2013年07月20日

【ご案内】『ゲーム感覚で楽しくアイデアを出す道具を体験してみよう』(7月21日、東北大:サイエンス・デー)

アイデアプラントは、今年も、サイエンスデーに出展します。

今年のテーマは、『ゲーム感覚で楽しくアイデアを出す道具を体験してみよう』です。

アイデアプラントは、通常は、大人向けの、ブレインストーミングのツールを作っていますが、今回は、子ども版を作りました。

それを用いた、子供向けアイデア・ワークショップを、3種類、提供します。

費用は無料です。

ご興味のある方は、ぜひおいでください。

追記:2013年7月20日 22時

第1回目と第2回目は予約満席になっています。
現時点では、第三回目は、まだ予約が可能です。


scienceday2013_ideaplant_1koma.jpg

3種類のワークショップの詳細は、以下の通りです。






【9:00〜9:50】

@家の中の困りごとから工夫アイデアを考え出そう 


ideaplant_kid_ideawork.jpg


  • 対象:小学4年生以上(親子で参加してください。)
  • 人数:16名
  • 時間:50分


お父さん/お母さんが、「工夫発想のガイドシート」や「工夫発想のヒントカード」を使って、
お子さんのファシリテータ(進行役)になり、
工夫アイデアを生み出すプロセスを、楽しく体験できます。

(小学生は親御さんや保護者の方と参加してください。
 中学生以上の方は、1人でも参加できます。

出来上がるものは、アイデアを絵と文章で描いた「アイデアスケッチ」です。

夏休みの自由研究として、工夫工作を選択される方には、良いネタとなるでしょう。
自由研究(工作)で、お金をかけずに、アイデアを形にする場合のアドバイスも紹介します。

※このワークは、工夫発想の題材として「家の中の困り事」を探すワークがあります。
 大人の方が同席されない場合は、「家の中の困りごと」を「5つ」、紙に書き出して、持参してください。

※社会人の方の見学・参加も可能です。
  企画の本質的なプロセスを、ミニマムな形で知ることができます。







【10:30〜11:00】

Aアイデアトランプでいろんなアイデアを出そう

scienceday2013_ideaplant_2koma.jpg

  • 対象:小学3年生以上
  • 人数:16名
  • 時間:30分


アイデアのヒントが書かれた「アイデアトランプ」で、遊びながら自然と創造力を育みます。

発想しやすくする雰囲気を作るゲームルールがあり、アイデア出しが苦手なお子さんでも、楽しく発想をしていくことができます。

自分の番の制限時間内に、たくさんカードを得ようとすることで、次々とアイデアを出す力が鍛えられます。

また、テーブルに座った他の人たちと競うため、知らず知らずのうちに、多様な発想を学び、いつもより、柔軟に考えていくことができるようになります。

お題は「朝早く起きるにはどうすればいいか」「勉強を楽しくするにはどうすればいいか」という身近な問題をテーマに取り上げますので、出てくるアイデアも、普段の生活に役に立ちます。

※大人の方も参加、お子さんの補助役として同席できます。







【11:30〜12:00】

B描いた絵から、連想カードを当てよう

scienceday2013_ideaplant_3koma.jpg

  • 対象:小学生2年生以上
  • 人数:16名
  • 時間:30分


目をつぶり、「連想力を補助する4種のカード」をランダムに引いて仲間に見せます。

そのカードに従って他の人に絵を描いてもらいます。

30秒後、自分が引いたカードは、4種のうちの、どのカードだったかを、皆の書いた絵をみて推理して当てます。

連想したものが意外な絵として描かれていたり、短時間で描いた絵はいろんな解釈にもつながり、大人でも、小さいお子さんも、楽しく遊ぶことができます。

連想力は、想像力の中核的な力であり、Creativeな想像力は、創造力の基礎となるものです。このワークは連想力を楽しく鍛えること通じて、創造力を育てることを狙いとしています。

※大人の方も、対等なプレイヤーとして、参加できます。







会場:

東北大学 川内キャンパス 
 (20世紀のころは”教養部””キャンパス)

講義棟A棟 403教室 
(エレベータで、4階へ。エレベータを出てすぐです。)



この写真のちょうど中心が、A棟403です。






余談です:

この403教室。

同じフロアの教室は、面白い講座が目白押しです。

特に、すごく面白そうなのが
  • SCSKのCAMP(乾電池式コンピュータで動くおもちゃ)

他にも、


などなど。

それから、末席に、

という構成です。


出展者側にいるので、私は参加できませんが、どれも大人にとっても面白そうなプログラムです。

多くのプログラムが、WEB申込みを必要としています。

安全の為に、申込みをしておきたい!という方は、「サイエンスデー 優先予約受付ページ」から、お申し込みください。

(会員登録が必要で、その先の申込方法がちょっと複雑な感じです。)

(7/11現在の時点で、満席の講座も結構、あります。)




お待ちしております!


アイデアプラントも、WEB申込制になっていますが、各回のワークショップの開始時点で空きがあれば入れますので、ご興味あればぜひおいでください。

見学は随時OKです。

内容は、子供向けですが、大人が参加しても、充分に創造技法のエッセンスを体感し、学びとなるように作ってありますので、「子どもは、2時間の講座に入ってしまって暇だなー」という時も、気軽に遊びに来てください。

道具に余裕があれば、飛び入り参加もいつものごとく大歓迎です。

  
posted by 石井力重 at 22:10 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)

2013年07月17日

takuramさんを訪問してきました。

先日ブログにも書いた、takramさん。

今日(7月17日)、同社を、一緒に何かを取組んでいる方々と訪問してきました。(それぞれは別の取り組みの方なので、現地集合で、初めめてお引き合わせした方どうしです。)

omotesandou05.jpg

表参道の出口B2を出てすぐのところにあるAOの裏へまわります。

omotesandou01.jpg

こんな好立地にすごい!と思いつつ、ビル二階へ。ちなみに住所をググルと、隣の民家に旗が立つのでもしや古民家てきなテイストの?と思いましたがそうではなく、不思議な住所構造をしているそうで、ビルの一階と二階で住所番地が違うのだそうです。余談が過ぎました。

omotesandou02.jpg

広くて、いろんなデザイン上の考慮がなされた空間。雰囲気としては、最近のクリエイティブオフィスとして紹介される企業群のような感じですが、建築も仕事の範疇ということで、自分たちの作品としてのこの空間だそうで、一つ一つ聞いて回るだけでも、いろんな発想が生まれそうな、いい空間です。

今までに言ったことのある最も似ているオフィスは、K社の自由が丘オフィスかなと思います。K社もクリエイティブベンチャーでかつ建築家関係の仕事もされていたので、自社の事業の一環にクリエイティブと建築の両方が入っている企業の共通した空気なのだろうか、とも思っていました。

omotesandou03.jpg

動かせるガラスのしきい壁は透過型ホワイトボードとしても使える、とのことで、ここでいろんなことを書いて話し合いました。

向こうが透過できる、というのは、心理面にもまた違った影響があるように感じました。多様な情報が無意識に入ってくること、書いた情報のフォーカスをぼかして曖昧に認知するようになること。などなど。絶対的にそこで奥行きがストップする白い面、とはまた、ちがうなぁと。

余談ですがTRIZの創始者、ゲンリッヒ・アルトシュラーがエンジニア(の学生?)に講義をしている貴重なビデオというのがあるのですがその中でアルトシュラーは、ガラスボードの前でしゃべり、登壇者−ガラスボード−聞き手、という構図で話します。聞き手からのカメラは、描かれた概念図の奥にアルトシュラーがいるのでとても面白い感じです。余談終わり。

書きながら、「これは空間に概念を固定するようなそんな感じの道具だなぁ」と実感していました。話し言葉はその瞬間から霧散しますが、動かせるガラス面は思考をその空間に置いておける、そんな感じが。

omotesandou04.jpg

書いて話した内容とは別に、マックで渡邉さんがお話しいただいた、リサーチ&インタビューのお話し、ワークショップの設計思想(といいますか、知を生み出すのデザインの仕方に関する視線の取り方)を伺いました。とても興味深い内容で、唸ってしまいます。ただ、それは書くわけにはいかないので、石井なりの「創造する企業」研究のフォルダに、非公開事例として、研究をインスパイアしてくれる材料としてだけ使わせてもらいます。

(訪問したことすらかけない訪問も年間で結構あります。旅ばっかりしているように見えるのは、そういう訪問はどこにも何も書かないし言えないから、なんのですが、そういう時間は、創造する集団を観察する上での概念の分解能を高めてくれています。)

前回に引き続き、渡邉さんにはお世話になりっぱなしなので、何か恩返しをしなければ、と思うのですが、今のところは深く御礼を述べことしかできません。今回も貴重なお時間とお話をいただきまして本当にありがとうございました。
posted by 石井力重 at 23:58 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)

2013年07月16日

ブレインストーミングの基礎的なコンセプト(ブレストの根底にあるもの)

この三連休は、没頭して、研修スライドを作っていました。

と、いうと、商売行動に明け暮れている感がありますが、私の気持ちの中心にあるのは、「創造工学、特に、ブレインストーミングのプロセスについての研究をしていた時代に得られた知見を噛み砕いて、如何に短い時間で企業さんや公開ワークショップのミニレクチャーの場で提供できるか」という命題に向かって、コンテンツをブラッシュアップする日々を送っていました、というのが、より心象風景を正しく説明する表現です。

今まで、ブレストの本質を語るスライドは、「72枚」ありました。ごく最初のころは、「4枚」だったものが、です。

それらは「4枚スライド+ホワイトボード板書」という講義が徐々に発展してそうなったものです。研修に出れなかった人にも伝えたい、という方(多くは研修企画部さんなど)から依頼を受けて、板書の内容(ストーリーっぽくしゃべること)を、スライドにしてしてきました。

それらは重複や整合性を削りながら、どんどん補われ、最近では、板書をせずにスライドだけで、話しきれるようになりました。(特に、大手企業さんの場合、東京本社会場で話すことを、他のサイトでも同時中継をするため、ホワイトボードを使えない環境制約があったりしたことも大きいです。)

そして、最近、思っていました。

「なんだか、臨機応変さが鈍ったな」と。

現在のスライドの講義が毎年発展していて、それを5年にわたり聞いて下さっているあるクリエーターの先生は「石井さんのブレストの講義は、至芸、という段階に来ましたね。」とおっしゃっていただきました。
それは、ものすごく励みになるお言葉で、うれしいお言葉でした。

ただ、どこのレイヤーに向かってしゃべる場合でも、フルセットのスライドを提示する(しようとする)自分がいて、裸の感性をもっている内なる自分が、その行動をいさめていました。「楽をしようだなんて思うな。」「カジュアルに食べたいお客さんにフルコースの押し込みをする傲慢さに無自覚になるなかれ」と。

そこで、ある種、行きついたと思ったフルセットのスライドですが、大幅に削りました。

数で言えば、「62枚」のスライドを、「8枚」にけずりました。(13%化)

もっとも中心的なコンセプトを示す図を2〜4つだけピックアップし、それを「話のネタスライド」にしました。残りは板書でストーリ的に語る部分なので、えいっと大幅に削り込みました。

brainstorming_basic_consept.png

前後のスライドも写り込んでいますが、このうちの8枚が、その圧縮後の姿です。

講義は、「一枚のネタスライド」で中心的な概念を示しつつ、それをネタに、ホワイトボードに展開していきます。

板書、といっても、お恥ずかしながら非常に悪筆(かつ、次々と書き混むような図ばかりを書くので板書をノートテイクされるのがつらいスタイル)なので、その相補的なコンテンツとして「別冊資料」をつくりました。内容的には、従来のスライドを、もっと、印刷物としてみて読みやすいように、コンテンツを調整しました。


魂のこもる講義をしたい、といつも思っています。自分が楽になること、再現性が高い事、を目指して展開せず、その一瞬一瞬の講義・ワークショップに、生きた言葉で伝えられるように。

今回の大幅なコンテンツ変更(板書+別冊資料スタイル化)は、効率、という点からは、悪化の一途なのでしょう。

ただ、もうすぐ40になる自分としては、体力が落ちていくとしても、なお一層、情熱まで含めて伝えられる講義でありたい、と思うのです。

苦しくて手を抜きたいと思う時、いつも、思い出します。私が理想とする「尊敬される企業」の心の中のモデル、中村ブレイスさんを訪問した時のことを。

彼らの仕事は本当に丁寧で愛情のこもった仕事をしていました。

その時に、打たれるように強く感じたのは

「顧客への圧倒的な愛があり、その愛が製品のフォルムに宿る。そういう仕事をされている。」と。

中村俊郎さんを訪ねて、石見銀山まで伺ったのは、もうずいぶん昔です。でも、いまでも、その時のその場の空気は、僕に力をくれます。

  • 自分の仕事は、顧客への圧倒的な愛があるだろうか。
  • お客さんへの愛が製品のフォルムに宿る、そんな仕事をしているだろうか。
    (製品=作品や、講義研修スライドや、ワークショップ、あるいは、このブログに綴る言葉も含め。)

話しが外れて、思想の根源の所に及びましたが、そういうことを考えて、膨大に無駄に努力をしながら、毎日没頭しています。

効率は効率の上手い人に任せて、アイデアプラントは、自らの使命と決めた道を、愚直にひたすらに行こう、と思います。


タイトルに戻して、まとめますと、「ブレインストーミングのルール、その根底にあるもの」というのは、創造的な心理様式を意図的に引き出すテクニックです。これを私は「創造力のガイドレール」と呼んでいます。

創造的になれないな、という日は、どんなクリエーターにもあります。多くの発明家やクリエータの手記などに触れてもその記述が見当たらないことの方が珍しいほどに、そうです。

そういう時に、「自分の心を創造的な方に、ぐんぐん引っ張っていけたらいいのになぁ」という願いをかなえるノウハウが、Aオズボーンのブレストを考案していく前後の記述にあります。

ブレストの4つのルール、というのはそういう大きなコンセプトの氷山の水面上5%が結実したものです。
氷山の水面下95%をしることは、スランプの時期を脱出させてくる良い処方箋となります。

そういうことを、もっともっと、カジュアルに、物語っぽく、あるいは、物理モデルっぽく、多くの場で話していきたいと思います。

そのためのコンテンツを、磨いて過ごす連休でした。
 

posted by 石井力重 at 00:13 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)

2013年07月09日

【Q&A】IDEAVoteで1位になったアイデアが感情的にピンとこない

創造的リーダを助ける道具を作って、その道具を用いたワークショップも実施していますが、時折、示唆深いご質問や感想をいただくことがあります。

Aさんという、面白い事業を展開れている、優秀な経営者の方に、以前「IDEAVote」を用いたワークショップにご参加いただきました。


IDEAVote_.jpg


そのときの体験ついて、ご質問をいただきました。
示唆深いご質問でしたので、ご本人に了解を得て、以下、転載します。



■ 石井→Aさんへ の メール

Aさん

ご無沙汰しております。
石井力重です。

某協会さんから、アンケートの詳細をもらいました。(正確には、少し前に、もらっていました。)

その中でAさんから

「IDEAVoteで1位になったアイデアが感情的にピンとこない場合、というのは何なのか気になりました」

というコメントをいただいていました。

とても貴重なコメントだと感じ、これについて、しばらく考えてみていました。

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 2つの要因
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ピンとこない事には、2つの要因がありそうです。

どちらも、IDEAVoteというツールとその基本アクションに起因するものです。

1)モノゴトの全方位をカバーするような評価軸をたった8つ程度で表現したため、概念の分解能が荒い事。
2)チームとして採用する価値軸3つを「決定するプロセス」が、単に多数決で決めてしまうことに起因すること。


細かく述べます。

まず、教材の話を離れて、企業内の創造活動の指導の場面での話をします。

創造的にアイデアを収束させていく作業としては、プロセスの骨格は同じでも、もっとじっくりやります。

特に、「価値観軸(開発において、チームとして重視したい評価軸)」を選定するところは、じっくりとやります。

まず、各自が主張したい価値観軸を挙げあって、皆の価値観軸が場に出そろうようにします。

(なお、価値観軸をゼロから考えて提示することは、創造活動になじみのない人にとって負担が大きく、実際は”備考”に記したような感じになります。※)

次に、チームとしての価値観軸として、3つまでに絞ります。

(実際は、もう少しあってもいいのですが、多すぎると中庸なアイデアが選定される傾向が強くなります。出来るだけ3つ、多くても5つまでにしてもらいます。)


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 ”備考”: 自分が重視したい評価軸を挙げることは難しい
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創造活動に慣れていないと、挙げられて採用される評価軸は”ぼやっ”としたものになります。

だいたい、自社のための軸なのに、IDEAVoteの軸カードの表現ぐらいの大まかさになります。

まずは、それでよいとして、それらを用い、全アイデアの評価をしてもらいます。

そうすると、途中で気づきます。

「あれ、、、この評価軸じゃまずいな。。。うーん、なんというか、もっとこう・・・、初期の市場化がエネルギッシュに行くようなモノを選びたいんだよな。評価軸として、なんといえばいいのかはうまく言葉にはできないけれど」

といった具合に。

こうした、違和感をジャンプ台にして、本当に重視している評価軸に徐々に気が付いていきます。

全アイデアの評価をやってもらった後、軸やトップアイデア群について、納得できなかった点から話してもらい、ディスカッションして
再度「評価軸を挙げあう」→「議論して、皆が重視したいと考える評価軸を決める」ことをしてもらいます。

この議論は、かなり白熱します。そして、ずっと具体的になった評価軸が出ます。

時には、基本的な価値観があいいれず方向性がどうしてもばらけてしまうメンバーもいます。なぜその軸を重視したいのかという点を詳らかに話し合ってなお、あいいれない場合は、チームからメンバーが大量に抜けて、共感できるメンバーを増強する、という展開にもなります。場合によってはそれも良しとしています。

(経営学に出てくるGrowing painsの概念によると、ある程度具体的な経験を経たベンチャーチームは、具体的な方向性が表出しはじめ、語り始めた方向性は創業者メンバー間でも割れて、メンバーが一気に出て行って、残った社長を核に、再成長すると、されますが、これがプロジェクトチームレベルで起こるような感じです。)

(備考、終わり)


この備考を踏まえると、もう一つの疑問が展開します。

評価軸を”再度選ぶ”行為に関するものです。

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 評価軸の再設定は、活かしたいアイデアを念頭に、恣意的なものになる?
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全てのアイデアを見たうえで、新しい評価軸を提案するというのは、自分たちが推したいアイデアを合格させるための評価軸を設定しているような作業をしているようにも、感じられます。「この評価軸を採用するってことは、〇〇というアイデアを選ぶって、ことと、実質イコールだろ」と。

それは、一つの側面として正しいのですが、それを踏まえつつも、得られる大事なものがあります。

新たに設定する評価軸は、「まだそこにはないアイデア」が到来した時にも、チームのゆるがない判断指針として機能します。

アイデアは外からくるばかりではなく、発展の途中で、新しいいくつかのアイデアに分化していくこともあります。そういう時に機能する判断指針となります。

ただ単に、アイデアを全部見てベスト1を選ぶ、ということだけをした場合は、新しいアイデアの到来時に、混迷を極めます。(新しいアイデアが、全ての面で劣っている場合や、全ての面で勝っている場合は、すぐに判断が付きます。しかし、一部は勝っていて一部は劣っている場合は、判断できなくなります。多くの場合は、そういうケースとしてアイデアが到来します。)

・・・

以上です。

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 味見としての、ツール
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開発部門のプロジェクトであれば、創造的にアイデアを収束させる方法としては、ここまで実践していきます。

ただ、それを、上司がいきなり説明しても、参画意欲が出ないし、意味のない混乱を生じるので、取り組みの初めに、味見体験として、IDEAVoteをやってもらいます。

すると、体験を通じて「ああ、何となくで評価軸を選んでしまうと、へぼいアイデアをトップとして選出してしまうのか」と気が付き、現実のチーム活動において、最初の段階(評価軸を挙げあう作業)から、かなり集中して取り組んでもらえます。


ただ、そこまでのシビアな場面にだけ向けて作ったわけではありませんで、

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 創造仕事の作法を学ぶツール
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基本を、体験し、共有したいな、という職場に向けての道具、としても提供しています。

「今までの、ブレスト後のアイデアの決め方って、瑕疵のあるアイデアを消し込んで、残ったものを選ぶ方式だった」(不確実な案を消去する方式)
「アイデアがたくさん出ると選ぶのが大変なので、ブレストでは優秀なアイデアだけを出すべし」(数点の優秀案だけ出してもらい、そこから選ぶ方式)

・・・というような組織では、創造的なコンセプトを獲得することが上手く出来なくなります。(後者はもはやブレストでさえないですし。)

こういう組織においては、IDEAVoteを使うと「評価軸を決め、それに沿ってアイデアを評価していく」という基本所作を得ることができるようになります。

幾度か体験すると、だんだんと、創造的に絞る上での勘所がわかってきます。

また、絞り方が上手くなると、安心して、ブレストにおいて未成熟なアイデアも大量に提示することができるようになります。

・・・

こういう背景のツールが、Aさんの感じた「1位のアイデアへのピンとこなさ」への主な要因かと考えました。

もしかしたら全く違うかもしれません。

取り急ぎ、現時点での石井なりの回答として、お送りいたします。

今後ともよろしくお願いします。

石井力重


■ Aさん→石井 への メール

石井さん

お世話になっております、Aです。
コメントに丁寧に回答頂きありがとうございます。

回答頂いた内容について少し考えてみたのですが頂いた要因の
2)に起因しそうです。

多数決ともほぼイコールなのですが、一緒に決めたメンバーの価値観にかなり影響を受けた気がします。

あの場は私以外、大企業の**担当の方で年齢的にも**歳以上は上の先輩方だったと思います。
そこに、ベンチャーで新規事業を考えているものとの評価軸のギャップがあった気がします。
それは多数決という結果で現れるのですが。。。

そういう意味で、通常の企業研修などでの使い方で、一回IDEAVoteで判断した上で納得出来ない部分の価値観をすりあわせるという意味での活用にはとても価値があると思います。

(むしろ出てきたアイデアよりもそのほうが重要かもしれません)

メール転載ここまで
 


以上、IDEAVote(アイデアボート)についての、Q&Aでした。

このツールをお持ちの方にとって、より良い活用のための情報提供となれれば、幸いです。




Information

IDEAVoteとは:

大量のアイデアから、優秀な案を抽出していく作業を学ぶテーブルゲーム(正しくは、テーブルゲーム風の教育ツール)です。


posted by 石井力重 at 20:18 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)

2013年07月06日

韓国のTRIZカンファレンスに、カード型のツールを進呈しました。

韓国・ソウルで7月9日〜11日に開催される「THE 4th Global TRIZ Conference 2013」に、アイデアプラント&宮城TRIZ研究会から、「Idea Pop-up Card」(智慧カードの英語版)を贈呈しました。

Idea_pop-up_card_as_souvenir_of_Korean_conference.png

今回のカンファレンスは、昨年の韓国アイデアワークショップの実施でお世話になった、心理学の朴教授が中心者として展開されています。

また、このカンファレンスでは、日本のTRIZの第一人者、中川徹先生も招待講演でお話をされるそうです。

中川先生には、智慧カードの英語版を生み出す上でも大きなご支援を賜りました。5年前、私たちの作った日本語フレーズをみた中川先生がボランティアで英語フレーズを作ってくだったのでした。

そうしたご縁から、せめてものアシストとして、カードセットを贈呈させていただきました。数が人数分には満たないと思いますが、世界中から集まるCreativityの専門家の方々に少しでも喜んでもらえたらば幸甚です。

追記:

それにしても、大量のスーベニアを外国に提供するのは、少量の教材を輸出するのに比べて、いかに大変か、ということを今回は、我々は費用と時間をかけて実体験しました。これは今後、海外展開の本格化を視野に入れて、事業活動をする上での大きな学びでした。最終的には、こうすればいいのか、というノウハウと法律知識が、身に付きました。



Information


posted by 石井力重 at 17:09 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)

2013年07月03日

開発会議で仙台中を走り回る時期

7月に入り、開発会議を各所で行っています。

今日の午前中もパートナー企業で開発会議でした。

私の作る作品は、フェーズによって、活動の雰囲気が違います。


活動のフェーズ

  • 「揺籃期」には、石井1人で孤独な環境を作り仕事をします。創造的孤独、というものが必要だと、古今東西の創作者の手記にはありますが、私もその通りだと思い、自然とそうなります。
  • 次に、コンセプトの輪郭が立体感を持ち始めたら、試作して、テストプレイをあちこちでします。動く時期の第一期です。
  • そして、ブラッシュアップを進めます。ここは創造的孤独とまではいきませんが、短いデスクワークがあります。実際は、テスト、デスク、を行ったり来たりです。
  • さて、そこまで来るとようやく「開発ネタ」になります。もっとゆるい段階で、開発ネタにすることもありますが、作品の持つ深度の深まりは、ここまでの練り上げに寄っている、ともいえるかもしれません。卵の段階で鍛えられている開発ネタになるかどうか。


ようやくここまで来ると、「開発会議」に入ります。それが今です。


アイデアプラント流の流動的な組織モデル

開発会議、といっても、いろんなセクション、職種の人が一堂に会してやるのではなく、
  • 石井とコンセプトデザインの専門家、
  • 石井と研究評価の専門家、
  • 石井と実働(制作・製造・販売戦略・ショップ)部門、

という形に、日を変えて、私が色んな会議をして回る、独特のスタイルをとります。

理由は、「アイデアプラント」という存在は、メンバーが社外にいて、いろんな仕事をしている人々で形成されているからです。アイデアプラントのパートナー(或いは、メンバー)と、(代表の私が勝手に)認定している方々が国内に点在していて、プロジェクトごとに最適なメンバーに打診、相談、実行をしている、そんな形だからです。

時には毛色の違う作品も出来上がりますが、そういう多様性と資源流動性を考慮した組織形態が背景にあります。

プロジェクトメンバー全員が一か所にいて、いっぺんに打ち合わせができることにも憧れますが、自分の職能の領域でないタイミングでの会議に呼ばれ続ける人のことを考えると、私は、そういうスタイルは人使いの荒いやり方に思えて、できません。もちろん、コミュニケーションが円滑にいくように、必要性のちょっと外の領域まで、情報のやり取りを担保するべく、動く時期というのはかなりその辺にも心を配ります。


ここからが、大切

フェーズを積み重ねて、開発会議のステージへたどりつきました。

今回の開発ネタは、その前段があります。今回踏襲しているコンセプトを掲げたある別の開発ネタがあり、そのアイテム自体は、没になりました。(正しくは、別の形で誕生しつつあるネタ)

その後、そのコンセプトを具現化するべく作り上げたアイテムが、いま、こうして形になろうとしているものです。

これまでの作品シリーズをふりかってみても、今回のものは、新規性、といいますか、開発要素、の大きいものです。

ですので、これからが大切。いろんな「ものづくり」のステージを経ていきます。


打ち手を増やしておくのも代表の仕事

開発的活動に資金もたくさん必要になることを見越して、今日の午後は、友人の機関で公的支援の制度の活用可能性についても相談してきました。

書類仕事が増えるのは望ましくない(私の苦手)作業なのですが、事業成長の起動を駆け上がっていくために、出来るかもしれない打ち手は、複数(使わなかったとしても)持っておくこと、そういうことも、闇の中から新しいものを取り出す人には、必要なことだと考え、鋭意、取り組んでいます。






Information (とても、仙台のローカルな。)

午前中の打ち合わせは、マグネットデザインさん。

ここの創業者のメンバーとは、私が大学院に戻った2005年ごろ以来の付き合いです。今(2013年の7月上旬の今)だけ、人材募集を行っているそうです。多分、採用は必要な時だけ行うスタイルのようで、募集内容に合致してご興味ある方は、ぜひ。

ちなみに、アイデアプラントの通町オフィス、というのは、同社の中に存在していますので、アイデアプラントの製品を見て買いたい、と、ふらっとやってきた方は、マグネットデザインさんの中に入っていく感じになります。

午後の打ち合わせは、一般社団法人MAKOTOさん。

この組織の代表、竹井さんは、東北大の大学院のころからの知り合いで、彼も私も共にNEDOのフェローを拝命していたり、と、信頼の深い付き合いをしています。震災後に、彼は東北のベンチャーキャピタルを辞し、自分で新しいことに挑戦する人を支援する一般社団法人を作り、復興系クラウドファンディングを立ち上げたりしています。cf. TEDxに登壇した竹井さん )。

東北の大志ある創業者、ベンチャー企業であれば、公的支援制度の活用についてフットワーク軽く相談に乗ってくれると思いますので、個人事業主でバリバリやっているんだけど、成長のための支援制度使えないかなぁ、という時には、MAKOTOとNAViSでやっているコワーキング・スペースcocolinの扉を叩いてみるといいかもしれません。
 
 


そんな感じで、日々展開しています。

7月(中旬)〜8月(下旬)は、東京、京都、岐阜、と各地行脚のシーズンですが、それが始まるまでのもうしばらくの間、作品を「つくる」を、全力で進めていきます。
 
(数か月先でしょうけれど、)作品(といいますか製品)が、出来上がれば、またこのブログで、報告します。
 

posted by 石井力重 at 19:51 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)

2013年06月30日

takram 渡邉康太郎さんの講演(+α)を聞いてきました。

6月28日。仙台のAER28階で、ファンドロイドのセミナーイベントがあり、takramの渡邉さんのお話を伺いました。

講演内容をブログで紹介する前に、takram(タクラム)さんについて。IDEOやカヤックといった創造的な展開をする企業が生み出すものと近いものを感じる企業さんです。作るものも、スマートフォン上で動くソフトウエアであったり、空間インスタレーションであったり、自動車メーカーのコンセプトモデルの高度なインフォメーションシステムであったり、と多彩です。

正式名称は、takram design engineering で、デザインとエンジニア、ソフトとハード、この2軸4象限に跨って面白い仕事をされています。

事業領域の広さをうたっているというよりも、デザインとエンジニアリングの垣根をなくしたい、コンセプトワークとモノづくりを車の両輪のように、有機的な連動させて、クリエイティブな仕事を展開していく、そんな魅力的な姿勢の企業です。



1.メソッド
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同社のWEBサイトを拝見すると、Our Methodの所に

◎ Rapid Prototyping
◎ Storyweaving
◎ Problem Reframing

とあり、それぞれに、感銘を受ける面白いナレッジがあります。

私は仕事柄、研究開発部門、商品企画部門のアイデア創出フローのディスカッションによくよばれます。その関係で、「石井さん、これこれの能力のある企業さんか、こういう話をできる専門家をご存じありませんか?」とよくたずねられます。takramさんもまたそういう折にご紹介させていただきたい企業さんの一つとして、心に深く残る出会いでした。

渡邉康太郎さんのご講演の内容は、一部、守秘性のある部分があり、(そのトーク部分はUstreamの配信も中断)、また夜の宴席で深くお伺いした部分もありますので、講演の中身をなぞるよりも、オープン情報を参照しに行きつつ、石井なりの解釈で再構成した文章を綴ります。




watanabesan.jpg


2.プロジェクト
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仕事の例、としていくつかお話しいただきました。私なりに、同社のWEBサイトやインタビュー記事をさらって、石井コメントも付しつつ、紹介します。

● MUJI NOTEBOOK
http://www.takram.com/?page_id=52

これは、良いアプリだということで出た当時、スマフォの界隈、ソーシャルメディアの上でも有名になったので記憶にある方も多いと思いますが、これもtakramさんの参画した仕事だそうです。
このページには動画があります。講演ではその様子を口頭で描き出してくださいましたが、ビデオで見るとまた深い理解が起こります。
渡邉さんの言葉を書きとった私のメモには「群知能/300個がお互いにネットワーク/光と音の波紋が広がるようなもの/水面のように見える/近傍とのコミュニケーションの中で動く」と在ります。
人がたつとその上の風鈴がなる。風鈴は隣の風鈴がなると少し遅れて少し減衰して光る、という単純なルールだけを持っている。それが規則的に配列されていると、一つが光るとワーッと意思のある総体のような動きをする。これは自然界の魚群に見られたりします。全個体が持つルールはシンプルでも全体の挙動はとても複雑になる様は、コンピューターシュミレーションや小さいモーションロボット群の動きで時々表現されたりしますが、とても面白いものです。ビデオの中ではこれを【ローカル・ルール】【グローバル・エフェクト】と呼んでいます。この2つの言葉は示唆に満ちていて、しばし考え込みました。私が設計するアイデアワークショップ、その場の中の個体(参加者の方)同士のコンタクト時のルールとして、シンプルなものを定めてワークをやることで、ただそこで懇親会をしているのとは全く違ったところに1時間後にたどり着きます。グローバル・エフェクトを生み出すような、よいローカル・ルールを設計できた時、場というのは無理なく、高度なアウトプットを生み出す、そのことに今一度深く光を当ててみたいと思いました。

その他、動画では、風鈴の配置をめぐるさまざまな工夫と設計思想が語られています。渡邉さんの言葉が認知心理学を収めた人っぽく感じられたのですが、ビデオの中で(多分、田川氏だと思いますが)語られている「水平方向についてはかなり良く取れるが、人間の耳は垂直方向の差にはあまり敏感ではない」という特性に基づき「光源と音源を分離した設計にする」というあたりは、唸ってしまいます。

また「風鈴の高さに変化を付ける時に、X方向、Y方向に異なる周期のサインカーブを適用することで、単調さを出さない。どこにも水平な線がない」というあたり、海や池の水面もつ、特定の特徴点はないような時間平均の一様性をもっているものの、同じ姿の水面は二度と生じない、という自然の織り成す無限の多様性のエッセンスを、少ない関数ですっと表現するあたりも痺れます。
このページにもメイキングの動画があります。実際の空間の様子はとても良いものですし、それが作れていくまでの過程もまたいいです。

渡邉氏のコメントを書きとめたメモには「小動物の鼓動のような振動」とあります。このビデオか、説明文か、あるいは別のサイトのインタビューかで、読んだのですが、光源ユニットが電球モチーフの容器のソケット部にあり、電球の球状部分には水が入っていて、その水に向けて二本の電極が伸びていて、そこにはわずかな電気がかかっており、人が電球を下からそっと包むと、電気の逃げ場ができることで、(たぶんスイッチが入って)モータが回る、モータは重りがついていてバイブレータのような感じになる、このコンセプトで、実際に小動物の鼓動のような感じに震わせるのは、大変だったとも。
このページには、実際に動く姿があります。制止している姿は、前衛的なバネクリップか、タイプライターの中に入っていたワイヤー機構部を出してきたかのような感じですが、動いている姿を見ると、虫の「ささささっ」という有機的で素早いあの姿にそっくりです。渡邉さんの言葉を書きとめたメモには「バイオミミクリ」と在りました。生物模倣を工学に用いる考え方で、バイオミミック、とか、バイオミミクリ、といわれ、サメの肌の形状から高速水着とか、トカゲの手のひらの無数の毛がファンデルワールス力を用いて壁に吸着できることを利用したものなど、最近の工業製品開発にはよく発想材料としても用いられる方法です。

ビデオを見て開発の工夫などを聞いていると、それもありますが、それ以上にいろんなことが考えられています。3足が常に接地するので安定する作りであるとか、ワイヤが飛び出す足の本体取付部分がゴムでできているために地面をける足の角度が有機的にかわることなど。ビデオではちょっと外側に膨らむ時に子犬が見せるようなかわいらしい挙動を出現させながら曲がっていきますが、この辺が、蹴り出す足と本体部の固定をソリッドにしないことから生じているのかもしれません。単純なモータの駆動であんなに有機的な昆虫的疾走をする姿を見せられたら、ため息が出てしまいます。

tagtype Garage Kit (講演にはなかったですが)
http://www.takram.com/?page_id=73

どこかのインタビュー記事で、お話しされている時に New York Museum of Modern Art のパーマネントコレクションになっている、親指での入力の機器、tagtype 、というものを語られていたのですが、このサイトにありました。このかわいい蝉のようなフォルムの機械、クローズアップ写真を見て分かりました。(多分・・・)両方のハンドルを握り、親指でそれぞれ5つのキーをタイプする。日本語は「あ/か/さ/〜/わ」の10行と、「あ/い/う/え/お」の母音5つからなる。はじめに、インプットしたい行のボタンを親指でおさえ(左右のどちらかに必ずある)、空いている反対側のキーの1〜5が自動的に母音入力に割り当てられてその母音を押す、そうすると、その操作で1文字入力される。(・・・というものなのでしょう。)これは、幾つかの指を失ってしまった人などでも充分に使えるし、腕の動きを考えると腱鞘炎にもなりにくそうでいいですね。もっとも力の強い親指に仕事をさせる、というのは。

●Hitohi
http://www.takram.com/?page_id=%203224 (←多分、テンポラリーなURLかと)

写真と説明が展開されています。しっとりとして、感性的な情感を和菓子だけここまで出せるのかーと、写真を見ていても思います。説明文を読むと更にまた示唆がたくさんあります。
トヨタのコンセプトモデルのための Onboard Infotainment System もされたそうで、動画でも面白いです。メモを見ると「ワーキングプロトタイプ/ハードのエレクトロニクス/ファームウエア/動くソフトを作った」とあります。実物でなく、それ相当の、ビデオモックアップを作るというやり方を昔訪問したパルアルトのIDEOで聞いたので普通はそういうものだと思っていたのですが、takramさんでは、そういうレベルまでされるとのことで、これはデザインとエンジの横断的な仕事力の高さだなぁと。(もちろん、IDEOだって、物まで作るとなれば作るのかもしれませんので、この辺については、詳しくはどうこうと言えるだけの知見は私にはないのですが。)

●Shenu(シェヌ): Hydrolemic System
http://www.takram.com/?page_id=699

これは、ヴェネチアのビエンターレに匹敵する、ドイツのdOCUMENTA(ドクメンタ)という現代美術の大型グループ展でtakramさんが出展された作品です。ちなみに、ビエンターレは、二年に一回です(ビエンターレ自体が2年に一度、を意味する)。ドクメンタは5年一回です。(ちなみに、ドクメンタは”時代の記録”という意味だとも)。

この展示会は、ディレクターがいて、作家を指名して、制作する、という形で、彼らを作家として指名したのは(ディレクタ、ということだと思いますが)韓国の方だそうで、出された作品テーマは、100年後の水筒、とのこと。彼らはそれに対して、面白い(そして没になる)提案をします。はじめは、スイカ的な畜水の植物で、というものや、炭鉱のカナリヤのよろしく、携帯できる小魚水槽で、水を発見したら投入してみる、といったものを提案するも、芳しくない。彼らは、水筒を作る、ということ自体を考え直します。(冒頭に書いたProblem reframing、をするわけです)。

そして、彼らの出した答え、作品というのは、人工臓器、という作品です。成人男性は、2.5リットルの水を飲み、その分の水を排出。100年後の世界にはほとんどきれいな資源が残っていないという世界観設定の中で、水のない中を冒険して進んでいかないといけない人に、水筒を持たせるのではなく「出なくさせるか、出たものを戻させる」という方針で、4つの人工臓器を付ける未来を提案します。水分を失うのは、呼気、汗、尿、便。鼻には多孔質の人工鼻腔。多孔質を通して外には乾いた空気を送ります。乾燥地帯の生物(カンガルーラット)が鼻腔に沢山の毛をもち同様のことをしている生物がいるということで、バイオミミック的に。汗については、発汗を抑えるために体温の上昇を抑えようと。脳が大きな熱源ということで、首輪を装着し、首に埋め込むデバイスが体温の冷却を担うということで、サメ肌のような形状の首輪は非常に大きな表面積を持ち、人体の3倍の発熱をする能力を持つと。尿に関しては人工尿道で濾過してまた膀胱へ。便に関しては人工肛門を配し、そこでは遠心分離のような形で水分を抜いて体に戻し、非常に乾いた糞だけを外に出す、というもの。そしてこれだけやっても、2.5リットルとは言わないものの、百数十ミリリットル、約1/10ぐらいであっても失うので、最後に飴を用意。そこには水分とミネラルが入っていて一日に失う水分を摂取できる、と。

この作品については、もともと設定されている世界観に影があり、100年後の地球・壊れた世界、できれいな資源のほとんどない中で人類の若者が(たぶん資源獲得のための)冒険の旅に送り出されるがその際の水筒システムということで、動画の雰囲気も、作品のつやっぽい質感、すこし扇情的なテイストの飴の色、などが作られているそうです。

●Storyweaving(ストーリーウィーヴィング)
http://www.takram.com/?page_id=46

これは本としてアマゾンからも買えます。

彼らの仕事の作法、それを体系的に表現して、多くの人が再現可能な考える型や手順にした、というもので、とても興味深いものでした。本を読むだけでもその鱗片を垣間見られます。

渡邉さんの言葉をメモしたものには「takramにいろんな企業を集めてワークショップ、作って最後にそれをまとめて本にまで」と楽しい語り口で紹介いただきました。このストーリーウィーヴィング(weaveは、編む、という意味)の話は後半更に深く興味を持って聞いていったところですので、詳しくはそこで。


・・・

彼らの仕事のうち、公開可能なワークが20〜30%。これが講演やWEBに挙げているもの。一方で70〜80%は非公開の案件です。案件の存在自体が非公開であることは、クリエイティブ企業の宿命です。収益を太く生み出すような案件というのはクライアント社内にとって重要性がとても高く、組んで動いていることは守秘事項。私もかなりオーブンに情報発信していく方ですが、仕事の半分以上は、パートナーや家族にさえも決してしゃべらない守秘性のある仕事です。企画の初期段階の仕事は、商品戦略や特許取得可能性などのデリケートな要素が多いですから。

以前うかがった企業さんでは、公開可能な部分で思いっきりの遊びをしていました。クリエイティブ系の先駆的な企業は、公開可能な自主事業で収益性を度外視してもコンセプトを形にしていく、それが領域の先駆け的実績となり、開発要素の多い案件の依頼が来る、そういう戦略なので、収益化を考えずコンセプトを先鋭化して具現に至らせることができるそうです。公開仕事は、ぶっ飛んだコンセプトの方が、既存のクライアントの案件にかぶらず、自由に腕を振る、という部分もありましょう。

takramさんの講演とWEB上の情報だけを読み込んで、あまり勝手なことも言えませんが、公開可能な仕事にみる、モノづくり(&物語)、のレベルがこれはすごいな、と唸るレベルのものばかり。個人的には、tagtype、Phasma、Hitohiは、”モノをして語らせしめる”というか”見た人が、思わず誰かに喋りたくなる、見たものを引き付ける魅力”がある、と感じます。



3.プロブレム・リフレーミング
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 『 Problem reframing (プロブレムのフレームを外す) 』

ここについては、自分の中で、聞いたコンセプトと、既存の知識への深いアクセスが起こって、(つまり、深く考えながら聞いて)あまりメモが取れていません。講演の様子をメンバーの小泉勝士郎さんがつぶやいてくれていたものをまとめたもの(togetter)がありました。

そこを見ると『問題を捉え直す。枠を再設定する。』とあります。

先に挙げたプロジェクトのshenuがそのよい例であり、takramさんのWEBサイトには、こうあります。

Approach – Reframing the Problem

After a period of thorough research and analysis, takram reached an uncanny solution. The idea of creating a water bottle was rather unrealistic, given the limited supply of water in a devastated condition caused by water pollution and so forth. Instead, our conclusion was that it would make more sense, in fact, to regulate how much water the human body can retain and recycle in this dire environment. This revelation resulted in the Hydrolemic system, a set of artificial organs. This was our interpretation of the given theme; instead of creating a water bottle, we treated the human body as a water bottle thereby creating necessary artificial organs. 

引用元 takram webサイト Shenu: Hydrolemic System  

後半に「our interpretation of the given theme」とあります。荒廃した世界の水筒、というテーマは、水筒を作るというテーマを解釈して、人間が必要な水を得つづけることにテーマを再設定したわけです。そうすると、人工臓器、だと。

この話を伺いながら、私は2つのことを思いました。

一つは、創造技法の文献を大量に調べ標準化したときに「テーマを再設定するステップ」が発想の前にあるとしたこと。KJ法(日本)、TRIZ(ロシア)、CPS(米)などの発想技法には、発散の前にそういう技法フェーズがあります。

もう一つは、IDEOの仕事。IDEOがBank of Americaから顧客増を狙えるカードをデザインしてくれ、といわれて、最終的には「端数のおつりは別口座に貯めていく、買い物をするほどに貯金ができるというサービス」Keep the Change を作り出したこと。

(私はこれを良く言い間違えて、”take the change”と言ってしまいますが、これでは”おつりは貯めておいて”じゃなく”おつりはとっとけよ(あげるよ)”という逆の意味になっていますね。訂正します。)

プロブレムをリフレームすることは、創造領域の仕事ではとても大事です。

が、実際は難しいのも事実です。

自由度を許容するコンセプトワークのような依頼や、自社プロジェクトの場合は、Problem reframing ができるとしても、クライアントワークや、インハウスのクリエーターであれば上層部や他部署の要件定義として動かせない「Given theme」があります。

”そういう場合はどうするんです?”

と、渡邉さんに伺いました。すると彼は気さく答えてくれました。

「そういう場合は、まず***をして、それと同時に***をするんです。すると・・・となります。」

と。

(情報の性格から、伏せておきますが、秀逸な回答をいただきました。)

回答を聞いて私は、深くうなずきつつ、”挑戦者にとって役立つやり方”をまた一つこころに刻んでいました。

彼の言葉を書きとったノートにはこんな言葉がありました。

「椅子屋/従来/椅子作る/努力して売る/
 椅子屋/プロブレム・リフレーミング/アート的な先駆/他の業種ドア屋が欲しいと言いに来る」

言葉を補えば、陳腐な表現をしてしまいそうなので、文章化することはやめておきますが、相談に行ったときにテーマそのものを再定義することができる企業さんというのは、すごく貴重で、かつ「自分たちで依頼をより大変なものにしていくことを辞さない姿勢」があることも分かります。未来の水筒を作るオーダに対して人工臓器で答えるというのは、その姿勢が垣間見られます。



4.ストーリーウィーヴィング
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ストーリーウィーヴィングを読んで特に興味を持っていた、takramのワークショップの中身について話してくれました。ワークショップの中身について話す、というよりも、彼らの「作りの作法」を、論理的に、かつ、叙情的に、語っていく、という時間でした。

渡邉さんの言葉を書きとったノートにはこうありました。

「(旧来A・・・)コンセプト・ドリブン(決めた仕様はずらせずそれに近づけるスタイル)」
「(旧来B・・・)後づけStory(後から製品コンセプトを付与するスタイル)」
「コンセプトも、ものづくりと同じようにPrototypeできないか?」
「物理とコンセプトを同時に開発」
「後戻りを許す」
「**と言えるためのよりどころ。究極的哲学」
「作りながら語る。語りながら作る。」
「Storyweaving 具体と抽象を(相互に作用させて収斂させていく)」
「聞く人全員を語り部に」

この辺は、石井の言葉をまとって再説明して良いものか、デリケートな本質は、やはりtakramさんの本を読んだり、講演を聞いたりする方がいいとは思うのですが、私の表現でここではとりあえず、書いてみます。

従来の開発は、初めにコンセプトがバシッとあって、これが目指すべき北極星。ずらさない。これがブレのない開発のよりどころとなります。(コンセプト・ドリブン)。要素技術が生まれてそれをもとに製品ができてくスタイルもあります。(シーズ・ドリブン)。

余談ですが、ナンタラ・ドリブンの例で言えば、確かMOTの博士課程時代に聴講した大見先生の講義では、大見先生の半導体グループはターゲット・ドリブンというスタイルをとっておられました。シーズ・ドリブンではユーザ不在になり、かといってニーズ・ドリブンでは、巨大産業でロングタームの開発である半導体では、目先のニーズに合う頃には時代も顧客もずっと違うところに行ってしまう、その究極的な方向性(ターゲット)を描きだし、そこから割り戻して考える、という方法です。(私の専門領域で言えば、TRIZのIFR=究極の理想解、よる開発コンセプトの設定方法に、似ています。)

講演に、話しを戻します。

いずれにしても、ナンタラ・ドリブンは、ドライブフォースを生む存在があり、それはずらしません。それに対して、Storyweavingの考え方は、ずらします。

コンセプトができて、試作してみて、試作してみると分かってくることがあって、それがコンセプトをさらに発展させる。そういう「コンセプト」と「プロトタイプ」の相互作用の中でより良いものを生み出していく。

とはいっても、どこまでも脱線していくかのように、ずらしていくのでは、ただのドリフト(漂流)になりますが、彼らは「幹」と「枝葉」という考え方をしていて、そこを担保しています。幹は根幹をなしていて、具象物というか、コンセプトの中でもレイヤーがあるわけで、より具象的で交換可能な要素(枝葉)と、どんなに枝葉をいじろうとも、そこにずっとある「根幹」的な中心的な抽象概念があり、その「幹・枝葉」の扱いを、メンバーの皆が把握し、最大限の許容度を生みながらも、ブレない開発、というスタイルをとっています。

ながく石井なりの説明をしてしまいましたが、先に引用したtogetterの中に、渡邉さんの言葉で、こうあります。

『「ものづくり」と「ものがたり」。ストーリーウィービング。大手企業では仕様を作ったあとそれを守ることが絶対になるコンセプトドリブン。もっと素直に地でいってみようというもの。ぶれてはいけない根幹の思想を幹、ひとりひとりが膨らませられるのを枝葉』

と。

この2、3行に、storyweavingの説明が圧縮されています。

さて、以下に、少し具体的に、ご説明頂いた(+補った)ワークショップの中身について。(タイトル脇のページ数は『Storyweaving』のページ数です)


■2つの絵を見せて、共通点を探させるワーク

(これは、少人数グループになった後、二枚の絵を渡して、グループで話し合ってもらって、共通点抽出というコンセプトワークに慣れてもらうのに最適かと。著作権の切れた名画というのがありますので、それを使ってもいいでしょうし、現代のドイツのボードゲームの中から、Dixitあたりを持ってきてもいいでしょう。)


■90seconds(90秒で本を語るワーク)(参照:P14)

エレベータピッチ・プレゼン(=役員とたまたま乗り合わせたときに、自分のアイデアを伝えるマイクロ・プレゼン。通常はコンセプトの本質と魅力を伝え、後で部屋に来て詳しい話をするように、と「次」をもらうことを狙うもの)的に短時間で行う。幹と枝葉を定めて伝える練習になる。「本や知識の共有」「自己紹介」「語り方を考えるきっかけ」という3つの側面があるとのこと。

(やり方)お奨めの本を1人一冊持ってきて、4人組になり、90秒でその本のプレゼンをする。聞きたくなるように紹介する。時間が来たら意見交換を90秒。紹介者を交代して繰りかえす。

なお、Aさんがプレゼンした本の「幹」に対し、その後の90秒の意見交換では、Bさんが質問をしたりして周辺をしろうとしています。これはBさんなりに「枝葉」を載せている行為。これのワークは、幹と枝葉、という概念の分解能を上げてくれそうです。

ミーティングの前にこれをやる、本もそのプロジェクトに関係ありそうなものにする。というのもいいそうです。

これは、いろんな応用が利きそうで面白いです。屋上屋を架す、になりますが、自己紹介とは違った形で人となりをしれ、グループの凝集性を高める効果がありそうですし、私がよくやる「他己紹介」というワークと、目的は一緒(メンバーの親密さの向上)でも、発言者の役割が「オーソリティー」になるか「セールスマン」になるか、という全く逆の側面があります。以前友人Tさんが「他己紹介は緊張感が高まる」とおっしゃっておられて、心にとめていたのですが、謙虚でインテリジェントなその方のパーソナリティーを鑑みるに「90seconds」によるアイスブレイクだと、すごくエネルギッシュに参画されそうで、良い状況が想起されました。準備物(各自が本を持ってくる)がいることと、3分で終わる4人の他己紹介にくらべて時間がかかる点もありますが、条件がそろえば、これは是非やってみたいです。(自分の書いた本を持って行ってもいいルール、自分の本は除くルール、など試してみたいです。)


□ 「十四夜」(参照:P15)

無関係な二冊本を用意し、3〜7人ぐらいのグループで10分ずつ観賞。文字の全くない絵本を使うことも。(文字のない本、というと、The Arrival - Shaun Tan とかもよさそうです。)
ファシリテータが質問リストを作りそれに沿って、似ている所、違うところ、などを、議論。
是認で共有できると部分はあるか?各人の意見がばらつくところがあるか?という二点を明確にする。

これは、幹と枝葉というStoryweavingのワークショップの知識構造を把握するためにも役立つアイスブレイクだそうです。


■Tangent sculpture(タンジェント・スカラプチュア)(参照:P16)

タンジェントは接線。三角関数のサイン・コサイン・タンジェントのtangentは接線という意味だったんですね。さんざっぱら数学科時代や物理学科時代に扱ったものの、接線、という意味を知らずにいました。

スカラプチャーは彫刻。

接線による彫刻、という概念です。

ある曲線がシンプルな方程式で、ユニークに表現されるけれど、代わりに、色んな具体的なXの点におけるYをプロットしていけば、そのプロットの集合は、方程式であらわされる曲線を近似的に表し、集合内の点の数を増やしていけばそれは本来の曲線に漸近していく。ただこういう説明じゃあ、集合論とかヒルベルト空間とか、そういう数学的概念がある人にしか分かりません。

takramさんの表現は美しいなぁと思うのが、これを彫刻というモチーフで具体物で比喩したことです。

例えばここにゴロッとした木のブロックがある。その中に収まるダルマを掘り出そうとしたら、荒彫りして仕上げていくわけですが、荒彫りの段階のノミというのは真っ直ぐにしか彫らないわけで、掘り出したい外形の凸点となる部分に向けて、空間接線を入れていくようにノミをふるいます。それをいろんな地点でやっていくとただのブロックがだんだんとダルマの形になっていくわけです。そこには、3Dデータで描いたダルマの表面データというものは用いなくても、いろんなポイントで接線をつけてやったことで物の輪郭(アウトライン)が見えてくる、というわけです。

企画のフィールド内において、コンセプトを掘り出していくというのは、木とノミでダルマを掘り出すよりも、更に難しい思考活動ですが、全ての部分の輪郭を厳密に表現できる単純な言葉なんて存在しないような、デリケートな輪郭を持ったコンセプトの場合は、tangent sculpture はとくに良い思考の仕方だと思います。

さて、この「接線による彫刻」(私風に言うならば、具体的な数値を持ったディスクリートポイントの集合を用いて、近似的に、晋の曲線を表現すること)ですが、具体的には面白いワークとして、さらっと体験ができます。

「対象を、”名を言わずして語る”」

これは、何対象を一つさだめ、それが持つ「複数の側面」を言葉で説明し、そして、それが何であるかを当ててもらうというワークです。

複数の側面とは「形状/物理/科学/観察/音楽的/文化人類学/民俗学/文化」などの側面です。

ネタバレしないように、別の物品例で言いますが、”草履”を例にするならば、「それはほとんどの平たさと虹のように平面からそり立つ二つの弧をもつ。柔肌をいばらのように赤くさせるが慣れればしっくりとした頼もしい感触となる。仮に無人島に流れ着いたときでも一〜二年のうちにそれは形を成すことができるものである。よく見るとそれは複数の層とひどい摩擦により自己の一部を失った後でも機能し続けるような有機的な構造をしている。・・・近代に人々は靴を得てそれを使わなくなってしまった。」といった具合に、12行の説明文章を作ります。そして、それがなんであるかを当てます。

実際に講演でも皆に立ってもらいやりましたが、分かった人から座っていくというゲームは多分小さいグループの中でやっても面白いでしょう。普段、一言に圧縮した言葉を使って分かったつもりでいることや、みんなが正確に共通して認知しているつもりの事柄でも、つまびらかに話せば枝葉が違い、感じ方、のようなテイストはかなりばらけている。そんなことは良くあります。

このワークには、「対照の本質を理解する」「暗黙知の明文化」「本質の再定義」という側面があるとのこと。

こういうワークをいかにして思い付いたのかも、創造工学的な観点からは、興味深い所ではあります。



■Idea chromato(ディタッチメントとアタッチメント)(参照:P17)

具体的なアイデアが出そろい、一つの決定案に絞り込まれた段階で、発案者以外のメンバーにもそのアイデアを分解してもらう。20分。

分解では、配布されるリストに従って、作品の機能、意味、メッセージなどを書く。

分析の間は会話を禁止し、あえてブレを増幅させる。

それぞれに記入した内容をもとにディスカッションを進める。特に各人の差異やずれを明確にしてく。

それをもとに、作品を構成する「魅力」「交換不可能な要素」「交換可能な要素」「幹と思われるメッセージ」「枝葉と思われるメッセージ・解釈」を仮に定める。

アタッチメントは愛着をもつところ。非作者メンバー全員が作品のような状態になっていく。

ディタッチメントは切り離しすること。作者を作品と切り離し客観的な観点を持つ。



このプロセスは、曖昧な創造的活動の中に時折垣間見られるフローを、かなり本質化して再現可能にしています。

(長い余談ですが、[1]京都精華大学の漫画学部・ストーリー漫画コースの三回生に、毎年春、ブレインストーミングの講義をしていまして、教授のさそうあきらさんと共に、プロットを生み出していく漫画家の中の知的営みを伺っては、それをそぎ落とし要素化し、再現可能なぐらいに単純化して、生徒さんにブレインストーミングの方法として実践してもらうことをしています。(部・全・細:ブゼンサイのプロセス、と内心名づけたワークで、その名称は不評なので、削ぎ落しワーク、と平たく読んでいますが)。[2]また、作者と作品を切り離す、というのは、考具のかとうまさはる氏が、アイデアスケッチの説明の所で、同種の概念を語っています。[3]また、頻繁に5分ペアブレストをした後、他者のアイデアを書きとってアイデアスケッチを書くと、発案者がそれを書いたスケッチよりも、投票時に上位に来る、そんなことも実によく観察されます。発案者に伸ばしてもらう以外に、芽生えさせた苗木に接ぎ木をするようなアイデア発展の仕方にも一定のよさがあると感じていました。長くなりましたが、Idea Chromatoは、それをさらの個別の要素をミキサーにかけて練り上げ、2段階ぐらい挙げたような洗練具合です。)

本ではわずか1ページでさらりとかいていますが、これは、クリエイティブ系の領域でチームで仕事をする多くの人にとって、とても有用性の高い知識だと感じました。



5.質疑応答
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こんな感じで、タクラムさんの Our Methodの所の

◎ Rapid Prototyping
◎ Storyweaving
◎ Problem Reframing

について、講演をしていただきました。

(私の余計なコメントも沢山混ぜて書いてしまいましたが。)

この後の質疑応答でも、かなりいろんなことをうかがえました。

私が特に知りたい!と思っていたのは、storyweavingの「後戻りを許す」という点。

”クライアントの社内において、「物語」と「モノづくり」の相互作用でお互いに軌道修正をかけあう、というのは、いったん走り始めてからブレたら総崩れになる大型開発の時には、厳しい?どいう処し方をするのでしょう?”

と質問をさせていただきました。プロブレム・リフレーミングも然り、ですが、大手企業の中で開発をされる方は、「要件定義をされたものは、動かさずに、受け取ってきたものを更に自部署の仕事を載せて発展させて、次の部署へ遅滞なく渡していく」という日々の中で、「後戻りを許す??」「コンセプトがものづくりからフィードバックを受ける??」と感じられるかもしれません。それは経営者にしかできないウルトラCではないか、と。

しかし回答は、なるほど、という物でした。

渡邉さんの言葉を石井なりの表現でやや不正確ですが綴りますと次のようなものでした。

「エンジニアリングのタイミングになっていくと厳しい所もあるが、企画の時期にstoryweavingをやる。そして、動く企画書(=ワーキング・プロトタイプ)をだす。多くの人がそれに”自分だったらこういう色が欲しい”といったユーザ目線の意見を言って、時には自分たちの部門のハードルを上げるようなことさえも発言する。」

「絶対にずらしてはいけない幹は動かさない。枝葉はずらしてもOK」

と。

更に別の方の質問を挟んでいるうちに、この回答を掘り下げて考えていました。

”とすると、ずらさぬ幹とは、具体的に、開発事例で言うとなんであろう。どの程度の部分が修正をうけ、どの程度が受けない部分か。”

これについて、再度質問をさせていただきました。”特に、開発事例では、当初の提案で没になった案も交えてお話しいただいたので、一連の開発プロセスの中で、ずらさぬ幹は、どの線であったのかを先の具体事例(SHENUと、もう一件)について教えてください”とたずねました。

これについては、石井の言葉で綴りなおすのは、あまりにデリカシーがないので、その場にいた人だけの知識として、ここには書かずにおきますが、幹にある部分というのは、20文字ぐらいで表現できる短いフレーズのようで、それをミキ・エダハの分解作業を通じて見出しておくことが大事なんだろうなぁと思いました。



6.参考文献
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渡邉康太郎(2011)『ストーリーウィーヴィング』 ダイヤモンド社





(それから、終わりに渡邉さんが紹介された本もありました)







以上です。

2時間のお話をいただいて、その後、お酒の席もお付き合いいただいた渡邉さんに心から御礼を申し上げます。

教わったことを活かし多くの可能性を開いていけるように精進します。




備考:

実際のtakramさんがお話になられたことと違う点があるかもしれません。ご了承ください。講演の聴講報告を書くにあたって、以下の情報を参考にさせてもらいました。



7.参考にした情報
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posted by 石井力重 at 18:18 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)

2013年06月20日

創造研修の打ち合わせ

東京は浅草橋駅の近くに滞在しています。ツイッター等ではよくつぶやいていますが、マイステイズ浅草橋、というところが定宿です。

ホテルの雰囲気もいいのですが、加えて、浅草橋、というのは、徒歩10分圏内に、各路線の駅があり、目的地に直通か一回の乗り換えでたどり着けるので、よくここに滞在します。

母の実家の魚屋さんが亀戸にあり、私も若いころから魚屋さんよく手伝いにいっていて、”千葉寄りの東京”に、なじみ深いから、というのもあります。

余談はそこまでにして、最近の仕事を少し綴ります。

19日・昼

光学機器メーカさんにて、創造研修打ち合わせ。基礎と応用、を合計で3日間にわたって行うというかなりしっかりしたもの。企画営業系と技術開発系では創造技法というのは大きく異なります。両者が混在している場であれば共通してできるような汎用性の広いものや、技術寄りだけれど文系職種の方でも楽しく参加できるワーク、というものを設計します。

19日・夜

東京で、創造技法の専門家たちとの打ち合わせ(飲み会)。北は仙台(私)、南は熊本から、集まりました。創造技法の企業内トレーニングについて意見交換もしたのですが、達人たちの悩みというのはおのずと同じところに。その悩みというのは、学ぶ前の初心者のそれともかなり似ています。感性的な手法ほど、クリエイティブ資質の高い人には良く刺さり、組織構成員の2・6・2モデルでいえば6・2の人たちには、「なんだかよく分かりません」ということに。

技術として創造技法を教える場面では、そこを、論理的な手法にして、6・2の人たちのための方法として提供します。これはこれで、クリエイティブ感性のとがった人には「俺には合わない」ということになり、難しい所でもあります。「職場で用意された創造研修に行って来いって言われたので参加してみたけれど、なんかお遊戯みたいな、基礎的なことをやって、低いレベルで喜んでいるだけだった」という感想もでたりします。

石井としては、その点は 基礎 と 応用 の場を設けるべきだと考えています。基礎は技術寄り。応用はアーティスティックな感性寄り。互いにオーバーラップを持たせ「基礎だけでても、ある程度、創造的な感性の了以についても踏み込む」し「応用だけでても、ある程度、創造技法(の中でもかなりハイスペック版)も提供する」スタイルが良いかと。
実際は企業内研修で、そんなに何度も時間を社員に取らせられない、という都合を鑑みてその2つのウエイトバランスをチューニングして、望まれる1本の研修として提供することが多いです。(石井の作るスライドはパーツは似ていても、流れや使う技法が毎回変わります。これは、そういうチューニングの結果です。)

20日・朝・昼

ホテルで机に向かっています。昨日のメーカさんでの打ち合わせに基づいて構成を設計していました。491枚のスライドを仮組していたのですがここからまた、大きく手を入れていきます。

20日・午後

映像や配信に関する事業をされている企業さんで創造研修の打ち合わせです。

20日・夜

某社の新製品レビュー会に呼んでいただきました。開発担当の方と、実機を交えて製品の使い勝手や開発思想などを伺ってきます。

21日・朝

IT企業さんを訪問。全社員むけのアイデアワークショップの打ち合わせです。

21日・午後

フリー(飛び込みの打ち合わせや、依頼仕事対応バッファ)です。
状況が許せば、展示会やセミナーで知の仕入れをするか、友人の企業にお邪魔しに行こうかとも思います。

・・・

都内に滞在している時というのは、こんな感じに過ごしています。
 

posted by 石井力重 at 13:44 | アイデアプラント 3rd(2012-2014)



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