2023年06月29日

AIと共にアイデアを生み出すワーク(2023年6月時点)【スライド公開】

各所(企業、大学)で講義にさしはさむ「AIとアイデア」のミニレクチャーがあります。

そのスライドを、動画形式出力したもの(音声無し、BGMあり)をYoutubeにアップしました。


なお、最後のほうに出てくる『人機共想カード』(JINCA)は、40枚ぐらいのカードセットで、「AIへの指示文」が乗っています。それを使うとAIがアイデアワークをブーストしてくれます。

このJINCA、この先の各大学の夏季集中講義などで使っていきます。
企業研修でも、ご興味あれば、短くやってみましょう(最短で20分枠があればOK)。

2023年06月28日

生成AIは、どう使うべきか。(あるいは、”どう使わないべきか”)(2023年の6月末時点の石井私見)

突然ですが、(いや、そうでもないかな)、今回のブログ記事は、「生成AIは、どう使うべきか。(あるいは、”どう使わないべきか”)」論です。

さて世の中、ChatGPTが急速普及してきた3月あたりから一気に変わりまして。
『生成AIはどう使えるのか』という段階から次の段階『生成AIでより高い効果を出すには』の段階に移ろうとしています。

こうなってくると「どう使えるのか(あるいは、”どう使わないのか”)」を手堅い組織でも、議論の俎上に載せざるを得ません。そう、大学です。
大学にはAIの専門家や、AIで甚大な影響を受ける研究者がいて、学者同士の議論で深まります。
そして、3か月後の今、大学からの声明が次々と周知されるようになりました。


ある大学は、結構先進的です。
「10年後の彼ら(現在の大学生)が、AIを使っていない未来は考えられない。その未来に向けて今、どういう教育をするべきか、考えなければならない」というアバンギャルドな雰囲気。”おおっ”と思って情報を受信していました。

またある大学は非常に思慮深いです。
「知識を十分に持たない人には、回答が不確実であり、情報流出の危険もある。学習の阻害要因となることもある。使わない選択肢も検討しなくてはならない」と。

どちらも理のあることで、良いとこどりをしていきたいです。
先進的、保守的、それぞれから学ぶべき点を挙げてみます。

〇先進的:

10年後。今の調子で発展した「10歳のAI」が、デジタル空間上やデバイス上を跋扈(ばっこ)しています。そのころに「使わない」という選択肢はほぼないでしょう。そして、指数関数的に成長するAIの能力にずっとついていくには、『拙速でもどんどん突っ込んでいく行動』が必要と思われます。

その時代その時代のAIの、先進的な利用をする人が、ビジネス的に上昇気流にのれるでしょう。そういう未来に向けて、今からカタパルトは上に向けて準備しなくちゃ、と。

〇保守的:

漢字変換が登場して我々は、漢字が書けなくなりました。「読めるけど、書けない」。同じ事がスライドして起こります。文章構成能力です。「手直しはできるけど、人力ではゼロからは書けない」。こうなることはほぼ確実です。さて、大学時代には、「大きな概念を構成し、推敲していく能力」が大きく発展します。その時期に、AIアシストがあることで、「論述の筋肉」というものを鍛えずに、進んでしまう。それはやはり、大きな懸念を残します。

また、AI時代には知性の意味で”背の高い人”は有利です。自分の知識の範囲にあることをAIに生成してもらう。判断がつくので適切に使えます。大学教員はある分野ではものすごく”背が高い”ので、AIが十分、使い物になる。しかしあらゆる分野において初学者である学生は、どういう専門分野についても”背が低い”ので、AIで生成したものの適不適を判断できる幅が少ない。この背の高さを教員サイドが見誤ると、「判断可能範囲外で、AIを恒常的に利用する」という学習行動を刷り込んでしまう。このリスクは実際あります。

両極端の論を、書いたところで、石井の現時点の考えはどうなのか。述べてみます。

どちらかと言えば「先進的」です。

利用してどんどん先端を走ろう、というスタンスでいます。(実際AIカードも作って、授業で配ってみんなで使っています。)

しかし、その時に常にこうも言います。
「今、大人たちは、漢字は読めるが書けない。使わぬ筋肉はすぐ落ちる。脳も同じだ。さて、AIは論述の筋肉を楽させる。AIを使って生成するならば、趣味とか日記とかでは、自分の考えを”人力で”論述することを日々心掛けるべきだ。
『使いこなせる。高度な成果も出せる。そのうえで、使わない選択もきちんとできる。』こういう能力が必要だ。
「自分自身の操縦者」たれ。・・・そんな「気概」も同時に言及するようにしています。

(詩「インビクタス」(負けざる者たち)に出てくる『私が、我が魂の指揮官』という言葉があります。これ、AI時代には、ほんとに、一層多くの人に重要になる言葉だと石井は思うのです。)


という事で、「使いこなせるようになること。そのうえで、使わない選択肢をとれるようになること」が、大事だ。

石井の私見にすぎぬのですが、私は、そう思っています。

以上、教壇に立つときの石井のAIに対するスタンスの表明でした。

(なお、これは、2023年の6月末時点のものです。AIはすごく早い変化を遂げるので、一年後、もしかしたら3か月後には、もう、別のスタンスをとっているかもしれませんことを、申し上げておきます。)

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タグ:生成AI
posted by 石井力重 at 23:40 | アイデアプラント 6th(2021-2023)

2023年06月05日

メタバース空間上での創造的認知のパイロット実験(ワークショップ)を行いました

新しいタイプの創造ワークショップを行いました。報告します。(スライドは一番下にあります。)
 
  このブログ記事の要約
(この要約はAIが書き、石井が推敲し、さらにAIが整えました)
 
 
  • メタバース空間上で行われた創造的認知のパイロット実験(ワークショップ)では、15個のパーツを使用してクリエイティブなプロダクトを構築することを目指しました。
  • 参加者はメタバース空間内でこれらのパーツを組み合わせ、新しいアイデアを生み出すことが求められました。
  • 実験の結果、多くのプロダクトが生成され、非常にクリエイティブなプロダクトも作られました。
  • この実験によって、メタバース空間が創造的な思考とアイデア発想にどのようなポテンシャルを持っているかが明らかにされ、新たな研究の展望も示唆されました。
 
   

スクリーンショット 2023-06-02 001230.png

■開催概要

日時:2023年6月4日14時から15時まで
会場:メタバース空間(Spatial)
参加人数:8〜9人
主催者:FSMS(ファーストステップメタバースフェスティバル)

このFSMSに石井は講師の一人として呼んでいただき、1時間のセッション枠をクリエイティブワークショップとして使いました。石井の内的な位置づけとしては創造性研究のパイロットスタディとして取り組んでいます。

■手法の土台

認知心理学における創造性文献『創造的認知』(Finkeら)には、1080回もの試行を行って参加者60人にプロダクトアイデアを大量に出させる実験が綴られています。
その実験の座組をそのまま用いるにはメタバース上では難しいものがありましたので少しそれを変え、援用という形で行っています。

具体的には15個改め17個のパーツをメタバース上に置いておきます。
パーツは球体、車輪、板、L字の物体、円錐、など、基本的な幾何学的な立体です。

(なお、Finkeの15パーツに対し、今回17個に増やしたのは変形自由度の低さを補うためです。「幾何学的な立体の縦、横、高さの比率はFinke実験では被験者は頭の中で自由に変えることができた」のに対して「メタバース空間上ではその比率が固定されてしまい」ます。なので、その比率が大きく変わったときにテイストがかなり変わるようなものだけけは、あらかじめ変えたバージョンを用意したものです。
具体的にはチューブ(細長いチューブと極めて短く拾いチューブ=リング)、ワイヤー(少しのくねりのあるシンプルなワイヤーと、渦巻き状のワイヤー)が2種類になっています。

Finkeの実験では、これらのパーツの中から3つを組み合わせて「8つの製品カテゴリー」のいずれか一つに属するように、製品を形成してもらいます。8つのカテゴリーとは家具、家電、おもちゃ、科学測定器、などです。

(要は、半球+円柱+十字の形、で、カテゴリーは玩具として、「人が乗ってぐらぐら揺れてあそぶ遊具」。そんな感じに発想します。)

今回の実験においては17個の立体パーツを空間に浮かべておき、4人組で話し合いながらプロダクトにしてもらうということにしました。パーツは複製して同じものを複数使うことは不可、しました。
その際カテゴリーは壁に8つあらかじめ掲示しておき、自分たちで自由に選んで良いとしました。ただし2度使うことはできないものとしました。

■流れ

参加者には、初めにメタバース空間上での立体の上下左右方向への動かし方拡大回転の仕方を練習してもらいました。

その後即席でチームを作りました、初めて会った人が多い4人チームです。

次に、20分間の時間をもうけ、チームで話し合いながら「3つのパーツとそれに対するカテゴリー」をディスカッションしながら実際に立体的に組み立ててもらいました。
なおこのVR空間の特徴上、回転には制限があるゆえ、自由に回転させた時になっているあろうもので「見立て」てもらうえばOK、完全には形になってなくて良いとしました。

実際にワークをする人の人数としては4人かける2チームが形成できました。

そして、20分後、2チーム(AチームとCチーム)の作ったものを皆で品評会をしました。

品評会の後、歴史的にFinekeの実験では何がわかったのか、特に「制約がきつくなるほど人間は創造性が高くなる」という結果を紹介してワークショップを閉じました。


■成果物の実際

全員が退出した後にそれらの空間を眺めて歩いた動画を以下に貼ります。閲覧してみてください。

※BGMが流れます、音量注意


結果としては各チームとも5プロダクトを生成していました。(これは17個から製作できる最大数です)

その中でも特にクリエイティブだと思うもの(今回のクリエイティブの定義は新しい有用性としましたが)、そういったものに賞を提供しました。
クリエイティブ賞作品は鎖鎌ならぬ”鎖渦巻き”という新しい武器です。

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鎖鎌のように振り回し相手に投げつけ、先端についている渦巻きが相手にババッと巻き付いて相手を無力化する、そういった殺傷能力の低い武器として面白い、ということで創造賞としました。
コンビニの防犯グッズ、あるいはさすまたを用意してあるような会社の備品であれば、対象顧客になりそうで、商品化可能性もありそうです。

■資料(スライド)

   
 スライド(動画へ出力版) 
 
 
 スライド(PDF版) 
 
(Finkeらの実験をよりよく知りたい方は、出典『創造的認知』を。)
 



■今回のパイロット研究を通じて得た感触:

◎15のパーツを用いた実験はオンラインのワークショップのアイスブレイクや創造性のトレーニングとして使えそう(多分、対面の場でも同様にできそう)

◎メタバース空間上、参加者がパソコンを用いるレベルでも、Finkeの実験は実行できそう

◎ただしメタバース空間上にアップロードしたアイテムの数が100に近いぐらい多いと、パソコンのスペックが高くないと十分な操作ができない。スマホやパソコンの性能が低い人は固まりがちであったりろくに操作できない可能性も。

◎このパイロットスタディを元に、実験条件を整えることで、創造性特性を調べる各種の実験スキームも考案できそう


■展望:

更に、野望といいますか、この数年考えている「沖縄とか北海道で合宿型の研修」の企画へも、つながりそうです。
アウトドアで、発想力と感性をはぐくむ野外クリエイティブ・ワークショップをしたい、というものでして、古くは、川喜田二郎先生の移動大学のエッセンスも念頭にあります。
こんかいのメタバースのワークショップをベースにした発展版を行えばと、その先には、海岸で拾う流木や漂流物を寄せ集め、見立てて、いろんなプロダクトや作品を想像するというアート・ワークへも発展られそうです。
海辺でクリエイティブワークをいきなりやるのはむずしい人でも、このワークショップで少し発想トレーニングをすることで、いけるかもしれないな、という感触を持ちました。
(この企画は、全くの絵空事なんですが、いろんなチャンスが巡ってくることがあれば、やってみたいなぁと、暖めてみています。)

■謝辞:

貴重な機会をくださったFSMSの運営の皆さん、参加者の皆さん、ありがとうございました。

2023年05月22日

AIを活用したアイデア創出:アイデアソンでの新たな試み(1)

 生成AIによる記事リード 
 AIはアイデアソンの強力なツールになる可能性があります。アイデアソンは、チームがアイデアをブレインストーミングして、それらを実行可能な計画に変換できるようにするワークショップです。AIは、チームがアイデアを見つけ、アイデアを現実のものにする方法を理解するのに役立ちます。 
   


生成AIを用いて、アイデアソン(チームでアイデアを出し合い、企画にまとめていくワークショップ)を行う事例が増えてきました。そして実績リリースやWEB上の報告を目にすることもちらほら。

萌芽の時には様々なスタイルが登場します。そして、いずれ収斂して定番が出来上がります。しかし、面白いのはこういう萌芽期の多様さです。
かつては自転車には様々なスタイルがあったり、初期の自動車も多様な方式がありました。(エンジン車にすべて駆逐されてしまいますが、実は自動車の黎明期にはEV車がそれなりに存在していました。)それらは収斂して定番化していきました。しかし、単に歴史的な面白ネタというだけでなく、ある方式がやりつくされて、新しいテクノロジーにも支えられて、次の方式が生まれてくるときに、黎明期の多様な方向性が次の開発のヒントとなることも、よくあります。

そして、今のAI。様々な活用方法が試みられています。定番に収斂するのを待ってみてもいいのですが、定番にならなかった方法は、2年後とか10年後、AIが異次元のレベルまで引き上げられたときに、AI活用の豊富なヒントとして活用できるはずです。その意味でも、今の多種多様は知っておいて損はないでしょう。

というわけで、定番的知見かどうかは歴史の検証を待つ必要がありますが、今、定番としてありだなぁと思う使い方を紹介します。

1.課題を見つける。
2.アイデアを見つける。その具体的方法を見つける。
3.アイデアを企画に展開する。

(それぞれの所で、沢山の列挙、選び取り、ブラッシュアップ、が入ります)

AIに限らず、創造工学的には、発想するときに大事なことをステップにすると上記のようになります。従来のフル人力であっても、実施してほしかったステップなのですが、人間の認知資源(いっときに考える量)には限界があり、上記の一部にフォーカスしたことを行ってきました。
(人力のみでフルセットでやろうとすると、へとへとになる1日か、2日ぐらいを使う必要がありました。現実的に難しいので、一部にとどめることが多かったのです。)

人力でしかできないことに集中して認知資源を使えるので、AIが使えるようになると格段に変わります。(格段に広くなります)

さて、もう少し解説をします。

まず、最初は、アイデアを出すステップの「2」から始めがちですが、たいてい、薄っぺらなアイデアしか提示しません。きわめて対処療法的なやぶ医者に似ています。「この子、熱があるんです。」「(熱を下げたいということか。)では、氷水のたらいを用意して1時間ほどそこに入れておいてください。熱が下がります。」のような。
「どうして、熱があるのか」にいったん掘り下げてほしいわけですが、しない。そういうのを対処療法といいます。現時点のAIは、そういう感じになっています。

してほしいことは、課題の深堀です。

発想のお題があったなら、そのアイデアで助かる人はだれか(ペルソナ。=複数いる)を尋ねる。あるいは、その課題を抱えている人はだれかを尋ねる。
その人たちがその課題に関して困っていることを具体的にあげてもらう。その際に、その困りごとを挙げた理由も挙げてもらうと、回答精度があがります。また、のちにチョイスする際の人間側の負担が軽くなります。
人力:その困りごとの中で注目したいものを1つ選ぶ。
その困りごとを増やす要因があるとしたらなにかを、何かを尋ねる。その困りごとを解決する助けとなる可能性があるものを尋ねる。(←創造工学の『属性分析』という手法のエッセンス)
AIにそれらの要素を考慮して、解決策をN個出してもらう。(アイデアの1行タイトルと、詳細補足3行まで、をテーブル形式で出してもらうと読みやすいです。)Nは5〜10あたりを適宜選択。多すぎると依頼内容を外れ始めますので適度な数を。
その中で、特に注目したいアイデアをピックアップし、アイデアの具体的な部分を記述してもらう。その際に、実現性の高い具体方法から、魅力度の高い具体方法までバリエーションをつけてもらうのもおすすめ。
そうして得られたアイデア(タイトル、詳細、実現方法)を、AIに投げて、このアイデアの主な懸念点は何か。その懸念点へのうち手としてはどんなものがあるか、を挙げさせる。
人力:ここまでのアウトプットを編集して、アイデアとしてまとめる。

そのアイデアをリーンキャンバス、か、ビジネスモデルキャンバスに展開させる。新規にゼロから生み出す事業であれば、リーンキャンバスを。既存ビジネスが既にあってその改良発展であれば、ビジネスモデルキャンバスを使う。
自社の事業を具現化するうえで、社内の稟議上、上層部が重視するファクターは何かを考えて整理する。それをもとに、リーンキャンバスを見た上層部が、どのような指摘(建設的批判)をするかを、考えさせる。
その指摘をクリアするようにリーンキャンバス(ひいてはアイデア)を改良させる。

上層部の稟議上の観点が分からないときは、一般に経営者が気にすること、としてもいいですし、自社の創業者の伝記などがWEB上にあるのであれば「〇〇社の創業者が建設的批判をするとしたらどんなことか」などで、少し自社のテイストに引き戻すのもありです。

これが主な流れです。
この先にも、各社や個別の状況に応じてやれることがあります。

五月雨にあげます。

V)仮想プレスリリースをかかせる。この企画が今から3年後にリリースされる運びになったときを想定して、プレスリリースを書いてもらいます。そこには、想定するユーザ像とそのユーザによるテストサービス利用の感想も記してもらう。

M)月次の売り上げ、コスト、利益表を書いてもらう。期間は18か月。

F)初期の顧客獲得の戦略を提案させる。ややリーンキャンバスのチャネルと被るが重なっていてもいいので明確にする。

S)この事業を成功させるのに必要な強みは何か?この事業を行うのに最適な企業はどこか?

などのことがあります。

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(なお、上記のすべては、課題解決型の場合です。それ以外のプロセスをとることもあります。具体的には、シーズ起点型の場合は、環境分析&強み分析、シーズニーズ変換、先見倍歴(石井造語)を用います。根本から違う発想の手順です。AI対話の仕掛けも異なります。)

追記:

こうしたことを、創造やイノベーション界隈の人たちがそれぞれに議論して、知見を持ち寄り、より良い知見を共有することが、求められている感じがします。
学会(日本創造学会)の理事としても、この辺の問題意識はあります。
公的私的に、その辺、いろんな形で場を設けていきたいと思っています。

皆でよりよい未来を開いていきましょう。

posted by 石井力重 at 16:44 | アイデアの技法

2023年05月04日

京都精華大学でのアイデア授業:脳とAIの役割分担、創造性の観点から

最近のブログ更新で、私が行った講義やワークショップの資料や学会報告を紹介してきました。
今回は、京都精華大学の漫画学部で開催された授業について掲載します。


この授業では、脳とAIの力を得意な部分を明確に創造性を引き出す方法について講義しました。
またその相補により、AIと人間の創造性に対する展望についても論じました。

この授業で使用したスライドを動画で掲載します。
(1画面=1.3秒で遷移します。読み切れないときは、停止しつつご覧ください。)

↓↓↓(Youtubeへ飛びます)

京都精華大学2023(人と、AIと、アイデアの授業)

スクリーンショット 2023-05-04 140218.png

余話:

知的生産、特に、創造性の領域は突如急速な変化の波が立ち始めました。
一年後には、この講義内容も、全面刷新するだろうと思います。
習う知識のうち「短期のトピック」と「長期に成り立つもの」を分けておかないと、いけません。
自戒を持ちつつも、つい、急速な変化の中で近視眼的になりそうです。

突如始まった(実際には昨年の学会ですでにGPTに言及した研究者もいた)創造とAIの変革期。
面白くなりそうです。


追記(2023年5月22日):
 
 授業アンケートが大量に届きました。固有の感想を引用するのははばかられるのでAIに要約してもらい、以下に紹介します。(要約が内容的にアンケート文章とマッチしていることは、人力でチェック済みです。 
 

以下は、ゲスト講師として行われた授業の受講者からの感想アンケートの要約です:

「講義が大変面白かったという感想が多数ありました。AIについての専門的な視点からの説明が新鮮で、理解に役立ったという声もありました。特にウーバーイーツのアイデア出しのセッションやアイデア出しの様々な方法についての話題が受け入れられていました。

講義を通じて、アイデアが浮かばない時やアイデアが煮詰まった時に試してみたいと思う新たな発想法を学べたという受講者もいました。先生との対話が楽しく、学びやすい雰囲気があったとの声も見受けられました。

また、漫画のアイディア出しをする際に、講義で得た知識を参考にしたいと考える受講者もいました。講義を通じて、可能性が広がったと感じる受講者や、素晴らしい授業だったと感謝の声を寄せる受講者も多くいました。

さらに、アイデア出しについて新たな視点を得られたという感想や、実践したい新たなアイデア出し方を学んだという声もありました。直感力を鍛えたいと考える受講者や、AIが人間のアイディア出し能力を超えられないと感じて希望を持った受講者もいました。」

 
   

2023年04月30日

新研究テーマ「直観力の研究」

従来、直観力というのは、創造性の研究領域の中でも研究報告が少ないものでした。

創造技法の効果の研究といった「研究の対象や手順が明確で、ある程度の成果物の定量分析ができるもの」とは違い、より属人的で研究アプローチがインタビュイーの内観に頼るものになるからです。

(もちろん、近年の創造性の研究を科学的なものにする計測器もあります。しかし、fMRIの中や、NIRSのヘッドセットをつけて、直観力を働かせてもらい「ん、直観が来た!」という行為をやってください。ーーという作業指示は、ほとんど実行不可能なリクエストとして、実験がとん挫するでしょう。高いレベルの直観は、それを発揮する人ですら、いつ来るかは予測不能ですし、来る頻度もそう多くありませんので。)

ですが、AI時代に、人間戦略は「今まで、曖昧模糊としていた部分に、力強く歩を踏み出すこと」だと感じています。そこで、直観力について、研究テーマとしていくことにしました。

(実は、世界的な技術開発を成し遂げた人々への、パイロット調査をする機会が、仕事上、偶然、舞い込んできて、かなりの難題でしたがそれをやり遂げて、直観力というものの原型(?)を、見出すに至りました。2023年の最初の3か月間の事です。それでも、まだ完全ではありませんし、エクセレント事例といえどN=8程度の事例からのモデル化であり、汎用性については慎重に扱いたい段階です。この先、事例の数を増やしていく予定です。)

2023年4月末時点での「モデル」と「直観力を使う人への案内」をここに掲載しておきます。

  
❶直観力は、どうも2分間の中に凝縮されておこる:
 
スクリーンショット 2023-04-30 131333.png
 
 
❷タイムスケールを広げると:
 
スクリーンショット 2023-04-30 131351.png
 

❸直観を働かそうという時には:

スクリーンショット 2023-04-30 131428.png

(この提案に至るには、もうすこし、細かい論述があります。端折って提示しているので論理飛躍のように見えますが。ご興味ある方は学会報告や、講義の際にお尋ねください。)

 
(余話)

生成系AIが急速な勢いで、創造性の活動も実行できるようになりつつあります。
しかし「高度な人間性の仕事」は人間がするしかない。ということも見えつつあります。
その一つが「直観力」であると、石井は見ています。
  
その時に「さて、直観力を生かすとは、どういうことなのか。何をすればいいのか」を多くの人が求める時点がきっとくるはずです。
その時代に備えて、長期間の研究テーマとして見定め、取り組み始めたものです。

(なお、「直観力」は、あくまで「高度な人間性の仕事」の”一つ”です。他には、従来の研究では避けてきた「天才」や「他の人には再現できないこと」なども。どうにも研究上、よって立つところが軟弱地盤過ぎると敬遠されてきたところですが、そこに踏み込むしかない、と急速に覚悟を決めているところです。)

posted by 石井力重 at 13:20 | 研究(創造工学)/検討メモ&資料

2023年03月15日

『アイデア原器』

多くのインタビュー調査を経て、当初は、こんな風にまとめるとは思ってなかった概念がうまれました。分野も職位も超えて、各自に共通した「共通点」です。#アイデア原器

スクリーンショット 2023-03-15 153354.png

アイデア原器(概念原器)

•閃いた物事に対し、本質や特徴を捉え、実現可能性や効果性などを考慮した結果、「いける」と感じたもの。
•閃きの瞬間からごく短時間(1〜2分間←体感)で、形になる。
•あてずっぽうの思い付きと違い、高いレベルの「直観力」が発揮された開発事例には、これがある。
•開発の過程では一般に、様々な局面で企画は軌道修正をうけるが、その際に、ここはずらしてはいけない「原器」として、リーダーもしくはチームの中で保持される。“プロジェクト毎の原点”である。
posted by 石井力重 at 15:39 | 研究(創造工学)/検討メモ&資料

2023年02月13日

石井力重のモットー(あるいは、座右の銘)

私のことをAIに聞いてみたらなかなかに正確な答えをするんです。
でも、石井力重のモットーは、という一文が、どうもしっくり来ませんでした。
何かのインタビューで、何らかの文脈でそう発言したことがなくもない、そんな感じの言葉だったんです。
そこで、思いいたりました。はっきりと示したことがないものは、AIでも、人間でも、それらしいものを推定して認識するのだ、と。
ゆえに、明確に提示しておこうと思いました。(・・・前置きが長いですね)

私、石井力重のモットー(座右の銘)は

「志ある所に、道は拓ける」

です。

これは、ごくたまに、「本にサインをください」と言っていただけることがあり、そういう時に名前とともに、座右の銘として書いています。(サインといっても単純に明朝体で石井力重と書くだけなんですが、それじゃさみしいなと思い。)

(余談)

Bingの対話AIの回答スタイルを見て思います。
ネット上のテキストとしては、ストック型(ブログ)の方がフロー型(SNS)よりも「引用元」になりやすい可能性があります。
ブログの価値は対話型AIの出現によって上昇するかもしれない。そんな予感がするんです。
posted by 石井力重 at 11:50 | アイデアプラント 6th(2021-2023)



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