2007年06月02日

公共的サービスを担う民間事業者の充足状況

中小企業白書2007(概要PDF)には興味深いデータが多いです。2007年版をPDFでざっと見ていて面白いデータがありました。

出典:中小企業白書 概要PDF 17ページ
グラフ[公共的サービスを担う民間事業者の充足状況]があります。
縦軸は「民間事業者への期待」。
横軸は「民間事業者数の見込み」。

4つのエリアには以下のようになっています。

エリア1:「期待が低く、民間事業者が少ない」労働・交通・教育・文化・医療
エリア2:「期待が低く、民間事業者が多い 」該当無し
エリア3:「期待が高く、民間事業者が多い 」福祉
エリア4:「期待が高く、民間事業者が少ない」環境、産業振興、まちづくり

「エリア4」には、事業機会(社会的企業にとっての事業機会)があるようです。環境、産業振興、まちづくり。私の周りにはこういう分野の方が沢山いますが、事業的に困っているところが多いのが現状です。社会からの期待は多く、同業他社があまりいない。さりとて、事業としてまわしていくには、収益性の面で課題が多い。そんな分野のようです。福祉と何が違うか、といえば、大きく違うことはサービスの享受者が違う点が上げられます。「地域・社会」と「特定の個人」。産業振興・まちづくり・環境は、あるいみ社会システムの設計・構築・運用、といった性格があります。福祉についてはそれ以外に「個人へのサービスの提供」という部分があり、(廉価であれ、)対価をもらう相手が明確です。

全くの思案ですが、地域の成長促進・社会システムの良質化、については、地域の創意としてまとまったお金を払えるような仕組みがますます必要なのだと思います。商店街の活性化、といったときに、商店街の店主だけがその価値を享受するわけではなく、その地域住民やその周辺のお店をつかっている企業にも、恩恵があります。そうした地域のステークホルダーに、「地域活性ファンド」へ投資してもらい、まとまった事業的資金を、エリア4の事業者に発注する。そういうモデルが好ましいように感じます。もし、それによりうまく事業が回れば、配当が出資者に戻る。あるいは、何らかの商店街の利用券でもいいかもしれません。

そういえば、コミュニティービジネスの勉強をしたときにそうしたことを実践している地域があるとうかがった気がします。今回の中小企業白書を見るに、その分野は「産業振興、環境、まちづくり」が求められているのだ、という明確な分野がわかりました。結論がすぐに出るタイプの問題ではないと思います。ながく考えてみたいと思います。
posted by 石井力重 at 23:51 | Comment(1) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料

2006年12月29日

自分の事業に、自分の物差しを。(ビジネスプラン学習プロセス)

ビジネスプラン。事業計画。常に移り行く経営環境の中で、事業を引っ張っていくための地図であり、内外の人とのコミュニケーションのツールとなるものです。

ビジネスプランを作る力、とでもいうべきものがあります。訓練によってあるレベルまでは誰でも身につけることができます。産学連携コーディネータとしての私の活動において、事業化をベースにリエゾン活動するわけですが、ビジネスプランニングの知識はとても重宝しています。

私自身が、その作成能力を身に着けるまでを簡単に振り返ってみます。初めてビジネスプラン作成に取り組む人は、どのようにしてプランを書き上げていくのか。そんな視点で、私自身のケースをば。


■サマリ版■

(1ヶ月目〜6ヶ月目)

経営戦略論の学習。
ビジネスプランの概要(構成要素)を認識。

「事業理念」「何を提供したいか(商品・サービス)」
(成し遂げたいことと、売ろうとするもの)をはっきり描く・文章化・可視化できるように。

(7ヶ月目〜12ヶ月目)

差別化戦略・ビジョン・商品・財務・プレゼン方法を学ぶ。
講習にそってビジネスプランを一通り描く。

「ビジネスモデル」
(われわれは、何をするのか)をはっきり描く・文章化・可視化出来るように。

(13ヶ月目〜18ヶ月目)

後にパートナーになる企業になるに出会う。
プレゼン。パートナーになっても良い、という話へ。

ほとんど何もない状態からでも「描いたことは実現する」ということを学ぶ。
機会はおもがけないタイミングでやってくる。小さく事業開始。

既存のデータベースを細かく調べてゆき、
潜在的な市場規模を算出。

財務的な数字を記述。売り上げ計画など。
実績を元に、説得性の高い売上計画が出来た。
完全でなくとも実行をすることの大切さを実感。
実行する以前よりも、はるかに深い分析や計画立案が可能。

(19ヶ月目〜24ヶ月目)

公認会計士の方に指導していただき、
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフローを学ぶ。
言葉で考えていたビジネスを数字で語ることを学ぶ。

経営戦略の実践的バイブルから、本格的な事業計画書を具体的に学ぶ。

大学院の戦略論は、社会を洞察し大きな方向性を選び取るのには最適。
一方、プランの精度・実行可能性を高めるのは戦術的な「ハウツー」が
必要であり実践的なケースを学ぶことが重要。ということを学ぶ。

公表資料から、新興企業の成長モデルを調査・分析し、プランニング。

付加価値を高め、他社に模倣することが出来ない競争優位性のために
必要な「特許」を探しプランに組み入れる。
 有効な特許を保有する教授にコンタクト、使わせもらいたいとお願い。
 幸運にも快諾いただく。
 ※ビジネスプランコンテストなどでは、ビジネスのモデルが
 「性善説」では通りにくい。特許技術や、規制に縛られた強力な
 参入障壁があることが重要。

プレゼンにおいて、審査員の質問やアドバイスがプランに磨きを。
繰り返すほど、プランの納得性が高まる。

多くの場所で自分の構想をさらしてだめ出しをもらうほど、
そのプランの完成度は上がっていく。ことを学ぶ。



・・・以上が二年間の学習プロセスです。

ただし、実際にやってみると、事業はほとんど計画どおりにいきません。
ある調査では、創業一年目の起業家の9割が「当初の計画を大きく修正した」
と回答しているそうです。
しかし、事業計画が意味を成さないと言うわけではありません。

自分たちが描いた道筋があって初めてずれているということがわかります。
軌道修正をしなければならない、ということが分析的に判断できます。
地図のないまま、さまよう行為は、自分たちがうまくいっているのか、
あるいは、軌道修正を必要としているのか、を分析的に判断するものさしが
ない状態です。

 自分の事業に、自分の物差しを。

二年間の大学院で学んだ、最も重要なことの一つです。






学習プロセスの詳細メモはこちら。
posted by 石井力重 at 23:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料

2006年10月22日

研究技術計画学会。ロードマップの分析。

10月22日。東北大で開かれているMOT系の歴史ある学会、研究技術計画学会に参加。ロードマップ関連の研究がなかなか興味深い展開をしています。

pid 002[1].jpg

日本、アメリカ、EUのロードマップの作成主体は、EUがアカデミックメインなのに対して、アメリカは産業主体。日本はちょうどその中間。

公的ロードマップの作成においては、企業秘密、企業戦略の問題から、産業界の参加が得られにくい。企業内のロードマップは別として。

では、アメリカの公的ロードマップの参加に企業多いのは?…については、ロードマップの構成に仕掛けがある。(以下、石井の理解です)。つまり、未来とプロセスと『教育』という視点から構成されている。進むべき未来を考え、その産業に必要な人材を明確に描き人材教育のロードマップを創る。これであれば、産業側としては、RMの効果が自社で取り組む範囲をこえいます。欲しい人材を社会が育成してくれる。事業活動において最も重要な資源のひとつである高度人材を戦略的に教育・輩出する。

(私見)そういう教育のロードマップは、非常にいいですね。直近の利害関係者の枠を超えて、業界各社が、協力して提言することができます。たとえば地域がロードマップを作ろうとする場合、異なるセクターのコミュニケーションツールとして、直近の利害を超え活用できるようにするには、そういう将来人材の教育、というところまで展開していると、みんなが必要とする効果的なものが得られるのかもしれません。

参考
ケンブリッジ T-Plan
posted by 石井力重 at 12:49 | Comment(2) | TrackBack(1) | 研究(MOT)/検討メモ&資料

2006年10月21日

研究・技術計画学会(東北大)。ベンチャー企業の芋煮会。

10月21日。MOT系の伝統ある学会、研究技術計画学会(第21回)が本日から東北大・工学で開催されています。

特に、近年はロードマップに関する研究などもあり、興味深いです。創造性手法やTRIZに関する話題もすこし見え始めました。明日も続きます。

午後は、仙台北部の七北田公園で、ベンチャー企業の芋煮会に参加させてもらいました。なんと豪華なことに飲食店主が焼きそばと芋煮をつくってくれています。さすがにプロの味。かつて無いほどのクオリティー。(芋煮会:仙台では晴れた日の午後を、河原でサトイモの入ったトン汁を煮て食べるという文化があります。)

このベンチャー企業は下は20台から上は80台までの幅広い人材がいます。人生の縮図のような組織構成です。最年長の方からすると、自分の孫より若い世代がいる会社なんだなぁ、と一堂に会したその光景を見ながら思いました。
posted by 石井力重 at 23:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料

2006年08月23日

未来年表は『5の年』に多く出される。

博報堂生活総研の未来年表(=8月21日のブログに紹介しました。)を年次別にみていくとあることがわかります。2つあります。1つ目は、未来へ行くほど、未来予測の記事件数がすくないということ。やはり遠い将来になるほど予測し言及することは難しくなる(ないしは、労力をかけて分析し言及する必然性が低い)ようです。2つ目は、5の年(2010年、2015年、2050年などといった、下二桁が5の倍数である年)には、その周辺の年次に比べてはるかに未来予測の記事が多いようです。

これをグラフにしてみました。(クリックで拡大)
未来件数

青いラインが連続的な予測件数の傾向です。減少傾向です。赤いラインが5の年の傾向です。青いラインとは件数レベルが全く違う(多い)ことがわかります。この解釈については図に記載しました。なかなか興味深い傾向です。
posted by 石井力重 at 20:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料

2006年07月28日

(再掲)一次産業と新産業

昨年のブログより再掲します。(出展:http://www.voiceblog.jp/ishiirikie/
一次産業と新産業mini.gif



追記
posted by 石井力重 at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料

2006年07月04日

大きく手堅い事業立ち上げ。ソーシャルキャピタルの活かし方。

(MOTの実践現場にいる研究者としての石井の視点から、あるケースから得られたファインディングを書き留めておきたいと思います。)

私が駐在する企業のあるビルはインキュベータです。ベンチャー企業がたくさんいます。急成長中のあるベンチャーの取締役と昼食を食べたときの話です。

石井「よくそれだけ大きい投資をしましたね。新しい業態をつくろうとしているときに、手堅い小さな規模の拡大再生産の成長モデルのほうがリスクが小さいようにおもいますが、実際には、その辺はいかがですか。」

取締役「それがですね、社長は”大きく手堅い”んですよ。」

私はどういうことだろう、と不思議に思い聴きました。「どういうことです?」

取締役「当社は先に大きな仕事をもらってくるんですよ。で、その仕事をかなえるために、全力でやる。後で振り返ると、われわれがナニナニ業であるという名前がつくことに気がつくんです。」

しばし私は考えました。なるほど。ベンチャーが先に「したいこと・できること」を商品にして、売り先を見つけるのに苦労するケースは多いけれど、彼らは先に「顧客からの仕事」があり、それをするために組織と能力を全力で構築する、わけです。

ここで2つのことに気がつきました。
1)彼らのしたいことがもちろんありますが、その実現の手段は、懐広く捕らえています。
2)はじめに大きな仕事を取ってくる起業家(社長)がいる。実績のない出来立ての会社にその仕事をもらってこれるのはひとえに起業家のもっている個人の実績、人脈、ビジネス能力という目に見えない(会計帳簿にも載らない)資産です。これが、ある意味、この企業の担保。

ソーシャルキャピタルという「関係性という領域に存在する資産」が非常に大きい起業家が、それをどう「仕事やお金」という会計帳簿にのる数字に変換するのかを、実例として見せ付けられたケースです。圧倒的なソーシャルキャピタル(+起業家の個人能力)。

大きく手堅い戦略。というのは、起業家がもつ内外(内:個人能力。外:ソーシャルキャピタル)の大きな資産を、ビジネスに変換していくことと深い関係がある。そう気がつきました。
posted by 石井力重 at 06:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料

2006年06月15日

学会で発表します。『産学連携学会2006』。

今日は産学連携学会で東京に来ています。主に産学連携のコーディネータや研究開発プロデュースの専門家が実務の中での分析を発表します。私もMOTの院生として二度ほど発表してきました。今回はこれまでの研究(ベンチャーの創出量と地域の要因の関係性)から少し変えて、「起業家の意識」に焦点をあて、定性的なものの中から見つけられるものを分析した結果を発表します。私の今回の発表には次の目的があります。

「”地方”の魅力・メリットとは何だろうか。起業を支援する側の想定ではなく、起業家の視線には”地方立地のメリット”として何が見えているのだろうか」というもので、実際に東北の優秀なベンチャー経営者にインタビューしたデータから得られた発見を支援者業界にフィードバックしたい、と思います。

ただ、私自身は今回はどういう結果になるか、予測がつきません。これまでの”研究のオーソドックスなスタイル”をはずれた分析になります。その意味では今回の発表は問題提起的な位置づけであり、学会の場を借りて参加者からのコメントを通じて分析を掘り下げることができれば、と思います。

ちなみに、出張のアイテムは
posted by 石井力重 at 06:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 研究(MOT)/検討メモ&資料



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