リアルとオンラインのハイブリッドの社会になりました。
今年の学会は、急な状況変化で中止にならないように、オンラインの併設もしくはオンライン一本化の可能性が高そうです。
学会発表自体はリモートと相性が良いようです。
出産したばかりのある先生が、自宅から三日間の学会参加をしたが素晴らしい体験であった、などの談が出ていたり。
さて、そうなると、学会のもう一つの機能である「知の相互交換」です。
- フォーマルな質疑応答時間。
- インフォーマルな廊下でのコーヒーセッション。(立ち話)
- さらに、越境的な研究アイデアが生まれやすい場、夜の懇親会。
Zoomの普通の使い方は、この3つ目、「懇親会」には向きません。
3人でZoom飲みをするなら、確かに便利です。
しかし。
50人、100人が、一つのズームの中で、飲み会をする、というのは、絶望的につまんない懇親会になります。
リアルで言えば、宴会場の決められた椅子に座り、マイク1本を回して、全員がそれを手にした時だけ喋る、という懇親会です。
(たまにあります。中心の先生は、オーガナイザーとしてたくさんしゃべりますが、多くの方は、1:99の構図で回ってきたマイクで、ながなが喋ったりできず、更にはインタラクティブに会話したりもできず、なんだか会議みたい。。。そんな場。)
そこで、次のような方法を、小さい集団で実験してみました。
<<プロセス>>
20:00〜20:05
R1:オーガナイザーが喋ります。(5分)
「互いに面識のない人もランダムで組みますが、
雑談をどうぞ。自己紹介は短く。
例えば、コロナの変わり目、どんな風ですか?
どんなことしていきたいですか?」という雑談から
きょうが乗れば、興味関心のある研究トピックを語りあってみましょう。」
などなど。
この後に記すプロセスの説明だけなく、
相互に喋りやすくするような、ムードを醸成します。
時間までに戻らない人(自宅なので夕飯を家族でとるでしょうから)が
三々五々集まる猶予時間でもあります。
20:05〜20:55
ズームのブレイクアウトルームへ、ランダムに送ります。
R2:小部屋の雑談(6分)(ランダム2人)
↓
R3:小部屋の雑談(8分)(ランダム3人)
↓
R4:小部屋の雑談(10分)(ランダム4人)
↓
R5:小部屋の雑談(12分)(ランダム5人)
↓
R6:小部屋の雑談(14分)(ランダム6人)
という流れです。
毎回、移動のタイムロスが出るので、
+5分ぐらい見ておいた方が安心です。
オーガナイザーは、
「話が途切れたら
『コロナの変わり目、 どんな風ですか?
どんなことしていきたいですか?』
と共通トピックにもどってみてください」
などとR(ラウンド)の変わり目で声をかけて、
ムードを醸成します。
(もちろんトピックはこれに限りません。皆が共通に関心のあることで、有意義なことが掘り下げられそうなものであればなんでよいでしょう。)
小部屋で、学会の重鎮の先生と当たれば、ラッキーでしょうし、
えらい先生も若い人と二人の場になれば、
オンラインのスキルを聞けるなど、リアルの懇親会ではできない話を聞けることもあるでしょう。
<<実験時の感想>>
石井の知人を募って小規模に、この方式の実験をしてみました。
人数が少ないので、上記のままにはできませんでしたが
回数とタイムインターバルはそのままに実施しました。
なお、全員が初対面でした。(正確には、石井だけが全員と面識あり)
そのさいの、アンケートを、個人情報を完全に記号化し、紹介します。
いつもは聞き手に回る事が多いのですが、少人数とくに2人になる状態になると否応なく話さざるを得ない状況になるので、いつもよりも話す時間が増えたような気がします。その状態から人数が増えていくので気分が上がり、人数が多くなっても話すことが多かったかなと思いました。 時間も2n+2というのも絶妙だなと思いました。話が進むと少し足りない感じがしましたがいい塩梅なのかなと。足りないぐらいが楽しい感じでしょうか。 |
”2名から始まる。最初は短い時間で辛くならないように。”は良い手法だと思った。繰り返されること、少しずつ時間が延びることで、自分の中でPDCAがまわることも面白かった。ラウンドと次のラウンドの間に、各セッションの話をシェアしたりフィードバックしたりできる余韻があっても面白いかなと思いました。 |
時間が長くなっていくこと→話しやすかったです。別の場の交流会で類似のやり方をしたことがあります。 そのさい、ブレイクアウトルームの人数は変えませんでしたが、最初は様子を見ながら話し始めるので、時間が余りがちで、一方、口が滑らかになる3ターン目は時間が足りなくなる、ということがありました。なので、この方法のように、時間は短く〜長くがいいかな、と思っていました。人数少なく開始というのはやってみようと思います。 |
<<実験的に運営してみた感想>>
参加者の質が場の空気をよくする大事な要素であり、この時は、良い方ばかりでしたので、肯定的な結果に終わった、という可能性もあります。あがり症とか、ネット環境が悪い方、あるいは、学会でも混乱を招く議論の破壊者となる方、などがいた場合にはどうなるか、分かりません。なので、一参考にしてもらえれば幸いです。
また、場が大きくなる後半では、画面共有で焚火を投影して、それを見ながらゆっくり語る、というケースもありましたが、それもなかなか、まったりしてよかったです。学会共通の何かを投影するとか、小部屋の中で工夫して動画を持ち寄るのも面白いかもしれません。
運営自体は、割と簡単です。
Rnの時の人数は「n人」で、時間は「2n+2」分です。
オーガナイザーも場に入って楽しんでもいいでしょう。
ただ、人数が多いと大広間に意図せず戻ってくる人、落ちて入り直す人がいるので、門番的に誰か常駐する方が現実的かもしれません。その場合は、事務局メンバーでお酒を飲んで過ごすとかもいいでしょう。
あとは「私は◎◎先生と同じ部屋に入れてほしい」という個別リクエストは一切聞かない、という運用が鉄則です。それしたら、妙な空気になりますので、完全ランダムに。人数が多いと対応してたら収集がつかなくなります。
((試していないけど、検討したアイデアも))
「トピックを決めて希望者をその部屋へ送り込む」方式
→ありでしょう。でも、分科会、といった趣に。集団サイズが4人を超えると、懇親会のような感じにはなりにくく。
「トピックオーナー(亭主)を立てて、好きに選んでもらう」
→入ったら、そこを中座して他の部屋に行くってのは、相当に、心苦しい。。。
「いっそ全員100人とかで、1分トーク」
→それ、楽しくなるかな。。。事前にそういうビデオを撮って閲覧場においておく方が皆幸せでは。。。
以上です。
今年は、オンライン学会でいろんな懇親会がありそうです。
後世に残る素敵な方式が、◎◎学会から生まれた、ということも、有りそうです。
楽しみです。ここでは、石井式を紹介させてもらいました。
posted by 石井力重 at 20:56
|
オンライン・ワークショップ&研修