2024年10月26日

第4回ゲスト講義:「アイデア基礎」の授業でクリエイティブ・コミュニケーションを学ぶ

10月22日、東北工業大学での「アイデア基礎」授業の第4回目となるゲスト講義をしてきました。

この授業は、年間5回の特別講義シリーズで、毎回3コマ連続して行われ、さまざまなアイデア発想法やブレインストーミング技法を実践的に学んでいます。

今回の授業は「アイデアソン」です。その狙いはクリエイティブ・コミュニケーションを体験しながら学ぶことです。

まず、三人ブレインストーミングから始まり、アイデアスケッチ、ハイライト法(優れた案の抽出)、アイデアレビューと続きました。

さらに、ランダムに4人のグループに分かれ、各アイデアに「幸せ」「楽しさ」「感動」の要素を加えて発展させるブレインストーミングも行いました。


アイデアの発展ツールを活用して
アイデアプラントの「Roku」(六角形の紙)と「Core」(丸くて2本の差し込み棒がある紙)を用いて、アイデアの発展方向を視覚化。学生たちはアイデアの進化を実感しながら、そのプロセスを体験しました。


今回のテーマ:「新しいスポーツの考案」
今回のテーマは「新しいスポーツを考案する」というもの。ARやAI、デバイスの使用も可能としたため、テクノロジーの活用も視野に入れたアイデアが求められました。過去にも何度か取り組んだテーマですが、今回もデザイン系の学生から新鮮かつ独創的なアイデアが多数出され、特にトップを取ったアイデアには哲学的な深みが感じられるものもあり、学生の発想力の豊かさに改めて感心しました。

RokuとCore.jpg


Roku_idea.png


アイデア発展ブレスト.jpg

posted by 石井力重 at 10:33 | アイデアプラント 7th(2024‐2026)

2024年10月23日

発想の回廊を探す旅

(日本創造学会の)理事の石井力重です。「石井さん、各地をふらふらしてますよね、どんな仕事なんですか?」とよく聞かれます。私はアイデアプラントの代表として、各地の企業さんの創造支援をしながら旅仕事をしているのですが、その旅の中で、まるで「発想の回廊」を探しているような心持ちになることがあります。今回はその「発想の回廊」について少しお話しさせてください。


昔、ある人が酒席でこんな話をしてくれました。「『発想の回廊』という場所があるらしい。そこを歩いて巡ると、アイデアが湧いてくる回廊だそうだ。」

彼は、生態信号を利用して植物にSNSの文章を書かせるなど、才気あふれる人物です。その言葉に私は強く惹かれ、すぐに調べてみたのですが、どれだけ探してもそれらしい情報は見つかりませんでした。

数年後、再び彼に会いその話題を持ち出すと、彼自身は「発想の回廊」という単語も、それを私に話してくれたこともすっかり忘れていたのです。こうして出典の辿れないコンセプトだけが、まるで幻のように宙に浮いたまま残されました。


それでも私は、この「発想の回廊」という考えに強く魅了され、「発想の回廊を探す旅」が私の旅仕事のサブテーマの一つになっています。「具体的な情報もないのに?」と思われるかもしれません。確かにそうです。
しかし、私は、人それぞれにとっての「発想の回廊」があるのではないかと考えています。例えば、「哲学の道」はある哲人にとってはそのような場所だったでしょうし、ある人は「川崎駅のある階段をダッシュで上り、隣のホームへ下ると、ふっとアイデアが湧く」と言います。


そこで提案です。旅雑誌のようなことを言い出しますが、あなたにとっての「発想の回廊」を探す旅に出てみませんか?「移動する距離と発想の量は比例する」とは、古今東西、多くの人々が述べてきました。


しかし、旅に出るきっかけがないとなかなか行動に移せないものです。そこで、出張があった際には、その場所から電車一本で行け、観光情報がほとんどない町を探してみるのはいかがでしょう?駅を出る。予想通り何もない。「観光に来たの?」と不思議な顔をされる。路地に入る。無名の記念館に足を踏み入れてみる。町外れまで歩いてみると、都会では見られない「町の終わりの先にある風景」が広がっている。

回廊という形をしていなくても、あなたにとっての「発想の回廊」的な場所が見つかるかもしれません。


少し抽象的すぎるので、私が旅の中で「ここを見た人が『発想の回廊』だと感じたのではないだろうか」と直感した場所をいくつか挙げておきます。


  • 永平寺(福井県)

  • 大石林山(沖縄県)

  • 養老天命反転地(岐阜県)

  • 室生山上公園芸術の森(奈良県)

  • 常滑やきもの散歩道(愛知県)

  • 清澄庭園(東京都)

  • 大塚国際美術館(徳島県)


これらの場所の魅力をあまり説明すると、本の結末を明かすようなものになるので控えますが、少なくとも私にとっては、アイデアに行き詰まった時にふらりと訪れたくなる場所です。


「発想の回廊って、もしかして...」と感じた場所やアイデアがある方は、ぜひ教えてください。もし「全国発想の回廊マップ」ができたら、きっと面白いものになるでしょう。次の旅では、あなた自身の「発想の回廊」を探しに出かけてみてください。新たなアイデアが、きっと湧いてくるはずです。


本原稿は、日本創造学会のニューズレターに寄稿した原稿を一部修正したものです。
掲載紙:Japan Creativity Society(日本創造学会)NEWSLETTER 2024.10.18 No3

日本創造学会ニューズレター「発想の回廊」.png


posted by 石井力重 at 11:20 | 旅先にて

2024年10月04日

大学1年生100名の困りごとを分類し、生成したブレインストーミングのお題17選

大学生に向けて、ブレインストーミングを教える教員の皆さんに、お役に立てばと、シェアします。「次のコマ、グループワークだ。なにか良いお題、ないかな。」というときに最適です。学生さんにこのまま提示して、「各チームで好きなお題を選んで」としてもいいでしょう。

1.     課題の先延ばしを克服するための効果的な方法とは?

  • 学生が課題を後回しにしてしまう原因を分析し、解決策を考える。

2.    早起きを習慣化するためのユニークなアイデア集

  • 朝起きられない悩みを解消する新しい方法を提案。

3.    人見知りを克服し、友人関係を広げるための戦略

  • コミュニケーション能力を向上させるための具体的なアプローチを議論。

4.    学生の金銭的負担を軽減する節約術と収入源のアイデア

  • 経済的な問題に対処するための工夫を共有。

5.    大学の交通アクセスとキャンパス環境を改善する提案

  • 通学の不便さを解消するための具体的なプランを考える。

6.    時間管理の達人になる!効果的なスケジュール術を探る

  • 時間の使い方が下手な人向けの改善策を討論。

7.    健康的な生活習慣を身につけるためのセルフケア方法

  • 体調不良や体力不足を解消するための生活習慣を提案。

8.    学業、バイト、趣味を両立するためのバランスの取り方

  • 忙しい学生生活を充実させるための秘訣を共有。

9.    学生食堂のメニューをより魅力的にするためのアイデア

  • 食堂への不満を解消し、満足度を高める提案を考える。

10. ストレス解消とメンタルヘルス向上のための新しいアプローチ

  • 落ち込みやすい性格を改善する方法を議論。

11.  部屋の片付けと生活空間の最適化術

  • 散らかった部屋を整理し、快適な生活を送るためのアイデアを共有。

12. 一人暮らしの学生が直面する課題とその解決策

  • 家事の面倒さや生活リズムの乱れを改善する方法を討論。

13. コミュニケーションツールを活用した人間関係の構築法

  • LINEやSNSでの効果的なコミュニケーション術を探る。

14. 体力向上と健康維持のための簡単なエクササイズや習慣

  • 運動不足を解消し、健康的な体を作るための方法を提案。

15. 多様な人々と交流するためのキャンパスイベント企画

  • 学内の人間関係を広げるためのイベントやサークル活動を考える。

16. テクノロジーを活用した学習効率アップのためのツール紹介

  • 学習アプリやデジタルツールを使って効率的に勉強する方法を探る。

17. ポジティブな自己イメージを形成するためのセルフエンパワーメント

  • ネガティブ思考を克服し、自信を持つためのアプローチを共有。

脚注「このリストは何なのか」

制作者

石井力重 いしいりきえ
(アイデアプラント 代表)
(早稲田大学 非常勤講師)
(日本創造学会 理事)

制作方法

  1. 某大学1年生100名に日常の困りごとを思い浮かべてもらいました。
  2. 次に「困りごとを優れたテーマへ加工する技法」をレクチャーし、実践してもらい、専用フォームに投稿してもらいました。234個のテーマが集まりました。
  3. テーマ集を、意味の近いものを小分類し、さらに大分類しました(AIで実施しました)。その結果を、石井がチェックし、幾度かやり直して最適なものを得ました。
  4. それを素材にして、大学生が魅力的に感じるお題文章を20個生成してもらいました。(AIで実施しました)
  5. そのうえで、大学の固有性、個人情報がわずかでも感じ取れるものを取り除き、どの大学でも有効なリスト(17選)にしました。(ここは完全人力、石井が精査しました)

どうしてシェアしているのか

皆でより良い教育を。誰かの著作権には配慮したいですが、自分の作ったものに関しては「いいもの作って、皆にシェア」で行けるといいなあと思っています。
感想フィードバックや「ブレストの講義に関してこれに困っている」といった課題をコメントいただければ、うれしくなってまた何かシェアしていくような、ちょろい石井です。ぜひ、お寄せください。


masamune.jpg

仙台城址・伊達政宗騎馬像。政宗には400年の計があったそう。

 

posted by 石井力重 at 14:17 | アイデアプラント 7th(2024‐2026)

2024年10月03日

生成AIの「素の画風」を比較:各モデルの個性を探る

よく利用している生成AIの画風の違いを、イメージで比較してみました。

目的

生成AIの画風はプロンプトで指定すれば変えられますが、あえて指定しない場合、各AIがどのような「本来の画風」を持っているのかを探ってみました。

方法

一般的なモチーフ(例:人物、食べ物)は、先進的なユーザーが大量に描かせてきたため、その影響を強く受けやすいだろうと考え、そうした影響が少ない題材を選びました。(完全に影響がないわけではありません。AIは何かを学習していなければ生成できないためです。)

題材(描かせたもの)

  • 「具体性を表す抽象画」

  • または

  • 「具体性をイメージする抽象的なシンボル」

  • (画像生成専用のAIではないAIは、”ーーを描いて” と続けた)

各社AIの描いたもの

AI_hikaku.png
具体性を表す抽象画

各AIの印象

  • Adobe:さすがにかっこいい。芸術的で現代的な仕上がり。

  • Google:意外にも現代アート的で、悪くない印象。

  • Microsoft:一度に多くの画像を生成する傾向があり、ビジネス向けでコンパクトにまとまっている。

  • OpenAI:ミヒャエル・エンデのような独特なファンタジー文学の挿絵風。

まとめ

各AIが学習しているデータは地下水脈のようなもので、なるべく素直にそこから汲み上げた水を見ることで「素の画風」が見えます。
今回の結果から、それぞれのAIの「地下水脈」の色が垣間見えた気がします。
(ただし、「抽象画」という特定の要素が結果に影響しているため、これが完全にAIの基本的な傾向を示しているとは言い切れません。それでも「なんとなく感じている画風の違い」がだいたい反映されています。)

posted by 石井力重 at 09:51 | 新しい知識を学ぶ

2024年09月24日

夏の旅仕事は、八尾(20名2日間)、早稲田大学(200名4日間)の講義ワークショップをしてきました

8月の終わりから9月の初めまで17日間の旅仕事に出てきました。「講義」と「感性の仕入れ」です。

余談から。

「感性の仕入れ」というのはアイデア創出の源泉であり大事な「インプット」の時間です。人から見ると、気の向くままに、ふらふら旅しているように見えるでしょうけれど、テーマがあり、テーマ外の出会いも柔かく受け止める姿勢で、行った先の土地でフィールドワーク的にいろんなことを吸収します。
旅の折り返し地点は高知県の最も西の地点。そこで偶然出会った、その日ちょうど誕生日で93歳になったという方と2時間ぐらい、いろんな話をしたり。戦争の悲惨さ、戦時下になったら生活するうえで何をすべきか、のノウハウなどは文献にも滅多に

報告の本題へ。

さて、八尾市では起業家の卵、あるいは、すでに起業していて伸びようとしている創業者が受講する八尾市の起業家育成講座です。石井はアイデア創出の回を担当。一日8時間を連続2日間、という結構スパルタンな構成。でも、楽しんで学んでもらえたようです。

早稲田大学では、人間科学部でデザイン論を、夏季集中講義で。場所は所沢キャンパスで、受講生は200名。このキャンパスの最大級の大規模授業です。こっちはさらにハードで、朝から夕方まで4日間連続で、大人数で立って動いて、アイデア創出を実践していく、という内容です。この仕事は、講義ーーという側面だけでなく、大規模イベントの運営、という側面もあり、質と量の両方を求められます。(講義の質、大人数でのワークショップ)。全力でお話しして、運営して、楽しんで学べて将来の仕事に役に立つ内容を提供するぞ、という姿勢でやっています。学生さんの全員の評価は分かりませんが、個別に来て感想を教えてくれた学生さんの言葉は講師冥利に尽きるものでした。(もっとも、わざわざ言いに来てくれる受講者というのは、集団の中でも満足度の高い人なのでそれを石井の評価の代表サンプルであるかのようにいうのは、いささか厚かましいわけで。)

designron2024.png

他、旅仕事の前後にも、2件ほど、大企業さん向けの講義ワークショップをしました。
重工業の企業さんのアイデア創出に向けたものが1件。
先端産業の装置産業の企業さんのアイデア創出に向けたものが1件。
どちらも、他の案件と同じく全力でお話ししました。

夏の1か月をざっくり束ねての活動報告でした。


posted by 石井力重 at 00:18 | アイデアプラント 7th(2024‐2026)

2024年09月23日

流れが戻らない今、私たちがすべきこと

コロナ以降、社会や生活の流れは大きく変わりました。一見するとコロナ前に戻ったようにも見えますが、実際にはかつての流れが枯れたり細くなっています。その一方で、新たな流れが生まれ、育っています。

ダムのモデル、アリのモデル

多くの事業者は「一時停止していたものが再開する」と考えてビジネスを再開しましたが、思うようにいきません。流れが“戻らない”のです。これは、水門を開けば溜めていた水が流れ出すという「ダム的なモデル」が心にあるからかもしれません。

しかし現実は、意志のない水の流れではなく、アリの行列を板で遮ったようなものです。道を塞がれると、アリたちはしばらくはとどまりますが、別の魅力のあるルートを見つけ、流れ出します。板を外しても、新しい道の上にある食物がより良いものであればそちらを選びます。人間はそこまでシンプルではないので、前のものが好きだった人は戻ってくるわけですが、一方で、他でいいものを見つけて戻らない層も結構いるわけです。

コロナの間、いろんな業種がやむを得ず道を塞ぎました。そして社会が再始動して、開けてたところ、戸惑います。溜まっているわけではなく、すでに他へ移ってしまったのです。移った先は同業他社だけでなく、消費者の時間とお金を奪い合うあらゆるもの。そのため、見えにくいのです。

「衰退の早まり」と「成長への投資」

負のインパクト(疫病や大災害やそのほかの危機)で社会をたたくと、「衰退の早まり」と「成長への投資」が生じると、未来予測の専門家に以前、教えてもらいました。

ある種の熟成市場はもともと縮小傾向にありました。コロナは、その時間を十年とか二十年とかの時間遷移を早送りしてしまった。

なので、いずれ消え去るトレンドにあったものは、見切りをつけ、成長のトレンドにあったものも、流れのない場所に店を構えた「駆け出し」として、創業時に相当する努力をしなければなりません。

先見のための予兆

さらに、社会全体でも変化が起きています。

(1)人間関係の希薄化

ソーシャルディスタンスやリモートワークにより、人間関係の希薄化は進みました。職場でのチームビルディングは弱まっています。それが顕在化してきたのもあり最近は、リモート文化から対面文化へと戻りつつあります。しかし、多分対面に戻すだけでは終わりそうにありません。
もう一つの大きなファクターは、ハラスメントやジェンダーへの配慮の進展です。先輩経由で訓練されてきた「昭和」の感覚を持つ人々には、今の新常識は難しく、まるで5歳児がガラス細工の店にいるようなもの。自由に動くと壊してしまうので、動かずにいるしかありません。それが、パワフルな組織の醸成にブレーキをかけています。(だからといって「昭和よ再び」とは言えません。あの時代はあの時代で、パワフルさと同時にいろんなものを壊していました。)徐々に適応していくでしょうけれど、長くブレーキを踏むことになるでしょう。

(2)知のロス

組織が持っていた暗黙知も、コロナの時期の多くの退職者により失われました。マニュアルでは伝えきれない貴重な知識が組織にはいっぱいあり、人数は戻しても業務の水準が上がりません。

(3)自信の低下

経済面では、コロナ明けには、賃金や物価の上昇の希望の兆しがありました。が、それほど皆の生活が豊かになった感じはありません。(結構上がった会社もあるのですが賢い人はそれを声高にいいませんしね。)
大きく言えば日本は30年間賃金がさほど変わっていないのに対し、欧米やアジアではその間上がってきました。
そして、円安で外国人観光客には日本は「安い国」になっていています。

経済だけでなくホワイトカラーの面でも、生成AIの急速な進化が影響要素に加わりました。虚無感や諦観を抱く者もいれば、AIを活用して進もうとする者もいます。(なので、このファクターは必ずしも、自信の低下項目に分類できませんが。)

負の回転だって商機を生む

以上、3つの変化を書きましたが、独立な要素というよりは、相互に関係しあっているものです。また、総じていえば、現在、大きな方向性が見えにくい時代に入りました。
そんな中でも上記の3つの変化は、「ある種の市場にとっては、ビジネスチャンスを生む変化」でもあるでしょう。3つの変化で生じる社会の軋轢を、事業の手法を通じて解決できれば、自社の新事業になります。

見知らぬ人生ゲームになっていた

コロナの中断が終わって、続きを再開した人生ゲームは、実は、新しいルールが加わり、参加プレイヤーも入れ替わり、その先のルートも大きく変わっていた、というのが今の状況です。「中断前の状況に戻らない」と感じたときは、財産も同乗者も何も持たなかった「リセットのスタート状態」から頑張る、という姿勢がいります。


new_start.png


ただ、現実社会では「借り入れていたお金」だけは、リセットされない。世知辛いもんですが。とはいえ、常識を更新し、新しいルールのゲームにいるという認識があれば、それまでのノウハウもまたリセットされずに、新しいゲームに写像して使えるはずです。プラスマイナス、とんとん、で。


2024年08月22日

【51歳の展望】リタイアする日の自分が褒め、創業した日の自分が憧れる。そういう仕事を。

2024年8月22日、奈良県の山奥、天川村(てんかわむら)にて、51歳の誕生日を迎えました。


源流に近い清流、みたらい渓谷には「みたらい休憩所」という有名な駐車場があります。その下に「ほどよく深さがあり、流れが緩く、下流へ流されない天然の止め石のあるエリア」があります。奈良県をよく知る友人に教えてもらい数年前に初めて行き、なんて気持ちのいい場所だろう、と。今回は一泊の旅程で来ました。ここからの一年間、51歳の展望を考えるために、夜になると何にもない山奥のこの村でゆっくり考え事をしよう、と。

みたらい渓谷。清流。真夏でも冷たい。半そでウエットがおすすめ。

ここへ行く道中の空路や、清流に潜ったり、川辺で青い空と森を見上げて考えていました。

いずれ来るリタイアする日。その時の自分に褒められる仕事をしたいな、と思いました。そして、創業した日に立っている自分が憧れるような仕事をしたいな、と思いました。

かつての私

どこまで行けるのかもわからない中で、がむしゃらに前だけを見て、走ってきました。
商社をやめ、大学院博士課程に進み、NEDOフェローとして大学ベンチャーに駐在し、アイデアプラントを創業した2009年4月1日、その日から、いったいいつまで、そして、どこまで進めるのかも分からず走り出したわけですが、当時は当時で40歳になる日までの自分の人生の地図を作っていました。今思い返すとそのころの描いたものが随分控えめであり、そこよりもだいぶ水準の高い仕事を、そしてすごい人たちと一緒にする仕事をしていくようになりました。

行く道の先

このままいくと、父がピンピンコロリとなくなった77歳ぐらいまでは現役で仕事をしていそうです。あと四半世紀。もしかしたらもっと良い医療とか思考力を補佐するバディーロボットが登場することで、もっと長い期間働けるのかもしれません。そこは分かりませんが、短い場合は四半世紀後、リタイアする日の自分がたっている場所から見て、51歳のころにした仕事を自分でほめてあげたいーーといわれるような仕事をしたいな、と思ったのです。

多分、志しの仕事、社会的価値を増やせるような仕事をする、そういうことができたときに石井翁は褒めてくれるんでしょう。

道を振り返る

そして、過去。30歳の創業した日。あの頃の自分がどんな仕事に憧れていたかを思い出してみようとするとちょっと記憶が遠くなっていました。青雲の志。それを忘れずにいようとしていたのですが、日々来る情報量の中で21年前のことはだいぶ遠くなっていました。大きな案件、知名度、高い報酬、なども憧れがあったのかもしれません。今となってはそこを切望することが希薄になっていて、ちょっとよくわかりません。しかし、わかることもあります。次々新しいものを生み出し、人々に創造支援を提供し続ける。そういう仕事ができる未来の姿に憧れがあったと思います。(訂正:創業は、35歳、2009年4月、16年前でした。)

アイデアプラントの製品をもっと作りたい。製品以外の「創造支援のもの」ももっと生み出していきたい。創業した日の自分はそういう力に憧れている気がします。

ということで、展望の文としてまとめますと:

リタイアする日の自分が褒める仕事、
創業した日の自分が憧れる仕事。
そういう仕事をしたい。


毎年、自分なりに微妙に(あるいは実に)達成の難しいことを言っています。今年も、達成するつもりで立てていますが、難しいことを含んでいます。

年齢的に、短期的なものの見方、動き方は、合わなくなってきました。

長い時間の流れを見据えて、「好きで得意で志しに叶うこと」を、この一年もしていこうと思います。


皆様どうぞこの一年もよろしくお願いします。


(なお、ブログには書きませんが、合計で10の指針も作りました。一年後の自分はこのブログ文章を読むでしょう。その時には、非公開の小さい展望のほうも、振り返ってみてください。)
posted by 石井力重 at 23:45 | 8月22日

2024年07月09日

【ブレストの進行役のノウハウ】

【ブレストの進行役のノウハウ】を、講義の中にちりばめてよ、というリクエストをもらいまして、今まで、即興でホワイトボードに書いてきたようなことを「1ノウハウ=1スライド」形式で作ってみました。

スライド2.PNG

スライド3.PNG

スライド4.PNG

スライド5.PNG

スライド6.PNG



いわば、

  • 無考慮にこじ開けない。

  • 可能なら立ちブレスト。

  • 出し尽くしたら、あと10個。

  • 批判も材料に使う。

  • ファシリがその場の社会規範を作る、くだけて見せる。


といった、非言語に、無意識に、いい進行役がやっていることに絞って、書いてみました。


各種のブレスト技法では、それぞれのファシリのテクニックがありますが、どれにも共通する「知っておくといいこと」としてはこの辺かな、というノウハウの共有でした。


posted by 石井力重 at 17:12 | メソッド&ハウツー



カテゴリ
プレスリリース&メディア掲載(79)
ideaplant 作品(29)
一人ブレスト(20)
電子書籍コンテンツを意識して(2)
今日の一枚(2)
IDEAVote/アイデアを、チームでスマートに楽しく評価していくツール(45)
アイデアプラントの試作の目線(87)
知であそぼう(5)
アイデアプラント 1st (2005-2008)(251)
アイデアプラント 2nd (2009-2011)(580)
アイデアプラント 3rd(2012-2014)(122)
アイデアプラント 6th(2021-2023)(34)
アイデアプラント 4th(2015-2017)(167)
アイデアプラント 5th(2018-2020)(93)
オンライン・ワークショップ&研修(43)
執筆作業と拙著(2)
アイデアワークショップ(&アイデア創出の技術&創造工学の講演)(422)
アイデア・スイッチ(39)
アイデアの技法(230)
メソッド&ハウツー(197)
研究(創造工学)/検討メモ&資料(136)
研究(創造工学)/発表論文&スライド(20)
TRIZ(143)
日記、価値観、仙台オススメ(449)
仙台(5)
Fandroid(11)
フリー・オートシェープ素材(ご自由にどうぞ)(2)
創造工学の絵本(5)
社会活動/全般(39)
社会活動/Five Bridge(11)
シリコンバレー(23)
面白法人KAYAC(9)
社会動向を見る(12)
カード・メソッド(todoとideaと会話をカードで可視化)(2)
研究(MOT)/検討メモ&資料(43)
研究(MOT)/発表論文&スライド(3)
ベンチャープラン「音co知心」(8)
MMJ(37)
事業化コーディネータのお仕事(165)
航海マネジメント・ツール(11)
道具考/pomera(6)
道具考/scansnap(14)
道具考/YUREX(1)
道具考/iPod touch(21)
道具考/ALL(32)
道具考/iPad(8)
ブレイン・ペーパー(1)
石井力重とは(9)
8月22日(20)
311special(8)
ideaplantに、お仕事を依頼してみませんか(9)
創業初年度の確定申告(8)
こども用(4)
iPad+アイデアワーク(10)
旅先にて(12)
Finland(5)
新しい知識を学ぶ(2)
ブレストカフェ(2)
気づきは仮説に過ぎず。だが表現すべし。(3)
アイデアプラント・ノート(1)
加藤昌治さんと石井力重の「往復書簡」(4)
ファシリテータの小ネタ(1)
『すごいブレスト』2020年(10)
長崎(1)
ことば(1)
アイデアプラント 7th(2024‐2026)(14)
過去ログ
2025年01月(2)
2024年12月(3)
2024年11月(3)
2024年10月(4)
2024年09月(2)
2024年08月(1)
2024年07月(2)
2024年06月(2)
2024年05月(2)
2024年04月(3)
2024年03月(3)
2024年02月(2)
2024年01月(2)
2023年12月(2)
2023年11月(1)
2023年10月(1)
2023年09月(4)
2023年08月(4)
2023年07月(1)
2023年06月(4)
2023年05月(2)
2023年04月(1)
2023年03月(1)
2023年02月(1)
2023年01月(7)
2022年12月(5)
2022年11月(4)
2022年10月(2)
2022年09月(2)
2022年08月(5)
2022年07月(2)
2022年06月(2)
2022年05月(1)
2022年04月(2)
2022年03月(2)
2022年02月(3)
2022年01月(3)
2021年12月(2)
2021年11月(7)
2021年10月(2)
2021年09月(1)
2021年08月(2)
2021年07月(5)
2021年06月(1)
2021年05月(3)
2021年04月(3)
2021年03月(6)
2021年02月(7)
2021年01月(13)
2020年12月(10)
2020年11月(9)
2020年10月(3)
2020年09月(9)
2020年08月(8)
2020年07月(4)
2020年06月(20)
2020年05月(9)
2020年04月(10)
2020年03月(9)
2020年02月(4)
2020年01月(6)
2019年12月(2)
2019年11月(2)
2019年10月(1)
2019年09月(1)
2019年08月(5)
2019年07月(1)
2019年06月(5)
2019年05月(3)
2019年04月(10)
2019年03月(6)
2019年02月(2)
2019年01月(8)
2018年12月(4)
2018年11月(3)
2018年10月(9)
2018年09月(3)
2018年08月(1)
2018年07月(8)
2018年06月(12)
2018年05月(11)
2018年04月(7)
2018年03月(8)
2018年02月(6)
2018年01月(2)
2017年12月(6)
2017年11月(12)
2017年10月(3)
2017年09月(3)
2017年08月(3)
2017年07月(5)
2017年06月(5)
2017年05月(8)
2017年04月(5)
2017年03月(8)
2017年02月(6)
2017年01月(6)
2016年12月(10)
2016年11月(7)
2016年10月(2)

Powered by さくらのブログ