仕事柄、広い発想、面白いアイデアが浮かんでくるよう、日ごろから感性に新鮮な風が入ってくるような体験を心がけています。それを私は「感性の仕入れ」と呼んでいます。
この夏の完成の仕入れは、陸海空、いろんなことができました。
4つの体験を1画面の中で再生する動画にまとめてみました。
陸・・・S660(ホンダの軽自動車スポーツカー)。軽自動車とは思えないハイパワーが重量の軽い車に乗っているのでとにかく面白いです。峠のカーブで面白いようにスパッと曲がりコーナーの出口でスワワと加速。私の体格だとどうしても後部の出っ張りに頭が当たります。どうシートポジションを工夫しても当たりました。なのであまり段差を勢いよくで超えると頭頂部をぶたれるような痛みがあり、気絶したらまずいなという別の意味でもドキドキするドライブでした。S660は乗るではなく着る、とよく書かれていますがまさに。自分より一回り大きいマシンを着るような、そんなわくわくする乗り物でした。なおほとんどインパネに余計なものがなくナビもないのですが代わりに重心点を示すディスプレイがあり、前後左右の加重が常時わかります。0.5Gを超えるとピピっと警告音が鳴るので安全支援装置の位置づけかと。実際は競技自動車をする人はこれがあると、コーナー入り口できちんと前荷重にして、とか、カーブであまり荷重がアウト側になっているとグリップがやばいかも、という判断ができます。
海・・・水上バイク。15年前ぐらいに旧4級船舶をとり、長らく失効していましたが、再取得講習を受け、水上バイクの講習設けて、レンタル&ガイドさん付きプランで、宜野湾から恩納村まで1時間ぐらい走行してきました。ガイドさんの行く後をついていくのですが、結構必死です。べたなぎの時はスピードを出しても操縦の難しさは感じません。ですがわずかな小波でも出てくると、バキン、バンッ、ドン、と船底に固いものがぶつかります。何か浮遊物かと思うぐらい、高速走行時の波って固いんです。腕が疲れますし、神経を使います。また基本は波に平行に走らないようにするのですが、常に垂直に走ることもできないので、波に平行気味に超えていくと船体がぐらんと傾きます。高速走行しているだけにバランスを崩すと振り落とされそうなので、楽しいのと同じぐらい緊張した体験でした。右のレバー操作がアクセルでわずかな角度でゼロからフルスロットルになるこの操作系は、人間工学的にちょっと未成熟なままにされていないかなと思うのでした。そういう気づきは、どこかでの製品開発の際のアイデアになりそうです。
空(1)・・・ジェットパック。背負った装置からすごい量の水が噴き出します。その向きを二本のレバーで操作し、方向をコントロールします。なれてくるとそらを意のままに飛ぶ感じが気持ちいいです。動力は水上バイクの排水であり、太いパイプ経由で水上バイクから送られてきます。なので、水圧のコントロールはインストラクター任せで前後左右の移動が自力でできる感じです。操作はかなりピーキーでハンドルをグイっと動かすとくるくると回転したり思わぬ挙動をしたり。ほとんど動かさずちょんちょんとずらす程度がいい操作のコツのようです。なおきりもみしながら水面にたたきつけられたときは相当に痛かったです。ぼーっとするような、多分軽い脳震盪が起こっていたかもしれません。空を飛ぶ乗り物が今後普及するうえで、何が大事かその鱗片を少し見たような気がします。
空(2)・・・フライステーション。最大250q/hの風が吹き上げる風洞の中でスカイダイビングをする施設です。日本では越谷レークタウンにあります。大気中でスカイダイビングで落下する人は約200q/hで平衡状態に達するそうで、その状態を作り出して飛びます。インストラクターがついてけがの無い様にまめに姿勢を治してくれるので安心して体験できます。体感的には(当然ですが)落下している感じはなく、ものすごい風圧の中でふわふわ浮かんでいる、という奇妙な体験をします。手足そして体をピンと伸ばし、顔は壁面を向くように上げ、足は膝をわずかに(15度ぐらい)まげ、手は大きな丸を作るあの感じを頭1つ分ぐらい開けます。これがもっとも空気抵抗が大きくなり浮く姿勢だそうです。実はこれだけは3度目の体験でかなりうまくなっていました。なお同じターンに体験したレスリング選手の方は身体の使い方がうまくかなり初回からよく飛んでいました。彼曰くしばらく息ができなかったとのこと。以前体験があった石井としては息苦しさは感じませんでした。なお着地は体を畳めば抵抗がなくなるのですとんと。今後空飛ぶが普及するときに、着地が最も重要なキーテクノロジーになるんだろうなぁ、とジェットパックの体験とともに感じていました。
こうした体験を良いインプットにして、各所各社さんのアイデアワークをより実りあるものにしたいと思います。