開米瑞浩(かいまい みずひろ)さんが、新しい本を書かれました。
『エンジニアのための
図解思考 再入門講座』
(翔泳社、2010年10月)
誠ブログのつながりで、開米さんとは交流がありましたが、おっても面白い人で、愛されるキャラクターです。なんだかこんな先生にならったら勉強ってたのしいだろうなぁ、というのが私にとっての開米さんの第一印象でした。
その開米さんの9冊目にあたる新刊。
一言で言いますと、そうですね・・・、ビジネス書と学術書の中間のような、スキル本と辞書の中間のようなもの。決してそういう意図で書かれたわけではないかもしれませんが、開米さんの軽妙なテイストと、きちんとした論理思考が融合して出来上がる作品として非常に、「らしさ」のある本だと思います。
わかりやすいノートを作る友人。高校時代にそういう人がいませんでしたか?そんなことをふと思い出すような、コンパクトな要約が柔らかい文字で書かれた扉で、各章がはじまります。
この15の章のとびらをみるだけでも、かなりのノウハウ集だとおもいます。
私はこの部分を書き写して、参照できるようにデバイスに入れています。
その中から、3つほど紹介してみます。
P148(10章)
「物の動き」、挙動特性を説明されたら、
論理的に考えなくても答えがわかるように、
自分の身体感覚に照らして図解しよう。
P180(12章)
「適切な見出し」は図解の伝達力を大幅に向上する。
長文を要約して適切な見出しをつけると、
意見の違いが浮き彫りになる効果もある。
P206(14章)
誰も答えを知らない問題を解決するには、
ゼロベースで問題の構造を図解しよう。
問題そのものを理解する地道な努力が肝心。
8章ぐらいまでが、基本スキルを教えてくれて、9章あたりからは、かなりぐっとエッジのたったスキルが並んでいます。この本が「ハウツー図解」にとどまらず、知的生産の技術、という領域へ緩やかに端をかけているような感じがします。やさしい言葉で、本質的な知的作業を解説しています。
それから、光栄なことに5章には、『アイデアスイッチ』を出典として、SCAMPERリスト(の詳細版)を紹介していただいています。
※ 発想トリガー法は、ビジネスの思考術全般に重宝されていて、経営学の本にも出てくることもあります。
最近では、カヤックの柳沢さんの『アイデアは考えるな』にも、TRIZ系の発想トリガーとして、智慧カードのリストが紹介されています。
そして、最後の見出しは、開米さんの力強いメッセージと気持ちを感じるセクションです。
開米さんの最後のメッセージ。いくつかの本でも「実践しよう」が明確に語られています。この本のあとがきは、かなりあっさりしています。語るべきことは、本編を通して語っているから。
エンジニア向けの本、として出されていますが、非エンジニアでも、楽しく読めると思います。
それが大事だと思うんですよね。これが本来、本を買ってお金を払った対価の享受のし方、だと私はおもうのです。
蛇足:
図解のハウツー本とか、体験ワークをともなっている本というのは、これから電子書籍が確立されていく中で、おもしろい可能性があるなぁと、いつも思います。(じゃあ、石井はどうなんだ、と自己問答をし始めると、筆が止まるので、まずは思ったまま書いていますが。アイデアワークの本も、機能性ある紙面とかなり相性がいいだろうなぁと、おもいます。アイデアを実際に出すと、ツイートされたり、専用サイトで他のユーザが発想したアイデアを、書籍内にダウンロードすることができたら、と。)