ないし、意味のない混乱を生じるので、取り組みの初めに、味見体験として、IDEAVoteをやってもらいます。
すると、体験を通じて「ああ、何となくで評価軸を選んでしまうと、へぼいアイデアをトップとして選出してしまうのか」と気が付き、現実のチーム活動において、最初の段階(評価軸を挙げあう作業)から、かなり集中して取り組んでもらえます。
ただ、そこまでのシビアな場面にだけ向けて作ったわけではありませんで、
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創造仕事の作法を学ぶツール
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基本を、体験し、共有したいな、という職場に向けての道具、としても提供しています。
「今までの、ブレスト後のアイデアの決め方って、瑕疵のあるアイデアを消し込んで、残ったものを選ぶ方式だった」(不確実な案を消去する方式)
「アイデアがたくさん出ると選ぶのが大変なので、ブレストでは優秀なアイデアだけを出すべし」(数点の優秀案だけ出してもらい、そこから選ぶ方式)
・・・というような組織では、創造的なコンセプトを獲得することが上手く出来なくなります。(後者はもはやブレストでさえないですし。)
こういう組織においては、IDEAVoteを使うと「評価軸を決め、それに沿ってアイデアを評価していく」という基本所作を得ることができるようになります。
幾度か体験すると、だんだんと、創造的に絞る上での勘所がわかってきます。
また、絞り方が上手くなると、安心して、ブレストにおいて未成熟なアイデアも大量に提示することができるようになります。
・・・
こういう背景のツールが、Aさんの感じた「1位のアイデアへのピンとこなさ」への主な要因かと考えました。
もしかしたら全く違うかもしれません。
取り急ぎ、現時点での石井なりの回答として、お送りいたします。
今後ともよろしくお願いします。
石井力重
■ Aさん→石井 への メール
石井さん
お世話になっております、Aです。
コメントに丁寧に回答頂きありがとうございます。
回答頂いた内容について少し考えてみたのですが頂いた要因の
2)に起因しそうです。
多数決ともほぼイコールなのですが、一緒に決めたメンバーの価値観にかなり影響を受けた気がします。
あの場は私以外、大企業の**担当の方で年齢的にも**歳以上は上の先輩方だったと思います。
そこに、ベンチャーで新規事業を考えているものとの評価軸のギャップがあった気がします。
それは多数決という結果で現れるのですが。。。
そういう意味で、通常の企業研修などでの使い方で、一回IDEAVoteで判断した上で納得出来ない部分の価値観をすりあわせるという意味での活用にはとても価値があると思います。
(むしろ出てきたアイデアよりもそのほうが重要かもしれません)
とても貴重なコメントだと感じ、これについて、しばらく考えてみていました。
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2つの要因
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ピンとこない事には、2つの要因がありそうです。
どちらも、IDEAVoteというツールとその基本アクションに起因するものです。
1)モノゴトの全方位をカバーするような評価軸をたった8つ程度で表現したため、概念の分解能が荒い事。
2)チームとして採用する価値軸3つを「決定するプロセス」が、単に多数決で決めてしまうことに起因すること。
細かく述べます。
まず、教材の話を離れて、企業内の創造活動の指導の場面での話をします。
創造的にアイデアを収束させていく作業としては、プロセスの骨格は同じでも、もっとじっくりやります。
特に、「価値観軸(開発において、チームとして重視したい評価軸)」を選定するところは、じっくりとやります。
まず、各自が主張したい価値観軸を挙げあって、皆の価値観軸が場に出そろうようにします。
(なお、価値観軸をゼロから考えて提示することは、創造活動になじみのない人にとって負担が大きく、実際は”備考”に記したような感じになります。※)
次に、チームとしての価値観軸として、3つまでに絞ります。
(実際は、もう少しあってもいいのですが、多すぎると中庸なアイデアが選定される傾向が強くなります。出来るだけ3つ、多くても5つまでにしてもらいます。)
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”備考”: 自分が重視したい評価軸を挙げることは難しい
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創造活動に慣れていないと、挙げられて採用される評価軸は”ぼやっ”としたものになります。
だいたい、自社のための軸なのに、IDEAVoteの軸カードの表現ぐらいの大まかさになります。
まずは、それでよいとして、それらを用い、全アイデアの評価をしてもらいます。
そうすると、途中で気づきます。
「あれ、、、この評価軸じゃまずいな。。。うーん、なんというか、もっとこう・・・、初期の市場化がエネルギッシュに行くようなモノを選びたいんだよな。評価軸として、なんといえばいいのかはうまく言葉にはできないけれど」
といった具合に。
こうした、違和感をジャンプ台にして、本当に重視している評価軸に徐々に気が付いていきます。
全アイデアの評価をやってもらった後、軸やトップアイデア群について、納得できなかった点から話してもらい、ディスカッションして
再度「評価軸を挙げあう」→「議論して、皆が重視したいと考える評価軸を決める」ことをしてもらいます。
この議論は、かなり白熱します。そして、ずっと具体的になった評価軸が出ます。
時には、基本的な価値観があいいれず方向性がどうしてもばらけてしまうメンバーもいます。なぜその軸を重視したいのかという点を詳らかに話し合ってなお、あいいれない場合は、チームからメンバーが大量に抜けて、共感できるメンバーを増強する、という展開にもなります。場合によってはそれも良しとしています。
(経営学に出てくるGrowing painsの概念によると、ある程度具体的な経験を経たベンチャーチームは、具体的な方向性が表出しはじめ、語り始めた方向性は創業者メンバー間でも割れて、メンバーが一気に出て行って、残った社長を核に、再成長すると、されますが、これがプロジェクトチームレベルで起こるような感じです。)
(備考、終わり)
この備考を踏まえると、もう一つの疑問が展開します。
評価軸を”再度選ぶ”行為に関するものです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
評価軸の再設定は、活かしたいアイデアを念頭に、恣意的なものになる?
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全てのアイデアを見たうえで、新しい評価軸を提案するというのは、自分たちが推したいアイデアを合格させるための評価軸を設定しているような作業をしているようにも、感じられます。「この評価軸を採用するってことは、〇〇というアイデアを選ぶって、ことと、実質イコールだろ」と。
それは、一つの側面として正しいのですが、それを踏まえつつも、得られる大事なものがあります。
新たに設定する評価軸は、「まだそこにはないアイデア」が到来した時にも、チームのゆるがない判断指針として機能します。
アイデアは外からくるばかりではなく、発展の途中で、新しいいくつかのアイデアに分化していくこともあります。そういう時に機能する判断指針となります。
ただ単に、アイデアを全部見てベスト1を選ぶ、ということだけをした場合は、新しいアイデアの到来時に、混迷を極めます。(新しいアイデアが、全ての面で劣っている場合や、全ての面で勝っている場合は、すぐに判断が付きます。しかし、一部は勝っていて一部は劣っている場合は、判断できなくなります。多くの場合は、そういうケースとしてアイデアが到来します。)
・・・
以上です。
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味見としての、ツール
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開発部門のプロジェクトであれば、創造的にアイデアを収束させる方法としては、ここまで実践していきます。
ただ、それを、上司がいきなり説明しても、参画意欲が出ないし、意味のない混乱を生じるので、取り組みの初めに、味見体験として、IDEAVoteをやってもらいます。
すると、体験を通じて「ああ、何となくで評価軸を選んでしまうと、へぼいアイデアをトップとして選出してしまうのか」と気が付き、現実のチーム活動において、最初の段階(評価軸を挙げあう作業)から、かなり集中して取り組んでもらえます。
ただ、そこまでのシビアな場面にだけ向けて作ったわけではありませんで、
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創造仕事の作法を学ぶツール
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基本を、体験し、共有したいな、という職場に向けての道具、としても提供しています。
「今までの、ブレスト後のアイデアの決め方って、瑕疵のあるアイデアを消し込んで、残ったものを選ぶ方式だった」(不確実な案を消去する方式)
「アイデアがたくさん出ると選ぶのが大変なので、ブレストでは優秀なアイデアだけを出すべし」(数点の優秀案だけ出してもらい、そこから選ぶ方式)
・・・というような組織では、創造的なコンセプトを獲得することが上手く出来なくなります。(後者はもはやブレストでさえないですし。)
こういう組織においては、IDEAVoteを使うと「評価軸を決め、それに沿ってアイデアを評価していく」という基本所作を得ることができるようになります。
幾度か体験すると、だんだんと、創造的に絞る上での勘所がわかってきます。
また、絞り方が上手くなると、安心して、ブレストにおいて未成熟なアイデアも大量に提示することができるようになります。
・・・
こういう背景のツールが、Aさんの感じた「1位のアイデアへのピンとこなさ」への主な要因かと考えました。
もしかしたら全く違うかもしれません。
取り急ぎ、現時点での石井なりの回答として、お送りいたします。
今後ともよろしくお願いします。
石井力重
■ Aさん→石井 への メール
石井さん
お世話になっております、Aです。
コメントに丁寧に回答頂きありがとうございます。
回答頂いた内容について少し考えてみたのですが頂いた要因の
2)に起因しそうです。
多数決ともほぼイコールなのですが、一緒に決めたメンバーの価値観にかなり影響を受けた気がします。
あの場は私以外、大企業の**担当の方で年齢的にも**歳以上は上の先輩方だったと思います。
そこに、ベンチャーで新規事業を考えているものとの評価軸のギャップがあった気がします。
それは多数決という結果で現れるのですが。。。
そういう意味で、通常の企業研修などでの使い方で、一回IDEAVoteで判断した上で納得出来ない部分の価値観をすりあわせるという意味での活用にはとても価値があると思います。
(むしろ出てきたアイデアよりもそのほうが重要かもしれません)
メール転載ここまで
以上、IDEAVote(アイデアボート)についての、Q&Aでした。
以上、IDEAVote(アイデアボート)についての、Q&Aでした。
Information
IDEAVoteとは: