7月28日、アイデア創出の8時間講義 アンド ワークショップをしてきました。

まずは、前提について。

ASTEMでは毎年、高度人材育成のプログラム「京都D-School」が提供されています。
(スクールのサイトでは、オープニングセミナーの、小山龍介さんのビジネスモデルキャンバスの講義が聞けます。)
30名前後のビジネスマンが通年で通う、先進的な授業で構成されています。
僭越ながら私もその講義シリーズの一コマを担当しています。
進行としては、
のようにしました。
ブレストのルールをロールにした4色カード「Brainstorming Card」を使って7分間の「破壊ブレスト」をしました。
(補足:今回のように、前日に充分に、アイデア生成をチームで行っていて、かつ、チームビルディングがかなり進んでいる状態では、こういう「not Aを拡げる効果がある、破壊ブレスト」は有効ですが、逆に、初めてブレストに入る段階であれば、破壊ブレストは、とまどいが多いでしょう。日常課題をテーマにしたテーマでBrainstorming Cardを使ってください。)
1.午前のワーク
前日の高内先生の講義&ワークでかなり高度なアイデアが生成されていましたので、まず午前中は「Idea → Business Model +α」を実施しました。
(スクールのサイトでは、オープニングセミナーの、小山龍介さんのビジネスモデルキャンバスの講義が聞けます。)
アイデア発想法を主軸にした「アイデア創出U」という講義です。
私の講義のテーマも例年とはガラッと変え、
というものに。
Idea→ BM+α→ “Creative Jump”
10:30 あいさつ、進行説明(10)
10:40 Idea to BM+α(65)
説明(10)
キャンバス(10)
アトリビュート分析 (15+15)
価値要素採掘マップ(15)
13:00 Brush-up Tour(65)
14:10 ダウンロード(20)
ブレスト(30)
15:10 Creative Jump(15+30)
16:00 Refine&プレゼン(40+40)
17:20 ペアQ&Aワーク(15)
メッセージ(10)
以下、実施内容も織り交ぜて報告します。
0.イマジネーションの準備運動一言で言えば、アイデアをフレームワークに展開することで、アイデアを精緻化していくワークです。

普段は、他の方のフレームワークをアレンジして使うことはあまりしないのですが、京都D-schoolだけは別格で、ディレクター氏がプログラムの全体を通しての監修をしていて、私のパートはかなりいろんな先生がたの「フレームワーク」を連携して使いながら知識創造させていく、というものが求められたので、このようにしています。
一つ一つのワークの説明は省きますが、すこし「他の先生のフレームワークを使うためのオリジナルの工夫」をしたところ、クローズアップして紹介します。

アトリビュート分析、という、カスタマーセグメントを見つめる視力を上げるための秀逸な分析手法があります。
ビジネスモデルキャンバスのCSとVPを深くするためのとても強力なツールです。
通常参加者さんがアトリビュート分析の各枠の中に入れるものがなかなか思い浮かばない、とのことでしたので、前日にディレクター氏とざっとディスカッションして、発想を助けるツールを作り、ワークに用いました。
この補助ツールは、いきなり投入せず、まずは余計な道具無しに、アトリビュート分析をチームで10分間行っていただきました。理由は、”思考を掘り下げる効果のある道具というのは表面段階でやってもめんどくさく、もたもたしたものに感じる”からです。
やっていくうちに出しあぐねてくるので、そこで補助ツールの使い方を紹介して、8分間ほど1人でこの道具を使ってユーザの行動からアトリビュートとなるものを掘り出してもらいました。
(なお、作ったツールは2種類ありますが、同じ目的で異なるアプローチのツールですので、両方を説明しお好きな方で−−、としました。使われ方は半々ぐらいでした。)
その後、チームで10分間、アトリビュート分析を行ってもらいました。
その結果、ツールを用いた後のチーム作業で、沢山の要素を分析表に入れることができました。
そんな調子で、先行して行われた先生方の講義にあるフレームワークスを使って、アイデアをキャンバス&マップの上に展開し精緻化していきました。
2.午後のワーク(A)
午後からは、ブラッシュアップツアー、と名づけたワークを行いました。
行動形態的にはワールドカフェに似た、交互インタビューワークです。
まずは、100秒の雰囲気ビデオを。【!】大きな音が出ます。
3.午後のパート(B)
皆が顧客から聞いてきたことを持ち寄り、情報をダウンロードしていきます。
その後、それを踏まえて、もともとの案をブラッシュアップしていきます。具体的には、新しい情報をえてのブレストと、フレームワークへの収束です。

なお、ポストイットは、
赤・・・昨日のアイデアをフレームワークに展開する際の要素
黄・・・ブラッシュアップツアーで顧客役から得てきた要素(と、ダウンロードで書きだしたポストイット)
緑・・・ダウンロードの後のブレストで出てきた要素
青・・・(この後の、クリエイティブ・ジャンプのワークで、でてきた要素)
という風に、時間変化がわかるようにしました。(暖色から寒色の順に)
これもディレクター氏のアイデアだったのですが、これは効果的でした。時間遷移が一目瞭然で分かります。グループに発表をしてもらう時にも、”キャンバスの中に置かれている色が多い箇所”から、ワークの重点箇所がうっすらと見え、発表者も説明がスムーズでした。
4.午後のワーク(C)
このパートは、アイデア創出の講義としての腕の見せ所、ということで、最後にもうひと押し、創造技法を使わせてもらいました。
大きく選択肢を広げるよう、より曖昧性の高いような技法を用いて、ここまで精緻化してきたプランに、意外な着想をもたらせるようにしました。
手法としては、現代の創造技法のエキスパートであるマイケル・マハルコの『アイデア・バイブル』に出てくる、抽象性の高い記号群を用いた、内省と連想をベースにした手法です。
マイケルマハルコは、抽象性の高い記号として、具体的には、ヒエログリフ(ヒエログラフ)を同著の中で用います。
なかなか、自分ひとりでやってみようとするのは、ハードルの高い玄人向けの方法なのですが、創造工学的な見地からみて、この抽象性の高い記号群をもちいる曖昧な連想には、多様性の担保として良い効果があるだろうと分かります。
認知的なものにもう少し踏み込んで解釈を試みてみるならば、謎の記号群の後、閉眼し内省するようなワークステップが、Mind Wanderingを誘発するような思考処理の構造になっていて興味深い技法です。
やってみると、大きくアイデアをジャンプさせることができることがあります。ただし、多様なアイデアを生み出す際に、ジャンプ量の大きい技法ほど、出来たりできなかったりするもので、この技法は、やりにくい人にはやりにくいだろうことも含めて、玄人向けの技法、ではあるのですが。

(紹介用のサンプルとして、私も一緒に発想をしてみました。そのメモです。)
なお、このワーク部分は、この秋からの参加者さんのフィールドワーク&ブレスト作業では要らないワークなので、認知上、切り離してもらえるように、エクストラワーク、という形で紹介しました。
設計上の可能性としては、もっと前の段階、例えば、午前の冒頭に入れても良いかもしれません。そうしなかったのは学習面での懸念点を考慮してのことです。
本日の講義は、アイデアをフレームワークに落とし込む(アイデアを、精緻化させていく)ということが、メインです。サブは、インタビューワークの模擬とそれを用いた発散収束チーム作業です。冒頭に持ってきたものが認知上、強く残りますので、その点に配慮してこういう構成にしました。
5.Q&Aとメッセージ

会場からたくさんの質問をいただいて、それに関する情報をホワイトボードで解説させてもらいました。
この辺が本来の私のメインコンテンツとばかりに活き活き回答を。
特に、学術的に確実に言えることばかりではない、新しい仮説や多くの人々の所作に見られる経験則のような、まだ未検証のものも含めて、未踏の辺縁にある情報を、シェアしていきます。
そして、最後のメッセージ。

社外に、あるいは、社内に、アイデアを打ち返し合える友人が要る事って、創造的努力を突き進んでいくうえでとても重要なんです。
京都D-Schoolに来た同期生は、そういう友人になる可能性がとても多い相手です。ぜひ、知識学習、知識創造だけでなく、創造力に共振し輻射熱を投げ返してくれるような関係を築いて下さい、と。
・・・
余談:
それにしても、今回のD-Schoolの講義設計は、本当に難産でした。
春先から、いや、昨年の講義の時から、京都に何度も立ち寄り、ディレクターのS氏と何度もディスカッションを重ねてきました。
そして先行する講義内容の知識体系を学んで自分のものにしたうえで、こういう、ジャンクションのような講義を設計する、という作業は、なかなか普段はできない仕事なので、学びも多く得られました。
先行する講義内容のフレームワークとしては、ビジネスモデルキャンバス、大江先生のアトリビュート分析、小阪裕司先生の価値要素採掘マップ、エクストラワークの部分は、かとうまさはるさんがナビゲータをされた本、アイデア・バイブルを、引用させていただきました。ありがとうございます。
また、ディレクター(とはご本人は名乗らないものの、このスクールの講師アサインと講義の全体構想をしている)Sさんには、幾度にわたり、アドバイスをいただきました。ありがとうございました。
講義を進めていくうちに、ポストイットの色の指定が、配布したハンドアウトとは変わっていきましたが、こちらは、講義が終わった段階のスライドなので、全ての投影内容を正確に反映しています。
Dschool2013_001_現地更新版2.pdf
なお、他の先生方の著作物を含んでいるので、一般配布できないため、パスワードをかけています
パスワードは、石井までおたずねください。
講義資料のメールアドレス、もしくは、石井のフェイスブックのDMまで。


(情報に配慮して画像処理してあります)

チームのサイズが7人と大きかったので、インタビューワークに向く集団サイズになるように、ちょっとだけ複雑な手続きを入れていますが、このワークの本質は単純です。一言で言えば、他家受粉スタイルで、知識創造を行うショートセッションを幾度か繰り返していく、というもの。

このワークは、短時間で、顧客候補層にビジネスアイデアを提示してフィードバックをもらう、しかも、顧客の厳しいコメントにさらされて、というワークをするので、動画のように、熱心に説明したり、顧客の言葉を出来るだけ多く持って帰ろうという感じで傾聴したりしています。


このワークは、短時間で、顧客候補層にビジネスアイデアを提示してフィードバックをもらう、しかも、顧客の厳しいコメントにさらされて、というワークをするので、動画のように、熱心に説明したり、顧客の言葉を出来るだけ多く持って帰ろうという感じで傾聴したりしています。

この午後のワークAとBは、この秋から冬にかけて、参加者さんが街に出て行う現地インタビュー・ワークの模擬訓練としての意味合いもありますので、一層熱心に実施されていた面もあったようです。
今回のワークの設計は、午前中は、プログラムの前半の複数の流れを合流的に受けとめての着地点であり、午後はプログラムの後半への流れをスムーズに流すための助走であり、今日のワークは、いわばジャンクション、となるように構成にしておきました。
黄・・・ブラッシュアップツアーで顧客役から得てきた要素(と、ダウンロードで書きだしたポストイット)
緑・・・ダウンロードの後のブレストで出てきた要素
青・・・(この後の、クリエイティブ・ジャンプのワークで、でてきた要素)

(紹介用のサンプルとして、私も一緒に発想をしてみました。そのメモです。)


社外に、あるいは、社内に、アイデアを打ち返し合える友人が要る事って、創造的努力を突き進んでいくうえでとても重要なんです。
Information
追記:
今年の参加者の方に限定して、フル・スライドを配布します。
今年の参加者の方に限定して、フル・スライドを配布します。
講義資料のメールアドレス、もしくは、石井のフェイスブックのDMまで。